キャリアアップ助成金は、パートも対象になるのか?キャリアアップ助成金のパート活用を検討する際は、確認すべきポイントが多くあります。要件を満たしていても、手続きの順番を誤れば受給できません。
本記事では、パートが対象となる条件や活用できる各コースの特徴、申請の流れまで解説します。自社で活用できるかどうか判断するための、参考にしてください。
キャリアアップ助成金はパートも対象?
キャリアアップ助成金は、パートも要件を満たせば対象になります。厚生労働省の案内にも、非正規雇用労働者の処遇改善を目的とした制度であることが明示されています。
対象可否を判断するために、労働者区分や雇用条件を解説します。
有期雇用労働者等は対象か
パートは有期雇用労働者等に含まれるため、原則として対象になります。
キャリアアップ助成金は、正社員以外の雇用区分から、処遇改善を行う場合に活用する制度です。対象となる労働者区分は次のとおりです。
- 有期雇用労働者等(パート・アルバイト・契約社員など)
- 正社員以外の無期雇用労働者
- 一定の要件を満たす派遣労働者
「パートだから対象」ではなく、雇用契約の内容や社内規程が制度要件に合致していることが前提となります。パートは制度の中心的な対象であり、処遇改善を行う場合に活用できます。
社会保険に加入していないパートは対象か
社会保険に加入していないパートでも、直ちに対象外にはなりません。判断基準となるのは、社会保険ではなく雇用保険の適用状況です。
基本要件は次のとおりです。
- 事業所が雇用保険の適用事業所であること
- 対象労働者が雇用保険の被保険者であること
令和7年7月に新設された「短時間労働者労働時間延長支援コース」では、労働時間延長や社会保険加入を伴う取組が支援対象となりました。
年収の壁への対応とあわせて検討する企業が増えています。社会保険未加入という理由だけで諦める必要はなく、雇用保険の加入状況とコース要件を確認することが重要です。
パートから正社員への正社員化で対象に
パートから正社員への正社員化は、キャリアアップ助成金の代表的な活用方法です。
正社員化コースでは、次の要件を満たす必要があります。
- 有期雇用労働者等を正規雇用へ転換すること
- 就業規則に正社員転換制度を規定すること
- 転換後6か月間の賃金支払い実績を確認できること
形式的な名称変更ではなく、実質的な処遇改善が求められます。パートから正社員への正社員化を行う場合、制度要件を満たしていれば助成対象になります。
自社の雇用区分と就業規則を確認し、最新の公式資料に基づいて判断することが重要です。
参照元:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和7年度7月)」
キャリアアップ助成金のパート活用コース

キャリアアップ助成金 パートを活用する際は、自社がどの取組を行うのかによって選ぶべきコースが異なります。
- パートから正社員へ転換する
- パートの基本給を引き上げる
- 労働時間を延長し社会保険加入につなげる
上記のいずれに該当するかで、適用コースが決まります。主要3コースを解説します。
正社員化コースの特徴
パートから正社員への正社員化を行う場合は、正社員化コースが中心となります。
有期雇用労働者等を正規雇用へ転換し、処遇改善を行った事業主が対象です。
主な要件は次のとおりです。
- 就業規則に正社員転換制度を規定している
- パートから正社員へ実際に転換している
- 転換後6か月間の賃金支払い実績がある
名称だけの変更ではなく、賃金や待遇の改善が伴っているかが審査のポイントです。キャリアアップ助成金 パートの活用で最も利用されるコースです。
賃金規定等改定コースの特徴
パートの時給や基本給を引き上げる場合は、賃金規定等改定コースが対象になります。
このコースでは、基本給を3%以上増額し、賃金規定を改定することが要件です。
主なポイントは次のとおりです。
- 有期雇用労働者等の基本給を3%以上増額
- 就業規則や賃金規定を改定
- 改定後の賃金支払い実績を確認
賃上げを実施する企業にとって、実務と直結しやすい制度です。
短時間労働者労働時間延長支援コースの特徴
短時間労働者労働時間延長支援コースは、令和7年7月に新設された制度です。
パートの所定労働時間を延長し、社会保険加入につなげる取組を支援します。
主な要件は次のとおりです。
- 所定労働時間を延長している
