「医療費控除や副業をきっかけに確定申告が必要になったものの、仕組みや用語がわからず、つい手が止まってしまう」そんな経験をしている人も多いことでしょう。

確定申告は難しそうで面倒だと感じて途中でやめてしまうと、せっかくの還付を受け取れないことにもなりかねません。

この記事では、手順に入る前に「自分は申告すべき人か」を先に整理し、そのうえでスマホでの申告の流れを紹介します。

確定申告が難しいと思う前に確認したい基本ポイント

確定申告の手順の前に確定申告の基本的な知識を確かめておくと、入力の途中でも迷わずに進められるでしょう。ここでは確定申告をする前に知っておきたいポイントを先に解説します。

会社員が確定申告すべき主なケース

確定申告は、1年間の所得を集計して「所得税」を計算し、納付する手続きです。会社員は年末調整で精算が済むため、原則として自分で申告する必要はありません。

それでも、次のような場合は申告が必要になる、または申告すると還付(納めすぎた税金が戻ってくる)を受けられます。

  • 医療費が年間で一定額を超えたとき
  • ふるさと納税を6自治体以上に行ったとき
  • 住宅ローン控除を受ける初年度
  • 副業の所得が20万円を超えたとき

よく見落とされがちなのが、ふるさと納税です。通常、ふるさと納税のワンストップ特例を使えば、申告は不要ですが、6自治体以上に行ったときには、申告が必要になります。

「所得」と「収入」の違いと副業の20万円ルール

確定申告で間違えやすい言葉が「所得」と「収入」の違いです。収入は受け取った総額です。所得はそこから経費などを差し引いた「もうけ」を指します。

たとえば、副業で30万円を受け取り、経費が15万円なら、収入は30万円、所得は15万円です。

副業でよく聞く「20万円ルール」は、収入ではなく所得(もうけ)で判断します。先ほどの例なら所得は15万円で、所得税の確定申告は原則不要です。ただし、医療費控除などを受けるために確定申告をする場合は、20万円以下の副業所得もあわせて申告する必要があります。また、所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告が必要になる場合があります。

スマホ申告は国税庁のサイトからできる

スマホ申告の中心となるのは、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」です。

画面の案内に沿って入力すれば所得や控除が自動計算され、送信までできます。

税務署に出向く必要も、書類の郵送も不要です。作成コーナーは無料で使え、会社員の申告ならこれだけで足りるケースが多くあります。

源泉徴収票とは

源泉徴収票は、勤務先が発行する「1年間の給与と、天引きされた所得税額」の証明書です。

年末から年明けにかけて会社から受け取ります。スマホ入力では、この用紙に記載の金額を入力します。

どこを見ればよいかわからないときは、まず「支払金額」と「源泉徴収税額」の2つを覚えておきましょう。国税庁が運営する電子申告・納税システム「e-Tax」の場合、源泉徴収票の用紙の提出は不要ですが、内容の確認用として手元に置いておきましょう。

確定申告の期間はいつからいつまでなのか

確定申告の期間は、原則として毎年2月16日から3月15日までです。ただし、土日祝日にあたる場合は、翌平日へ変更されます。

たとえば、2026年(令和8年)に行う2025年分の確定申告では、2026年2月16日から2026年3月16日までが申告期間でした。

期限を過ぎると、納める税金がある場合には延滞税や無申告加算税が発生する可能性があります。

スマホ申告ではマイナンバーカードとアプリを事前準備する

スマホ申告に必要なのはマイナンバーカード、スマホとアプリです。

ここではスマホ申告で必要なものから、機種の確認、iPhoneの新しい使い方までを確認します。

スマホ申告に必要なもの

スマホで申告するなら、次のものをそろえておきましょう。

  • マイナンバーカード
  • スマホ端末
  • マイナポータルアプリ
  • 給与所得の源泉徴収票
  • 医療費の領収書など

還付を受ける場合は、振込先となる本人名義の口座番号も用意しておきます。

必要なアプリは「マイナポータルアプリ」です。このアプリは、カードの読み取りやマイナポータル連携に使います。

なお、項目が少ない簡単な申告であれば、有料の会計ソフトが必須というわけでなく、最後まで無料で申告を完了できます。

参照:マイナポータルアプリ – App Store

参照:マイナポータル – Google Play のアプリ

マイナンバーカードがない場合とID・パスワード方式の現状

スマホで申告するなら、マイナンバーカードを用意しておくのが基本です。

以前はID・パスワード方式もありましたが、令和7年(2025年)10月1日にID・パスワードの新規発行が停止されました。そのため、新たにe-Taxで申告する人は、原則としてマイナンバーカード方式を使うことになります。マイナンバーカードがない場合は、書面提出も選択肢になります。

