英会話スクールやコーチングの料金表を見て、「これは高い」と思った経験はないでしょうか。補助金があると聞いて調べ始めたものの、制度の種類が多く、自分が対象なのかもわからないまま止まっている方も多いことでしょう。
一番避けたいのは、対象になると思い込んで数十万円のコースに申し込んだ後で「実は対象外だった」と気づくケースです。先に全額を払う仕組みや申請期限を知らないと、戻るはずのお金を受け取れないこともあります。
この記事では、英語学習に使える国の補助金の種類から、自分が対象になるかの見分け方、いくら戻るのか、申請の流れまでを順番に解説します。
英語学習に使える補助金・助成金の種類

英語学習で個人が使える公的支援は、国の教育訓練給付制度と経済産業省のリスキリング支援事業が中心です。この全体像をつかんでおくと、後の話が理解しやすくなります。
英語の補助金は国が行う2つの制度が中心
個人が英語学習の費用軽減に使える公的支援は厚生労働省の「教育訓練給付制度」と、経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」の2つです。
前者は雇用保険を財源とする給付金、後者は国が民間の事業者を通じて個人の学び直しを支える補助の仕組みです。
参照:
補助金・助成金・給付金・grantの違い
「補助金」「助成金」「給付金」は、制度上は性格が異なります。給付金は個人が申請して要件を満たせば受け取れるもので、教育訓練給付がこれにあたります。
助成金は主に事業主が対象で、要件を満たせば受給できるものが多くあります。こちらは主に企業が社員研修を実施したときに使うものです。人材開発支援助成金などが代表例です。社員の英語力強化を考える人事担当者であれば、この企業向けの助成金が選択肢に入ります。
英語で費用支援を調べると出てくる「grant」も混同しやすい言葉です。grantは研究やプロジェクトへの資金や、家計状況に応じた給付を指すことが多く、主に学業成績にもとづく「scholarship(奨学金)」とはニュアンスが異なります。
日本語の「補助金」をそのままgrantと訳すと対象がずれることがあるため、注意が必要です。
| 用語 | 主な対象 | 特徴 |
| 補助金 | 個人・事業者など | 目的に合う取り組みに対して費用の一部を支援する制度。審査がある場合が多い。 |
| 助成金 | 主に事業主 | 要件を満たせば受給できるものが多く、雇用・人材育成などで使われる。 |
| 給付金 | 主に個人 | 要件を満たした個人に支給される制度。教育訓練給付などが該当する。 |
| grant | 学生・研究者・団体など | 研究、プロジェクト、学費支援などに使われる英語表現。scholarshipとは意味が異なる。 |
政府が支援する背景と「勉強すればもらえる」の誤解
政府がこうした制度に力を入れる背景には、AIやDXなどの仕事で求められるスキルが変わり続けている現状があります。国はリスキリングを「人への投資」と位置づけ、この支援策を5年間で1兆円規模のパッケージに拡充する方針を示してきました。英語関連の講座も、こうした支援の対象に含まれています。
ただし、「英語を勉強すれば国からお金がもらえる」わけではありません。給付の対象は厚生労働省が指定した講座に限られ、独学や趣味で英語に触れるだけでは対象になりません。
「もらえるかどうか」を考える前に、「自分と受けたい講座が条件を満たしているか」を確認する順番が現実的です。
英語学習の補助金の対象になる人は誰?