- 処遇改善を伴っている
- 社会保険適用につながっている
年収の壁(106万円・130万円)対策として設計されたコースです。社会保険に加入していないパートの働き方を見直す場合に活用できます。
コース比較一覧
主要3コースの違いを整理します。
| コース名 | 主な取組 | 主な要件 | 活用場面 |
| 正社員化コース | パートから正社員へ転換 | 転換制度の規定 6か月賃金支払い | 人材定着 キャリア形成 |
| 賃金規定等改定コース | 基本給を3%以上増額 | 賃金規定改定 賃金支払い実績 | パートの時給引上げ |
| 短時間労働者労働時間延長支援コース | 労働時間延長+社会保険加入 | 時間延長 処遇改善 | 年収の壁対策 |
自社の人事戦略に合ったコースを選ぶことで、制度の効果を最大化できます。
いくらもらえる?支給額と賃上げ要件
キャリアアップ助成金をパートで検討する際、多くの企業が最初に確認するのが「いくら受給できるのか」という点です。
実務で利用が多い、正社員化コースと賃金規定等改定コースを解説します。
正社員化コース|1人あたり20万円 (15万円)の加算
パートから正社員へ転換する場合は、正社員化コースが対象になります。
中小企業の場合、有期雇用労働者等を正社員へ転換すると、1人あたり最大80万円が支給されます。
支給は2回に分けられ、1期あたり40万円ずつの支給です。無期雇用から正社員へ転換した場合は、1人あたり最大40万円となります。
また、転換制度を新たに整備した場合などは、1事業所あたり20万円(大企業15万円)の加算が認められる場合があります。
正社員化コースは支給額が大きい一方で、次の要件を満たす必要があります。
- 就業規則に正社員転換制度を明記している
- 実際に転換している
- 転換後6か月分の賃金支払い実績がある
処遇改善が伴っていることが前提となります。
賃金規定等改定コース|基本給を3%以上増額
パートの時給や基本給を引き上げる場合は、賃金規定等改定コースが対象になります。
このコースでは、基本給を3%以上増額することが要件です。増額率に応じて支給額が変わります。
中小企業の場合の目安は次のとおりです。
- 3%以上4%未満:4万円/人
- 4%以上5%未満:5万円/人
- 5%以上6%未満:6万5千円/人
- 6%以上:7万円/人
増額率が高いほど支給額も高くなります。
さらに、賃金制度を新たに整備した場合には、1事業所あたり20万円(15万円)の加算が認められるケースがあります。
時給引上げを予定している企業にとっては、活用しやすい制度です。
企業規模による支給額の違い
キャリアアップ助成金は、中小企業のほうが支給額が高く設定されています。
| 区分 | 支給水準の傾向 |
| 中小企業 | 支給額が高めに設定 |
| 大企業 | 中小企業より低め |
自社が中小企業に該当するかどうかは、資本金や従業員数で判断します。申請前に区分を確認しておくことが重要です。
支給額の比較整理
| コース名 | 支給額(中小企業目安) | 取組内容 |
| 正社員化コース | 最大80万円/人 | パートから正社員へ転換 |
| 賃金規定等改定コース | 4万〜7万円/人 | 基本給を3%以上増額 |
| 制度整備加算 | 20万円(15万円) | 転換制度・賃金制度の新設 |
取組の方向性によって受給総額は変わります。人件費の見直し計画とあわせて試算し、最適なコースを選択することが重要です。
申請の流れとスケジュールの注意点

キャリアアップ助成金 パートの申請では、手続きの順番を守れるかどうかが受給の分かれ目です。流れを正しく理解することが重要です。
キャリアアップ計画の提出期限
最初に行うのは、キャリアアップ計画の作成と提出です。
キャリアアップ計画とは、有期雇用労働者等の処遇改善をどのように実施するかを示す書類です。令和7年度からは認定制ではなく、届け出制に簡素化されています。
ただし、提出期限は厳格です。
- 各コース実施日の前日までに提出
- 提出先は管轄の労働局またはハローワーク
正社員化や賃金改定を行った後に提出しても、助成対象にはなりません。キャリアアップ助成金 パートの申請では、「実施前の提出」が絶対条件です。
各コース実施日の前日までに必要な手続き
計画提出とあわせて、社内の制度整備も完了している必要があります。
主な準備事項は次のとおりです。
