転職サイトの求人票を見て、「このスキルがあれば応募できるのに」と感じたことはありませんか。40代・50代になると、経験だけでは評価されにくい場面が増えてきます。
こうしたとき、鍵になるのが「リスキリング」です。40代・50代のリスキリングでは、「転職するかどうか」より、今の経験に何を足せば評価が上がるかがポイントになります。30代後半から、この考え方が転職や社内評価に効いてきます。
本記事では、40代・50代がリスキリングで何を学べばいいかを整理します。あわせて、働きながら取りやすいおすすめ資格5選、そして給付金で費用を抑える手順にも触れますので、ぜひ参考にしてください。
リスキリングで何を学ぶ?優先したいスキルの考え方

リスキリングは、学ぶ内容しだいで応募できる仕事や職場での役割が変わります。仕事につなげるために、優先したいスキルの選び方を3つの軸で整理します。
今の仕事に活かせるかを優先する
何を学ぶか迷ったら、最初に「今の仕事で使えるか?」を基準にしてみましょう。転職を前提としない学び直しでは、現在の業務と関係が深いスキルほど、学んだ直後から成果につながりやすいからです。
たとえば事務職では、日々使うExcelを体系的に学び、MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)でスキルを示すと伝わりやすくなります。経理の仕事なら、仕訳や決算の理解を支える簿記が軸になり、業務の土台を固められるでしょう。
また、40代・50代のビジネスパーソンは、経験がある分だけ「掛け合わせ」の効果が出やすいです。ゼロから新分野に飛び込むより、得意領域を強化しながら守備範囲を広げる方が効率的といえます。新しい分野に挑戦したい気持ちは大切ですが、まずは今の仕事の延長で伸ばせるテーマから選んでみてください。
AI・DX時代に求められるスキルを意識する

DX時代(デジタルトランスフォーメーション)に求められるスキルは、「基礎で汎用性を取って次に将来性のある分野へ伸ばす」と考えると判断しやすいです。職種を問わず使える汎用性の高いスキルから始めれば、最初の学びで失敗しにくくなります。
学習は「基礎→応用」で組み立てると進めやすいです。たとえば、第一歩としてITパスポートでITの共通基礎を押さえると、次に学ぶ分野が見えやすくなります。業務改善やシステム導入の話が出たときも、目的と手段を整理しやすくなるでしょう。
簿記やFPのようなビジネス基礎も同様です。数値やお金の前提を理解できるため、部署や職種が変わっても学んだ知識を活かせます。
この基礎を押さえたうえで、AI・DXの流れで重要度が増すIT領域へ段階的に踏み込んでみましょう。最初から難易度の高い分野を選ばず、小さな成功体験を積むことが、リスキリングのモチベーションを保つコツです。
学習時間と費用から逆算する
働きながら学ぶ以上、確保できる学習時間には限りがあります。「1日2時間を3ヶ月」など、先に具体的な期間を設定してから学習内容を決めると、無理のない計画を立てられるでしょう。
もうひとつ押さえておきたいのが、教育訓練給付金の活用です。これは対象の講座を受けて修了すると、受講費用の一部が戻る制度です。
一般教育訓練では教育訓練経費の20%(上限10万円)が訓練修了後に支給されます。専門実践教育訓練は支給要件により段階があり、教育訓練経費の50%・70%・80%が支給されるため、費用を抑えたいなら先に使えるかどうかを確認しておくと安心です。
対象講座はハローワークの検索システムで確認できるため、申し込む前に給付の対象かどうかと、自己負担額の目安を調べておきましょう。
30代・40代・50代は何を学ぶ?人気のリスキリング資格

