公共工事の労務単価を調べると、年度別の単価表や職種別の金額に加えて、予定価格、積算、必要経費といった言葉が出てきます。公共工事の見積書作成や積算に関わる人ほど、「どの単価を、どの場面で使うのか」で迷いやすいところです。
公共工事設計労務単価は、雇用契約上の賃金や実際の支払額そのものではありません。公共工事の予定価格を積算するための基準単価であり、個々の労働者の賃金額や下請契約の単価を直接決めるものではないのです。
本記事では、令和8年3月適用分の労務単価を確認するときの見方と、年度・地域・職種ごとに比較する際の注意点を解説します。
労務単価とは?
公共工事で使う労務単価とは、国土交通省が公表する公共工事設計労務単価を指します。まずは、公共工事設計労務単価の意味と、賃金や見積単価との違いを確認します。
公共工事設計労務単価の意味
公共工事設計労務単価は、予定価格を積算する際に使う職種別・地域別の基準単価です。普通作業員・とび工・電工・鉄筋工など、建設工事に関わる職種ごとに金額が示されます。
単価は年度や地域によって変わります。古い年度の単価や別地域の単価を使うと、積算の前提がずれるため、見積書や工事費内訳書に反映する際は、適用年度・都道府県・職種をそろえて確認します。
なお、公共工事設計労務単価は、所定労働時間内8時間当たりの単価です。時間外・休日・深夜労働の割増賃金や、現場管理費・一般管理費などの諸経費は含まれないため、見積書では単価本体と必要経費を分けて確認します。
雇用契約の賃金そのものではない
公共工事設計労務単価に示されている金額は、従業員へ支払う賃金額そのものではありません。個別の給与額は、雇用契約・就業規則・賃金規程・最低賃金・時間外労働や休日労働の扱いなどを踏まえて決まります。
そのため、給与や手当を見直すときは、公共工事設計労務単価だけで決めず、労働条件や社内規程との整合性も確認します。積算で使う単価と、会社の賃金制度は分けて考える必要があります。
設計や積算で使う単価として扱う
見積書や工事費内訳書では、労務単価を作業内容や人工数と組み合わせて金額を組み立てます。表にある単価をそのまま転記するだけでは、実際の見積金額を説明しにくくなります。
たとえば、同じ電工の単価を参照する工事でも、作業範囲が広い工事と短時間で終わる工事では、必要な人工数が変わります。現場条件、施工方法、工期、必要経費の見込み方によっても、最終的な見積金額は変わります。
社内や発注者に説明するときは、参照した労務単価と、作業量や経費の見込みを分けて示すことが大切です。単価、数量、経費の関係を分けておくと、見積金額の根拠を追いやすくなります。
令和8年3月適用の公共工事設計労務単価

令和8年3月適用分では、前年度に続いて労務単価が引き上げられました。全国全職種の加重平均値は25,834円で、公共工事の積算で見込む労務費の水準が前年度より上がっていることがわかります。詳しく見ていきましょう。
出典:国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について ~今回の引き上げにより、14年連続の上昇~」
令和8年3月適用分の全体像
令和8年3月適用分の公共工事設計労務単価は、令和7年度におこなわれた公共事業労務費調査の結果をもとに決定されています。前年度の単価をそのまま引き上げる仕組みではありません。公共工事に従事した建設労働者の賃金実態を調査し、その結果を都道府県別・職種別の単価に反映しています。
特筆すべきは、14年連続で単価が引き上げられたことです。全国全職種の加重平均値は25,834円となり、初めて25,000円を超えました。全国全職種の単純平均では、令和7年3月比で4.5%の引き上げです。
この数値から、公共工事における労務費の前提が引き続き上昇していることがわかります。社内で見積条件や原価計算の前提を説明するときは、まず「令和8年3月適用分は14年連続の引き上げである」「全国全職種の加重平均値が25,834円に達した」という全体像を押さえると、後続の職種別・地域別確認につなげやすくなります。
全国平均と主要職種の数値
全体像を押さえたら、全国平均と主要職種の数値を確認します。令和8年3月適用分の資料には、全国全職種の加重平均値に加えて、主要12職種などの全国平均値がまとめられています。
| 区分 | 令和8年3月適用の数値 | 前年度比 |
| 全国全職種 | 25,834円 | +4.5% |
| 主要12職種 | 24,095円 | +4.2% |
| 普通作業員 | 23,605円 | +3.0% |
| とび工 | 30,780円 | +4.0% |
| 型わく工 | 31,671円 | +5.0% |