- 就業規則に正社員転換制度を明記
- 賃金規定を改定し内容を明確化
- 労働条件通知書を整備
実施日とは、次のタイミングを指します。
| コース | 実施日 |
| 正社員化コース | 正社員へ転換した日 |
| 賃金規定等改定コース | 新しい賃金を適用した日 |
| 短時間労働者労働時間延長支援コース | 労働時間を延長した日 |
いずれも実施日の前日までに計画提出と規程整備が終わっている必要があります。
申請タイミングで失敗しやすいポイント
実務で多い失敗例は次のとおりです。
- 計画書を出さずに先に実施した
- 就業規則の改定日が後付けになっている
- 6か月分の賃金支払い実績が確認できない
- 賃金台帳や出勤簿の保存が不十分
正しい流れは次の順番です。
- キャリアアップ計画を作成・提出
- 就業規則・賃金規定を整備
- 正社員化や賃上げを実施
- 6か月分の賃金支払い後に支給申請
キャリアアップ助成金 パートは、制度理解よりも実務管理が重要です。
「実施してから申請を考える」のではなく、実施前に要件を確認し準備を整えることが、確実な受給につながります。
キャリアアップ助成金パート活用の注意点

キャリアアップ助成金のパートは活用しやすい制度ですが、要件確認と社内整備が不十分だと不支給になる可能性があります。
実務で特に注意すべきポイントを解説します。
自社が対象か判断するチェックポイント
申請前に、次の項目を確認することが重要です。
- 事業所が雇用保険の適用事業所である
- 対象となるパートが雇用保険被保険者である
- 有期雇用労働者等に該当している
- 就業規則に正社員転換制度が明記されている
- 基本給を3%以上増額している(該当コースの場合)
キャリアアップ助成金 パートは、単に雇用形態がパートであればよい制度ではありません。
雇用区分・賃金体系・規程整備が要件に合致しているかを総合的に確認する必要があります。
就業規則・賃金規定整備の重要性
審査では、就業規則や賃金規定の内容と実態が一致しているかが重視されます。
確認すべきポイントは次のとおりです。
- 正社員転換制度が明文化されている
- 賃金改定内容が規程に反映されている
- 規程改定日と実施日が整合している
- 労働条件通知書と実際の処遇が一致している
後付けの規程改定は認められません。日付管理と書類の整合性が受給可否を左右します。
専門家に相談するメリット
キャリアアップ助成金のパート活用は、制度構造は整理されていますが、実務では判断が分かれる場面が少なくありません。
たとえば、次のような点は自己判断が難しいポイントです。
- 重点支援対象者に該当するかどうか
- 1人あたり20万円(15万円)の加算対象になるか
- 正社員化コースと賃金規定等改定コースなど、複数コースの併用が可能か
- キャリアアップ計画の記載内容が要件を満たしているか
一見すると条件を満たしているように見えても、書類の記載不足や解釈の誤りにより不支給となるケースがあります。
さらに、制度改正は毎年度行われるため、過去の情報のまま判断してしまうと最新要件とずれている可能性もあります。
社会保険労務士などの専門家へ相談することで、次のようなメリットが期待できます。
- 不支給リスクの回避
- 加算措置を含めた受給額の最適化
- キャリアアップ計画や就業規則整備の適正化
- 申請書類作成・スケジュール管理の負担軽減
制度を正しく理解したうえで自社の状況を整理し、判断に迷う場合は早い段階で専門家へ相談することが、結果的に時間とコストの削減につながります。
まとめ:キャリアアップ助成金はパート活用が鍵
キャリアアップ助成金のパート活用は、要件を満たせばパート従業員も対象となる制度です。パートは有期雇用労働者等に含まれ、正社員化や賃金引上げ、労働時間延長などの処遇改善に取り組むことで活用できます。
一方で、コースごとに要件や申請手順が異なり、キャリアアップ計画の提出期限や各コース実施日の前日までというルールを守らなければ受給できません。自社が対象に該当するかどうか、どのコースを選ぶべきかを正確に判断することが重要です。
判断に迷う場合や、確実に受給を目指したい場合は、早い段階で専門家へ相談することで不支給リスクを抑えやすくなります。制度の活用方法や申請支援の内容については、社会保険労務士法人グロースアシストの公式ウェブサイトで詳しく案内されています。
詳しくは公式ウェブサイトをご確認ください。