リスキリングの支援制度を調べ始めると、「助成金」「給付金」「補助金」と似た言葉が多く、違いが分かりにくく感じることがあります。

押さえておきたいのは、助成金は企業向けの制度が中心で、個人が直接使いやすいのは給付金や補助金だという点です。厚生労働省と経済産業省がそれぞれ制度を用意しており、雇用形態や転職の意向によって選び方が変わります。

本記事では、個人が直接申請できる制度を中心に、対象者・給付率・申請の流れを整理します。フリーランスや求職中の方におすすめの選択肢も取り上げますので、ぜひ最後までお読みください。

リスキリングに使える助成金はある?

まずは「リスキリング助成金」といった言葉の範囲を整理し、関連する支援制度の全体像を押さえます。制度名を正しく理解すると、個人向けか企業向けかを切り分けやすくなります。

「リスキリング助成金」という制度はない

前提として、「リスキリング助成金」という名称の制度は存在しません。リスキリングに関する支援策は、申請者が「企業か個人」かによって性格が異なります。

リスキリング分野でよく取り上げられる「助成金」は、多くが企業(事業主)が申請する制度です。個人が直接リスキリング費用の支援を受ける場合は、「教育訓練給付金」や「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」などの給付金・補助金を利用するのが一般的です。

助成金・給付金・補助金の違い

種類主な対象主な制度
助成金企業人材開発支援助成金(厚生労働省)
給付金個人教育訓練給付金(厚生労働省)
補助金個人リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業(経済産業省)

助成金は、企業が従業員の研修費用を国に申請して受け取る制度です。一方、給付金は個人がハローワークを通じて直接申請できる制度で、雇用保険の加入者が対象となります。

そして補助金は、経済産業省が認定した民間事業者を通じて個人が申請する制度です。管轄省庁や申請ルートがそれぞれ異なりますが、個人の方がリスキリング費用の支援を受ける場合は、給付金または補助金を利用します。

リスキリング関連の補助金・給付金一覧

厚生労働省の給付金や経済産業省の補助金を活用すれば、学習費用の自己負担を大幅に抑えられます。雇用保険の加入状況などにより使える制度が異なるため、自分に合ったものを確認しましょう。

教育訓練給付金

段階給付率年間上限
受講修了時50%40万円
資格取得・就職後追加20%16万円
賃金5%以上上昇後追加10%8万円
合計最大80%64万円

教育訓練給付金は、厚生労働省が個人向けに提供する給付金制度です。雇用保険に加入している会社員や派遣社員、契約社員の方が対象で、講座の種類によって給付率が異なります。上表に、専門実践教育訓練給付金(令和6年10月以降開講講座)の給付内容をまとめました。

利用にあたっては、雇用保険の加入期間に関する条件があります。初めて利用する場合は加入期間が1年以上(専門実践は2年以上)、2回目以降は前回の受講開始日から3年以上経過していなければなりません。また、現在離職中でも、離職後1年以内であれば申請できます。

対象講座は幅広く、看護師や介護福祉士などの国家資格取得を目指すものも含まれます。今の会社で働きながら、転職せずにスキルアップしたい方に適した制度といえるでしょう。

リ・スキリング等教育訓練支援融資事業

項目内容
開始時期2025年10月
対象者雇用保険に加入していない方
制度の種類融資(返済が必要)

2025年10月から、雇用保険に加入していない個人事業主やフリーランス向けの「リ・スキリング等教育訓練支援融資事業」がスタートしました。融資制度のため返済が必要ですが、これまで支援を受けられなかった方にとっての新たな選択肢になります。

これまで、教育訓練給付金は雇用保険の加入が条件のため、個人事業主やフリーランスは原則として対象外でした。ただし、過去に会社員として雇用保険に加入していた場合、離職後1年以内なら利用できる可能性があります。