30代・40代・50代のリスキリングは、「学び切れること」と「仕事で使えること」を両方満たす資格から選ぶと失敗しにくいです。以下、働きながら取得しやすい人気資格をまとめました。学習時間は目安となりますが、資格選びの参考にしてください。
ITパスポート
| 項目 | 内容 |
| 受験料 | 7,500円(税込) |
| 学習時間 | 初心者100〜180時間 |
| 学習期間 | 1日2時間で2〜3ヶ月 |
| 合格率 | 約50%(社会人約53%) |
ITに関する基礎知識を証明する国家資格です。プログラミング技術ではなく、ビジネスでITを活用するための幅広い知識が問われます。
この資格は経済産業省が所管しており、DX推進の基盤となる知識を体系的に学べます。AI、ビッグデータ、クラウドといった最新技術の基礎から、セキュリティ、プロジェクト管理、経営戦略まで幅広くカバーしています。
合格率は約50%、社会人に限ると53%とやや高めです。CBT方式で全国どこでも随時受験できるため、自分のペースで準備を進められます。IT初心者でも、しっかり対策すれば十分に合格を狙えるでしょう。
情報セキュリティマネジメント試験
| 項目 | 内容 |
| 受験料 | 7,500円(税込) |
| 学習時間 | 70〜200時間 |
| 学習期間 | 1日2時間で2〜3ヶ月 |
| 合格率 | 約70% |
情報セキュリティマネジメント試験は、ITパスポートの次のステップとして選ばれやすい資格です。サイバー攻撃などの脅威を前提に、組織として何を守り、どう運用するかが問われます。
学べる範囲は、セキュリティの基礎に加えて関連法規や社内ルールの考え方まで幅広いです。そのため、エンジニアだけでなく、業務部門で情報を扱う人にとっても実務につながりやすいでしょう。合格率は約70%とされ、学習量を確保できれば合格を狙いやすい試験です。
MOS Excel
| 項目 | 内容 |
| 受験料 | 12,980円(税込) |
| 学習時間 | 40〜80時間 |
| 学習期間 | 1日2時間で1〜2ヶ月 |
| 合格率 | 80%程度(※非公式の参考値) |
MOSは、ExcelをはじめとするMicrosoft Office製品の操作スキルを証明する資格です。操作力を客観的に示せるため、実務で使えるスキルを伝えたい人に向いています。
とりわけExcelは事務職に限らず、幅広い仕事で使われます。関数やピボットテーブル、グラフ作成などを体系的に学ぶと、集計や資料作成の手戻りが減り、作業の流れを整えやすくなるでしょう。
試験はスペシャリスト(一般レベル)とエキスパート(上級レベル)の2段階に分かれています。まずはスペシャリストで基礎を固め、必要に応じてエキスパートへ進むと無理がありません。
日商簿記検定3級
| 項目 | 内容 |
| 受験料 | 3,300円(税込) |
| 学習時間 | 70〜100時間 |
| 学習期間 | 1日2時間で2〜3ヶ月 |
| 合格率 | 30〜50%(回により変動) |
日商簿記3級は、仕訳を中心に経理の基本を学び、会社のお金の動きを理解するための資格です。決算書の読み方の入口にもなるため、経理以外の人でも学ぶ価値があります。
この資格で身につくのは、数字を「記録の作業」で終わらせず「取引の意味」として捉える視点です。たとえば、取引先の状態を数字から読み取ったり、自社の経営数字を理解したりする場面で役立ちます。
受験機会が多い点も特徴で、年3回の統一試験に加えてネット試験でも受験できます。学習時間の目安は70〜100時間なので、働きながら学習計画を立てやすいでしょう。
FP技能検定3級
| 項目 | 内容 |
| 受験料 | 8,000円(税込) |
| 学習時間 | 80〜150時間 |
| 学習期間 | 1日2時間で2〜3ヶ月 |
| 合格率 | 約85%(日本FP協会)、約50%(きんざい) |
お金に関する幅広い知識を証明する国家資格です。税金、保険、年金、資産運用、相続など、生活に直結する6分野を学びます。
試験の実施機関は日本FP協会ときんざいの2つで、公開されている合格率には差があります。そのため、初めて受けるときは、受験しやすさや受験者の傾向も含めて、どちらにするか決めるといいでしょう。
学んだ知識は仕事だけでなく、家計の見直しやライフプラン作りに役立ちます。たとえば、住宅ローン、保険、老後資金といったテーマは、学習内容がそのまま判断材料になるため便利です。
この試験は2024年4月からCBT方式に移行し、随時受験が可能になりました。3級で基礎を固めたうえで、必要に応じて2級以上へ広げると学びが途切れません。
リスキリング費用は教育訓練給付金で抑える

