「起業したいけれど、自己資金だけでは心もとない。補助金があるなら、ぜひ使いたい。」と考えて情報を集めている方は多いのではないでしょうか。

ただ、ここでひとつ注意点があります。補助金は「もらえれば元手なしで起業できる便利なお金」ではありません。多くの場合が後払いで、しかも申請すれば必ず受け取れるものではありません。この仕組みを知らないまま資金計画を立てると、開業直後に資金が足りなくなることもあります。

この記事では、補助金と助成金の違いから、女性・学生・外国人・地域おこし協力隊といった属性別に使える制度、東京都の支援、申請の流れなどを解説します。

補助金と助成金の違い

補助金は審査で選ばれる返済不要の資金、助成金は要件を満たせば受け取れる資金で、起業ではどちらも活用できます。

大まかな違いは、次のように整理できます。

項目補助金助成金
主な所管経済産業省・地方自治体厚生労働省
目的産業振興・事業支援雇用・労働環境の改善
審査あり(採択されないと不支給)要件を満たせば受給しやすい
金額の傾向大きめ比較的小さめ

経済産業省でも「助成金」という名称の制度があり、自治体では審査があっても「助成事業」と呼ぶことがあります(東京都の創業助成事業も審査ありで「助成」と名付けられています)。そのため、名称ではなく公募要領の中身で判断してください。

新規の起業で使える代表的な制度

これから新規で起業する個人事業主やスタートアップが使えるのは、次のような制度です。

制度名主な対象・用途補助上限
小規模事業者持続化補助金<創業型>創業1年以内の販路開拓200万円(インボイス特例で50万円上乗せの250万円)
デジタル化・AI導入補助金2026(通常枠)販売支援・会計・顧客管理などのITツール導入最大450万円
キャリアアップ助成金非正規雇用の正社員化など取組により変動

なお、デジタル化・AI導入補助金2026は、2025年まで「IT導入補助金」だった制度が名称変更されたものです。

参照:

小規模事業者持続化補助金<創業型>

デジタル化・AI導入補助金2026

キャリアアップ助成金|厚生労働省

補助金だけで起業できる?

起業準備に必要なパソコンや書類をそろえた画像

補助金は後払いで採択の保証もないため、自己資金を主軸に、補助金は補完と考えるのが現実的です。つまり、「補助金があるから自己資金は少なくて大丈夫」という捉え方には注意が必要です。

後払いで自己資金の立て替えが必要

補助金の多くは精算払い、つまり後払いです。先に自分で経費を支払い、事業が終わって実績を報告したあとに入金されます。制度によっては入金まで1年近くかかることもあります。つまり、手元にお金がなければ、そもそも補助対象の経費を払えないことになります。

さらに、補助金には審査があり、その審査に落ちればお金は受け取れません。「採択されたら返済不要」という魅力の裏で、採択をあてにした資金計画は、不採択になった瞬間に実行できなくなります。まず自己資金と、必要なら融資で土台を固めておくことが欠かせません。

補助金は主軸ではなく補完

メインの資金は自分で用意し、補助金は「上手くいけば、上乗せで受け取れるもの」といった感じで捉えておくのが安全でしょう。

後払い、不採択の可能性、事務負担、経費の自己負担といったデメリットを理解したうえで、あくまで補完として使うというのが、堅実な起業計画となります。

補助金を軸にせず、事業そのもので資金を回す計画を立てたうえで、使える制度を探す、といった順番を意識してみてください。

属性・地域別に使える支援制度

女性・学生・外国人・地域おこし協力隊や、東京都には、属性や地域に応じた起業支援の制度が用意されています。

属性・立場代表的な制度(例)
個人事業主小規模事業者持続化補助金<創業型>
女性東京都「若手・女性リーダー応援プログラム」
学生自治体の学生起業支援(例:長岡市学生起業家育成補助金)
外国人公庫「特定外国人起業家」向け特別利率
地域おこし協力隊起業支援補助金
東京都で起業東京都創業助成事業

個人事業主と女性が使える制度

小規模事業者持続化補助金<創業型>は、法人だけでなく個人事業主も対象です。

女性の起業には、専用の制度があります。日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」では、女性や35歳未満、55歳以上の方に特別利率が適用されます。

また、東京都には、女性または39歳以下の男性を対象に、都内商店街での開業を支援する助成金制度もあります。

参照:

新規開業・スタートアップ支援資金(女性、若者/シニア起業家支援関連) 日本政策金融公庫

都内商店街での開業助成金 東京都中小企業振興公社

学生と外国人が使える制度

学生の起業には、自治体独自の制度があります。例えば、長岡市の学生起業家育成補助金のように、在学中や卒業間もない起業を後押しする支援が各地に見られます。自治体や大学のある地域の制度を調べてみましょう。

外国人の場合、日本政策金融公庫の創業融資に「外国人起業活動促進事業における特定外国人起業家」向けの特別利率区分があります。在留資格などの条件は事前によく確認してください。

参照:

長岡市学生起業家育成補助金/長岡市

新規開業・スタートアップ支援資金/日本政策金融公庫

地域おこし協力隊・東京の起業支援

地域おこし協力隊として活動した人が地方で起業する場合、起業支援補助金を活用できます。任期終了前後1年以内に、活動した地域で起業する隊員が対象で、上限は1人100万円です。多くの自治体が総務省の特別交付税措置に基づく条件を設けています。

ただし、対象事業は「地域の活性化に資するもの」である必要があり、自己都合で早期に地域を離れた場合などは返還を求められることがあります。地域への定着を前提に考えるのが現実的です。

東京都で起業するなら、東京都の創業助成事業があります。都内で創業予定、または創業5年未満の中小企業が対象です。賃借料・広告費・人件費など創業初期の経費を、助成対象経費の3分の2以内・上限400万円で助成します。なお、TOKYO創業ステーションの支援修了など要件がある点に注意してください。

自治体の制度は地域・年度で変わるため、必ず最新情報の確認が必要です。

参照:

地域おこし協力隊~移住・地域活性化の仕事へのチャレンジを支援します!総務省

令和8年度「創業助成事業」募集/東京都

申請の流れを確認する

補助金で資金調達をイメージした現金の画像

制度を選んだら、次は申請です。手順と、見落としやすい落とし穴を押さえておきましょう。

補助金の申請方法は制度によって異なります。電子申請でGビズIDプライムが必要な制度では、あらかじめ取得しておきましょう。一般的には、公募要領を確認し、必要書類や事業計画を準備したうえで申請します。

申請には事業計画書のほか、経費の管理も欠かせません。

特に気をつけたいのが、申請のタイミングです。制度によって、起業前に申請するものと起業後に申請できるものが分かれます。そして多くの補助金では、交付決定の前に発生した経費は対象外です。発注は交付決定を待ってから、が原則で、先に店舗を契約するとその費用が補助されないことがあります。

また、国や地方公共団体から受ける一般的な補助金・助成金は、消費税の課税対象とはなりません。一方、所得税・法人税上の収入・益金への計上時期は、補助金の内容や支給決定・権利確定の時期などによって異なるため、個別に確認が必要です。

過去に自己破産していても補助金を利用できる?

過去に自己破産を経験していても、起業や補助金の申請はできます。ここは不安を抱えている方が多いところですが、自己破産が理由で起業そのものを諦める必要はありません。

一方で、融資については信用情報の影響を受けます。事故情報は信用情報機関により一般に5〜7年程度残るとされ(CIC・JICCは約5年、KSCの官報情報は最長7年)、その間は新たな借入の審査が厳しくなります。

ただし、日本政策金融公庫には、廃業歴のある方の再起業を支援する融資(再挑戦支援関連)があります。負債が整理される見込みなど一定の要件を満たせば、自己破産を経験した方でも申し込める可能性があります。

なお、どの制度でも虚偽の申請や目的外の使用は、交付の取り消しや返還の対象になります。正確な内容で申請することが必須です。

参照:新規開業・スタートアップ支援資金(再挑戦支援関連)/日本政策金融公庫

補助金や助成金の相談先はどこ?

助成金の申請代行は社労士、補助金の書類作成は行政書士の業務範囲で、依頼先を分けて考えるのが安全です。

「要件が複雑で、自分ひとりで申請できる気がしない」。そう感じるのは自然なことです。補助金は制度上、事業者本人が申請することもできますが、書類負担が重いため、専門家の力を借りるのが現実的な選択になります。ここで知っておきたいのが、相談先には法律で定められた役割分担があるという点です。

厚生労働省が所管する助成金の申請書作成や提出代行は、社会保険労務士(社労士)の独占業務で、資格のない人が業として代行すると法律違反になります。

一方、補助金の事業計画書などの有償作成代行は、行政書士の業務範囲です。「顧問の社労士にまとめて補助金も」と考えがちですが、扱える範囲が違う点は押さえておきましょう。

経済産業省・中小企業庁が運営する「ミラサポplus」などの公式サイトは情報量が多く、慣れていないとどこを見ればいいのか迷うかもしれません。制度選びでつまずいたら、資格を持つ専門家に相談するのが近道です。費用は事務所によって異なり、成功報酬型を採用しているところもあります。

参照:ミラサポplus 補助金・助成金 中小企業支援サイト|経済産業省 中小企業庁

まとめ:補助金は自己資金を支える補完として活用する

補助金は返済不要で活用できますが、原則として後払いであり、申請すれば必ず受け取れるものではありません。そのため、起業資金の主軸にするのではなく、自己資金や資金繰りを支える補完として考えることが大切です。女性、学生、外国人、地域おこし協力隊、東京など、自分の状況によって対象になる制度は変わります。

まずは自治体や公式サイトで使える制度を確認し、自己資金を中心にした資金計画を整えましょう。申請に不安がある場合は、専門家に相談するとより安全に進められます。

制度選びの判断に迷うときや、助成金申請のサポートを受けたいときは、社会保険労務士法人グロースアシストに相談できます。自社が対象になるかなど、詳しくは公式ウェブサイトをご確認ください。