給付ではなく融資のため返済が必要ですが、個人事業主やフリーランスにとって新たな学び直しの機会になるでしょう。

「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」

段階補助率上限額
講座受講修了時受講費用の1/2相当額40万円
転職後1年間継続就業追加で1/5相当額16万円
合計最大70%相当56万円

転職を検討している場合、経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」が視野に入ります。これは民間の転職支援会社を通じて、キャリア相談・講座受講・転職支援を一体的に受けられる制度で、受講費用の最大70%が補助されます。

ただし、この制度は「転職を検討している在職者」が対象です。転職の予定がなく、今の会社で働きながらスキルアップしたい場合は、教育訓練給付金が適しているでしょう。

自分に合った制度の選び方

今の状況おすすめの制度
会社員で今の会社で働きながらスキルアップしたい教育訓練給付金
会社員で転職も視野に入れているリスキリングを通じたキャリアアップ支援事業
個人事業主・フリーランスで過去に会社員だった教育訓練給付金(離職後1年以内なら可能性あり)
個人事業主・フリーランスで雇用保険に加入したことがないリ・スキリング等教育訓練支援融資事業(2025年10月〜)

自分の状況に合った制度を選ぶ際の目安は、上記のとおりです。

特に会社員の方で「転職するかどうか決めていない」という場合は、まず教育訓練給付金の利用を検討してみてください。転職の有無に関係なく使える点に加え、給付率も最大80%と高く設定されているのが魅力です。

一方、転職を明確に検討している場合は、キャリア相談から転職支援まで一体的に受けられる「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」が適しています。迷ったときは「転職の意思が固まっているか?」を基準に制度を選ぶといいでしょう。

【企業向け】リスキリングに活用できる助成金一覧

制度名管轄助成率(中小企業)年間上限額
人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)厚生労働省75%1億円
人材開発支援助成金(人への投資促進コース)厚生労働省75%1億円
DXリスキリング助成金東京都75%100万円

会社員の方は、勤務先が助成金を使うことで、研修費の自己負担を抑えて学べる可能性があります。 社内でリスキリング研修を提案したい方は、人事・総務に相談するときの参考にしてください。

代表的な制度として、人材開発支援助成金について簡単にご説明します。

人材開発支援助成金とは

コース名対象となる訓練期限
事業展開等リスキリング支援コース新規事業の立ち上げDX・GX化に伴う人材育成令和8年度末まで
人への投資促進コース高度デジタル人材育成サブスク型研修自発的能力開発など令和8年度末まで

人材開発支援助成金は、厚生労働省が企業向けに提供する制度です。従業員の研修費用と訓練期間中の賃金の一部が助成されます。

リスキリングに活用できるコースは、上記の2つです。

いずれも中小企業の場合、研修費用の75%と賃金助成(960円/時間)を受けられます。年間上限額は1億円です。事業展開等リスキリング支援コースは期間限定のため、早めに検討しておくとよいでしょう。

リスキリングに使える給付金・補助金の申請方法と流れ

個人向けの制度について、申請の流れを確認しておきましょう。ここでは、教育訓練給付金および「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」の申請方法と流れを見ていきます。

教育訓練給付金の申請手続き

ステップ内容
1. 対象講座の確認厚生労働省の検索システムで受講したい講座が対象かを確認する
2. 受給資格の確認ハローワークで雇用保険の加入期間などの要件を満たしているか確認する
3. キャリアコンサルティング特定一般・専門実践の場合、キャリアコンサルタントと面談しジョブ・カードを作成する
4. 受給資格確認の申請受講開始日の原則2週間前までにハローワークへ申請する(※特定一般・専門実践のみ必須)
5. 講座の受講指定教育訓練実施者の講座を受講する
6. 給付金の申請修了日の翌日から1か月以内に支給申請書を提出する(専門実践は6か月ごと+最終申請)