なお、国土交通省資料では、金額は加重平均値、伸び率は単純平均値で示されています。全国平均は全体感をつかむための数値です。実際の積算や見積書の確認では、対象工事の地域と職種を公式表で照合し、参照した資料名と適用時期を残しておくと、後から根拠を説明しやすくなります。
全国平均は、令和8年3月適用分の労務費水準を大づかみに把握するための数値です。一方で、実際の積算や見積書では、工事内容に応じた職種と施工地域の単価を使う必要があります。
そのため、上記の表は概要説明や社内共有の入口として使い、個別の工事では必ず公式資料で対象地域と職種を照合します。参照した資料名と適用時期も残しておくと、後から見積根拠を確認しやすくなります。
令和7年・令和6年との違い
令和8年3月適用分を確認するときは、令和7年3月適用分、令和6年3月適用分と並べて見ると、労務単価の上昇幅をつかみやすくなります。
| 区分 | 令和6年3月適用 | 令和7年3月適用 | 令和8年3月適用 | 令和7年比 | 令和6年比 |
| 全国全職種 | 23,600円 | 24,852円 | 25,834円 | +982円 | +2,234円 |
| 主要12職種 | 22,100円 | 23,237円 | 24,095円 | +858円 | +1,995円 |
| 普通作業員 | 21,818円 | 22,938円 | 23,605円 | +667円 | +1,787円 |
| とび工 | 28,461円 | 29,748円 | 30,780円 | +1,032円 | +2,319円 |
| 型わく工 | 28,891円 | 30,214円 | 31,671円 | +1,457円 | +2,780円 |
出典:国土交通省「令和7年3月から適用する公共工事設計労務単価について ~今回の引き上げにより、13年連続の上昇~」
出典:国土交通省「令和6年3月から適用する公共工事設計労務単価について」
令和8年3月適用分では、全国全職種の加重平均値が令和6年3月適用分から2,234円上がっています。主要12職種も2年間で1,995円上がっており、公共工事の積算で見込む労務費水準が継続して上昇していることがわかります。
過年度の見積書や工事費内訳書を参照するときは、古い年度の単価が残っていないかを確認し、令和8年3月適用分の職種別・地域別単価に更新しておくと安心です。
職種別・地域別の労務単価

職種別・地域別の労務単価は、公式表で都道府県と職種を掛け合わせて確認します。電工・とび工・普通作業員など、同じ職種名でも地域が変わると単価が異なるため、全国平均だけで見積書や社内資料を作らないよう注意します。
職種名から対象単価を探す
「電工 労務単価」のように職種名で検索する場合でも、最終的には国土交通省の都道府県別・職種別表で確認します。公式表では、普通作業員、とび工、電工、鉄筋工などの職種が列として並び、都道府県ごとに金額が示されています。
まず対象工事の施工地域を確認し、次に作業内容に近い職種名を探します。名称が似ていても、実際の作業内容や積算上の扱いが異なるケースがあります。職種区分に迷う場合は、発注者資料や積算基準を確認し、社内資料には参照した年度・地域・職種を残しておくと安心です。
施工地域に合う単価を確認する
公共工事設計労務単価は、同じ職種でも施工地域によって金額が変わります。電工や普通作業員など同じ職種名であっても、全国一律の単価として扱うものではありません。
地域別単価を見るときは、対象工事の施工場所に対応する都道府県の表を確認します。全国平均は全体の水準を知るための数字なので、見積書や工事費内訳書に反映するときは、地域別の公式表をもとに単価を照合してください。
確認した単価の根拠を残す
職種別・地域別の労務単価を社内資料や見積書に入れるときは、金額だけを転記しないようにします。同じ職種名でも、適用時期や地域に応じて参照すべき単価が変わるため、どの資料をもとにした数字なのかを残しておきます。
| 確認項目 | 記録しておきたい内容 |
| 参照資料 | 国土交通省の資料名 |
| 適用時期 | 令和8年3月適用分など |
| 職種 | 電工、普通作業員、とび工など |
| 地域 | 対象工事の施工場所に対応する都道府県 |
| 用途 | 積算、見積書、工事費内訳書など |
このように記録しておくと、社内で金額を見直すときに「どの年度の、どの地域・職種の単価を使ったのか」をたどれます。
労務単価を見積書で確認する手順
| 確認順 | 確認する内容 | 確認する理由 |
| 1 | 見積書の労務費項目 | 公式表と照合する対象を明確にするため |
| 2 | 参照資料と適用時期 | 年度違いの単価を使わないため |
| 3 | 施工地域と職種 | 全国平均や別地域の単価と混同しないため |