学び直しの費用は、教育訓練給付金を使うことで負担を抑えられます。講座費用は数万円から数十万円になることもあり、働きながら始めるには悩ましいところです。ここでは、給付金の基礎知識と、申し込み前に確認したいポイントを整理します。
給付金の3つの種類
| 種類 | 給付率 | 上限額 | 対象講座の例 |
| 一般教育訓練 | 20% | 10万円 | 簿記、TOEIC、ITパスポート、MOS |
| 特定一般教育訓練 | 40〜50% | 25万円 | FP、宅建 などの資格取得講座 |
| 専門実践教育訓練 | 50〜80% | 年間上限40〜64万円 | 看護師、介護福祉士、MBA |
教育訓練給付金は、厚生労働省が指定した講座を受講したときに、費用の一部が支給される制度です。雇用保険に加入している人(または加入していた人)が対象で、給付の種類によって給付率と上限額が変わります。
2024年10月の制度改正で、専門実践教育訓練の給付が手厚くなりました。資格取得後に賃金が5%以上上昇したときは追加で10%が支給され、条件を満たすと最大80%まで受け取れます。なお、対象かどうかは資格名ではなく、講座ごとに決まります。受講前に教育訓練給付金の対象講座かどうかを確認しておきましょう。
受給するための条件
教育訓練給付金を受け取るには、雇用保険の加入状況など一定の条件があります。
初回の利用は、雇用保険の加入期間が1年以上(専門実践は2年以上)が目安です。2回目以降は、前回の受給から3年以上経過していることも確認します。
離職中でも、離職日から1年以内であれば申請できます。申請窓口はハローワークで、給付の種類によっては受講前の手続きが必要です。受講を申し込む前に、対象要件と手続きのタイミングをチェックしてください。
リスキリングで何を学ぶ?よくある質問

リスキリングは情報が多く、何から手をつけるかで迷いがちです。最後に、学ぶ分野の選び方や学習の進め方など、つまずきやすい点をまとめます。
30代・40代・50代から始めても遅くない?
決して遅くありません。政府がリスキリング支援を強化しているのは、現役世代の学び直しを後押しするためです。30代・40代・50代には実務経験という強みがあり、新しいスキルと掛け合わせることで、若い世代にはない価値を発揮できます。年齢を理由に諦める必要はありません。
働きながらでも資格取得は可能?
十分に可能です。今回紹介した資格のほとんどは、1日2時間の学習を2〜3ヶ月続ければ合格圏内に到達できます。通勤時間にスマートフォンで動画講座を視聴したり、昼休みに問題集を解いたりと、すきま時間を活用する方法もあります。仕事と両立している受験者は多いです。
どの資格から始めるべき?
迷ったら、ITパスポートかMOS Excelから始めてみてください。比較的短期間で取得でき、学習の成功体験を積みやすい資格です。ITパスポートはDX時代に必要なIT知識を幅広く学べ、MOSは取得後すぐに業務で活かせる実践的なスキルが身につきます。
無料で学べるサービスはある?
日本リスキリングコンソーシアムがおすすめです。GoogleやMicrosoftなど大手企業が提供する講座のうち、1,500以上を無料・有料で受講できます。ITパスポートや簿記の基礎知識を学べるコンテンツも充実しています。会員登録だけで利用できるので、まずは無料で試してみたい方に向いています。
独学と通信講座、どちらがいい?
資格によって異なります。ITパスポートや簿記3級、FP3級は、市販のテキストと問題集だけでも合格を目指せます。書籍代は3,000〜5,000円程度で済むため、費用を抑えたい方には独学が向いています。
一方、学習計画を立てるのが苦手な方や、質問できる環境がほしい方は、通信講座を検討してみてください。教育訓練給付金の対象講座を選べば、費用の負担も軽減できます。
育休中でもリスキリングに取り組める?
もちろん取り組めます。育休中はまとまった時間を確保しやすく、学び直しには良いタイミングです。オンライン講座なら、子どもが寝ている時間やすきま時間を活用できます。日本リスキリングコンソーシアムのような無料サービスから始めれば、費用の心配もありません。復職後のキャリアに備えて、ITパスポートやMOSなど短期間で取得できる資格から挑戦してみてください。
プログラミングを学ぶべき?
必ずしも学ぶ必要はありません。プログラミングは専門性が高く、習得には数百時間の学習が必要です。未経験から始めると、途中で挫折するリスクも高くなります。
まずはITパスポートでITの基礎知識を身につけ、興味があれば段階的にプログラミングへ進むのがおすすめです。事務職や管理職であれば、Excelやデータ分析のスキルの方が実務に直結しやすいでしょう。
まとめ|リスキリングで何を学ぶか迷うなら「基礎」から
リスキリングで何を学ぶか迷ったら、「今の仕事に活かせるか」を軸に考えると整理しやすいです。30代・40代・50代なら、ITパスポート、情報セキュリティマネジメント、MOS、簿記3級、FP3級といった汎用性の高い資格が候補になります。どれも働きながら学びやすく、実務に結びつけやすいのが共通点です。
費用面が気になるときは、教育訓練給付金を活用することで自己負担を抑えられます。まずは興味のある分野から1つ選び、学習時間を確保できる範囲で始めると進めやすいでしょう。
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