対象を分けるのは雇用保険の加入期間で、会社員は多くが対象、自営業や公務員は原則対象外です。
金額の大きさよりも先に確認したいのが、「そもそも自分が対象か」という点です。
対象を分けるのは雇用保険の加入期間
教育訓練給付制度を使えるかどうかは、雇用保険の加入期間でほぼ決まります。一般教育訓練の場合、初めて利用するなら加入期間が通算1年以上あることが条件です。2回目以降は、雇用保険の加入期間が通算3年以上あり、かつ前回の支給から3年以上経過していることが必要です。
自分が雇用保険に入っているかわからない場合は、給与明細を見てください。「雇用保険料」が天引きされていれば加入しています。
1週間の所定労働時間が20時間以上あるなど一定の条件を満たすと、雇用形態にかかわらず加入対象になります。
対象になる立場と、なりにくい立場を整理すると次のとおりです。
- 対象になりやすい:正社員、契約社員、派遣社員、雇用保険に加入しているパート・アルバイト、育休中の人、離職後1年以内の人
- 原則対象外:自営業、フリーランス、会社役員、公務員、雇用保険に加入していない人
正社員でなくても、雇用保険に加入していれば対象になる点は覚えておきましょう。反対に、自営業やフリーランスの人は雇用保険に加入していないため、この制度は原則として使えません。
リスキリング支援は在職者で転職を考える人が対象
もう一方のリスキリング支援事業は、対象の考え方が異なります。
この事業は雇用契約を結んでいる在職者が前提で、リスキリングを経て転職によるキャリアアップを目指す人を支援する仕組みです。正社員だけでなく契約社員や派遣社員も利用できますが、雇用契約のない経営者・役員・フリーランスは対象外です。
「趣味や教養として英語を身につけたい」という目的だけでは想定されていない点にも注意が必要です。あくまで、学び直しと転職・キャリア形成をセットで考える人向けの制度だと理解しておきましょう。
参照:「転職をご検討の方|リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」経済産業省
教育訓練給付制度とリスキリングの違い
英語学習は主に一般教育訓練の20%(上限10万円)が中心で、転職前提のリスキリングなら最大56万円です。
2つの制度は戻ってくる金額が大きく違います。まず、個人が使える2つの制度を並べて比べてみましょう。
| 項目 | 教育訓練給付(一般教育訓練) | リスキリング支援事業 |
| 主な対象 | 雇用保険に加入する会社員など | 在職中で転職を目指す人 |
| 補助率・上限 | 受講費用の20%(上限10万円) | 受講費用の最大約70%(最大56万円) |
| 転職の要否 | 不要 | 追加分は転職+1年継続就業が条件 |
英語学習でまず基準になるのは、左側の一般教育訓練です。次の章で解説していきます。
教育訓練給付制度の3種類と給付率
教育訓練給付制度は、レベルに応じて3種類に分かれ、給付率が異なります。
- 一般教育訓練:受講費用の20%(上限10万円)
- 特定一般教育訓練:受講費用の最大50%(上限25万円)
- 専門実践教育訓練:受講費用の最大80%(年間上限64万円)
特定一般の最大50%と専門実践の最大80%は、令和6年(2024年)10月以降に開講する講座に適用される上限です。専門実践教育訓練は、資格取得や就職、さらに賃金の上昇といった条件を満たすことで給付率が段階的に上がる仕組みです。
英語学習は主に一般教育訓練
英会話、ビジネス英語、TOEICや英検の対策講座など、英語学習の多くは主に「一般教育訓練」に区分されます。つまり、英語学習で現実的に使えるのは受講費用の20%・上限10万円の枠が中心です。例えば、受講費用20万円の講座なら、修了後に4万円(20%)が戻ります。
リスキリング補助金なら最大56万円
より大きな支援を受けられるのがリスキリング支援事業です。対象講座を修了すると受講費用の50%(上限40万円)が補助され、その後に転職し1年間継続して就業すると、追加で20%(上限16万円)が支給されます。合計で最大56万円、受講費用の最大約70%に達します。
一般教育訓練の上限10万円と比べると、金額は5倍以上の差があります。ただし、この差は「転職を目指すかどうか」という条件の差でもあります。英語を学んで今の職場で活かしたいのか、それとも学び直して転職につなげたいのかなど、目的によって選ぶ制度が変わると考えるとわかりやすいでしょう。
参照:「転職をご検討の方|リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」経済産業省
対象講座と費用、申請の流れ

教育訓練給付制度では、対象となる指定講座を受講し、一般教育訓練の場合は修了後1ヶ月以内にハローワークへ申請します。一方、リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業では、補助事業者を通じて受講費用の負担が軽減される仕組みです。
制度を使うと決めたら、対象講座の探し方と申請の段取りを押さえましょう。順番を間違えると給付を受けられないこともあるため、流れを先に知っておくと安心です。
対象になる英語の講座
給付の対象になるのは、厚生労働省が指定した講座だけです。ビジネス英語、TOEIC・英検の対策コース、英語コーチングなどが指定を受けている例が多くあります。
一方で、独学や、多くの月額制オンライン英会話、英語学習アプリ、趣味の日常英会話は対象外になりがちです。また、同じスクールでもコースによって指定の有無が分かれることがあります。
支払った費用のうち、入会金や受講料は給付の対象になり得ますが、テキスト代など一部の費用は対象外になる場合があります。
対象講座は、厚生労働省の教育訓練給付制度の検索システムで確認できます。
指定講座は令和7年(2025年)10月時点で全体で約17,000講座あります。申し込む前にスクールの公式サイトと検索システムの両方で最新の状態を確かめてください。
参照:
申請の流れと費用の支払いタイミング
一般教育訓練の申請は、次の流れで進みます。
- (任意・推奨)受講前に、住所を管轄するハローワークで、受給資格と講座の指定を確認する
- 対象講座を受講する
- 修了要件を満たして修了する
- 修了後にハローワークへ支給申請書などを提出する
なお、注意点としては「費用の支払いタイミングは先払い」という点です。給付金は受講前や受講中にもらえるのではなく、いったん受講料を全額自己負担し、修了後の申請を経て後から戻ってきます。
さらに、一般教育訓練の申請期限は受講修了日の翌日から1ヶ月以内です。この期限を過ぎると受け付けてもらえないため、修了したら早めに申請しましょう。
まとめ:英語学習関連の補助金は事前によく確認する
英語学習に使える国の支援は、教育訓練給付制度とリスキリング支援事業が中心です。教育訓練給付制度では雇用保険の加入期間などが要件となり、リスキリング支援事業では、支援開始時に在職者であり、雇用主の変更を伴う転職を目指していることなどが要件となります。
申し込み前には、受けたい講座が指定講座か、費用はいったん先払いか、申請期限や修了要件はどうなっているかを確認しておくことが大切です。対象外だった場合でも、自治体や民間団体の支援を使える可能性はあります。
まずはハローワークで受給資格を確認し、厚生労働省の検索システムで対象講座を調べてみてください。企業において制度の活用や企業研修について相談したい場合は、社会保険労務士法人グロースアシストの公式ウェブサイトも参考にしてください。