| 4 | 必要経費の扱い | 単価本体と見積金額全体を分けるため |
| 5 | 賃金制度・社会保険 | 積算上の単価と労務管理を切り分けるため |
労務単価を見積書で確認するときは、単価の数字だけで判断しないことが大切です。参照資料、適用時期、地域、職種、必要経費の扱いをセットで確認します。公共工事設計労務単価は、公共工事の工事費を積算するための基準として位置づけられています。
1. 労務費項目を特定する
まず、見積書の中から、「労務費」「人工」「作業員単価」「職種別単価」など、労務費に関わる項目を探します。あわせて、作業内容・数量・単位・単価を見て、どの作業にどの単価が使われているかを確認します。
2. 参照資料と適用時期を確認する
見積書や社内資料に、参照した国土交通省資料の名称と「令和何年3月適用分」かが記載されているかを見ます。記載がないときは、見積作成時期と単価の年度を照合し、古い年度の単価が残っていないかを確認します。
3. 施工地域と職種を照合する
公式表で、対象工事の施工場所に対応する都道府県と、見積書に記載された職種名を確認します。全国平均の数値と混同せず、該当する地域・職種の単価を見て、作業内容や発注者資料の区分と合っているかを照合します。
4. 必要経費の計上先を確認する
公共工事設計労務単価には、法定福利費の事業主負担分、研修訓練等に要する費用、現場管理費、一般管理費等の諸経費は含まれていません。これらの必要経費は、公共工事の予定価格を積算する際に、現場管理費等で別に扱われる項目です。
見積書や社内資料を確認するときは、労務単価本体と、事業主が負担する必要経費を分けて読みます。労務単価だけを見て、法定福利費や安全管理費などまで含まれていると考えると、見積金額の根拠を誤って説明するおそれがあります。
5. 賃金・社会保険の確認資料を分ける
従業員へ支払う給与額、社会保険、法定福利費、労働条件は、見積書の労務単価とは別に確認します。見積書では積算上の単価を見て、社内の賃金制度は賃金台帳、就業規則、社会保険の加入状況などの労務資料で確認します。
労務単価でよくある質問

労務単価に関するよくある質問と回答をまとめました。
労務単価は賃金と同じですか?
労務単価と、従業員へ実際に支払う賃金は別のものです。公共工事設計労務単価は、公共工事の予定価格を積算する際に、労務費を見込むための基準として使われます。
そのため、公式表に載っている金額を、そのまま個別の給与額や日当として扱うのは避けましょう。
法定福利費は含まれますか?
公共工事設計労務単価の本体には、法定福利費の事業主負担分や現場管理費・一般管理費などの諸経費は含まれません。国土交通省資料では、法定福利費の事業主負担分や研修訓練等に要する費用は、積算上、現場管理費等に含まれると整理されています。なお、単価決定にあたっては必要な法定福利費相当額を反映する措置が継続されています。
見積書や社内資料を見るときは、労務単価本体と、法定福利費を含む必要経費を分けて確認します。健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険などの会社負担分が、どの項目に計上されているかを見てください。
最新表はどこで見ますか?
最新表は、国土交通省が公表している公共工事設計労務単価の資料で確認します。たとえば、令和8年3月適用分を確認するときは、「令和8年3月から適用」と記載された資料かを見ます。職種別・地域別の金額を使う場合は、全国平均を使わず、対象工事に合う都道府県と職種の表を確認してください。
賃金制度や社会保険で迷うときは?
従業員へ支払う賃金の決め方、社会保険の加入状況、就業規則との整合性などは、社労士に相談しやすい内容です。迷ったら専門家に相談してください。
まとめ:労務単価は年度・職種・地域をそろえて確認する
労務単価の適用や積算方法そのものは、発注者資料や建設業の実務に詳しい専門家へ確認する範囲です。一方で、自社の賃金制度、法定福利費、社会保険、労働条件、労務管理体制を整理したい場合は、社会保険労務士へ相談することで確認すべき論点を分けやすくなります。
社会保険労務士法人グロースアシストでは、賃金制度や社会保険、労働条件の整理をサポートしています。労務単価をきっかけに自社の賃金・労務管理を見直したい方は、現状の課題を整理したうえでご相談ください。
参照
– 国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」
– 国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価」
– 国土交通省「令和7年3月から適用する公共工事設計労務単価について」