教育訓練給付金は、ハローワークを通じて申請します。上記の流れで手続きを進めましょう。

一般教育訓練はステップ3のキャリアコンサルティングが不要なため、比較的シンプルな手続きで済みます。一方、給付率の高い専門実践教育訓練は事前準備に時間がかかります。余裕を持ったスケジュールを組んでおきましょう。

リ・スキリング等教育訓練支援融資事業の申請手続き

ステップ内容
1. ハローワークで求職申込み制度の説明を受け要件確認を行う
2. キャリアコンサルティング受講予定の訓練を決定しジョブ・カードを作成する
3. ハローワークへ書類提出必要書類を提出し審査を受ける
4. 労働金庫で融資手続き振込期限の2週間前までに来店し金融審査を受ける
5. 訓練受講・定期報告3か月ごとにハローワークへ進捗報告・追加融資申込
6. 返済開始(または免除申請)修了後1年間は据置期間。その後最長10年で返済

リ・スキリング等教育訓練支援融資事業は、ハローワークおよび労働金庫の両方で手続きを行います。

ただし、ハローワークの審査に通過しても、労働金庫の金融審査で融資が認められないケースもあるため注意してください。申請から融資実行までには2〜4週間かかるので、訓練開始の1か月半前には手続きを始めておきましょう。

「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」の申請手続き

ステップ内容
1. 補助事業者の選定経産省に採択された補助事業者を選ぶ
2. キャリア相談補助事業者でキャリアコンサルティングを受ける
3. 講座の受講認定講座を受講する
4. 転職活動補助事業者のサポートを受けながら転職活動を行う
5. 補助金の受給講座修了時に受講費用の1/2相当額(上限40万円)転職後1年継続で追加1/5相当額(上限16万円)

「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」は、ハローワークではなく事業に採択された補助事業者を通じて申請します。補助事業者には転職支援会社に加え、教育機関や人材育成企業なども含まれます。

注意点として、追加の1/5相当額を受け取るには、本事業が実施する職業紹介を通じて転職し、1年間継続して就業する必要があります。今の会社で働き続けたい方は教育訓練給付金を選ぶといいでしょう。

リスキリング関連の助成金はいつまで?よくある質問

リスキリングに関する支援制度について、よくある質問をまとめました。申請前の参考にしてください。

リスキリング支援コースはいつまで使えますか?

事業展開等リスキリング支援コースは、令和8年度末(2027年3月末)までの時限措置です。企業向けの制度のため、会社員の方は勤務先に早めに相談しておきましょう。

個人でも助成金をもらえますか?

「助成金」は企業向けの制度のため、個人が直接申請することはできません。個人の方は「教育訓練給付金」や「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」を利用できます。

AI講座は対象になりますか?

教育訓練給付金の対象講座には、AI・データサイエンス関連のプログラミング講座も含まれています。厚生労働省の検索システムで対象講座を確認しましょう。

2025年度も制度は継続されますか?

教育訓練給付金は2025年度も継続しています。令和6年10月の改正で賃金上昇時の追加給付(10%)が新設されるなど、制度は年々充実しています。

転職しなくても補助金は使えますか?

教育訓練給付金は転職の有無に関係なく利用できます。今の会社で働きながらスキルアップしたい方に適した制度です。

会社員が勤務先に相談するときのコツは?

企業向けの助成金は、個人で直接申請できません。勤務先に相談する際は、「助成金を使えば研修費用の75%が補助される」という点を伝えると、提案が通りやすくなるかもしれません。

まとめ|リスキリングに使える給付金・補助金を賢く活用しよう

「リスキリング助成金」という制度は存在しませんが、企業向けの助成金と個人向けの給付金・補助金が充実しています。

企業にお勤めの方は、まず教育訓練給付金の利用を検討するといいでしょう。雇用保険加入者であれば、受講費用の最大80%が支給されます。転職の有無に関係なく使えるため、今の会社で働きながらスキルアップしたい方に適しています。

制度によって対象者や申請期限が異なるため、まずは自分の状況に合った制度を確認してみてください。