マイナンバーカードをまだ持っていないなら、早めに申請しておきましょう。交付まで一定の期間がかかるため、申告シーズンの直前だと間に合わないおそれがあるため注意してください。

自分のスマホが読み取りに対応しているか確認する

マイナンバーカード方式では、カードのICチップを読み取れるNFC対応スマホが必要です。iPhoneはiOS16.4以降、AndroidはNFC対応機種が対象になります。

自分の機種が対応しているか不安なら、マイナポータルが公開している対応機種の一覧で事前に確認できます。

参照:マイナポータルアプリに対応しているスマートフォン等を教えてください。マイナポータル

令和7年分からiPhoneはカードの読み取りなしで申告できる

近年大きな変化としては、iPhoneでカードの読み取りが不要になったことです。

令和7年分の確定申告から、iPhoneのマイナンバーカード(スマホのマイナンバーカード)を使えば、物理カードをかざさずに申告書の作成・送信ができます。なお、Android端末では先行して対応しています。

利用者証明用のパスワード入力は、Face IDなどの生体認証で行えます。事前にマイナポータルアプリのメニューから「iPhoneのマイナンバーカード」を設定しておけば、申告のたびにカードを探す必要がありません。

参照:「iPhoneのマイナンバーカード」に対応しました。【e-Tax】国税電子申告・納税システム(イータックス)

参照:令和7年分 確定申告特集(スマホとマイナンバーカードでe-Tax)国税庁

参照:スマートフォンのマイナンバーカード デジタル庁

マイナンバーカードの事前確認

マイナンバーカードを使う前に、2種類の暗証番号を確認しておきます。ログインなどに使う「利用者証明用」は数字4桁、送信時の電子署名に使う「署名用」は英数字6文字から16文字です。

署名用パスワードは申告の最後に必要になるため、忘れていないか先に確かめておくと安心できます。あわせてマイナポータルとの連携設定を済ませておくと、控除証明書などの情報が申告書に反映され、入力にかかる手間を減らせます。

参照:マイナンバーカード方式について| 【e-Tax】国税電子申告・納税システム(イータックス)

スマホでの確定申告のやり方

確定申告のやり方の流れとしては、国税庁のウェブサイトにある「確定申告書等作成コーナー」にアクセスし、質問への回答・金額入力・電子署名・送信となります。これは、スマホだけで完了します。

スマホでの申告のやり方は大きく3ステップです。

ステップ1|国税庁の「確定申告書等作成コーナー」からはじめる

スマホで国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を開き、「作成開始」をタップします。

最初に、「所得税」を選び、申告する年分・提出方法・収入の種類などの質問が表示されます。

質問に答えることで、必要な入力項目が画面に表示されるので、確認しながら間違えないように進めていきましょう。

参照:【確定申告書等作成コーナー】国税庁

ステップ2|質問への回答と収入・控除の入力

次に、源泉徴収票の金額や控除額、氏名・マイナンバーなどを画面の案内に沿って入力します。

給与・年金・副業など、自分に該当する収入を選び、医療費控除やふるさと納税などの金額を入力します。

ステップ3|マイナンバーカードで署名して送信する

入力内容を確認したら、電子署名します(スマホに搭載したカードを利用、あるいはマイナンバーカードを読み取る)。

本人確認は署名用パスワード、またはFace IDや指紋認証などの生体認証を用いて行います。送信後に「受信通知」が届けば申告は完了です。

入力項目の意味がわからないときの調べ方

確定申告では、「所得」「控除」など聞き慣れない言葉が出てくることがあります。その場合は、項目名をそのまま検索してみましょう。

それでも迷う場合は、国税庁のチャットボット「ふたば」や電話相談を利用できます。副業収入の区分や控除の対象になるか判断に迷ったときは、確認してから入力すると安心です。

なお、e-Taxは途中保存ができるため、わからない項目があれば一度中断して後から再開することもできます。

参照:よくある質問(Q&A) | 【e-Tax】国税電子申告・納税システム(イータックス)

参照:税についての相談窓口 国税庁

参照:【確定申告書等作成コーナー】-入力途中のデータの保存方法

医療費控除をスマホで申告する手順|マイナポータル連携で自動入力

医療費控除は、原則として「年間の医療費が10万円、または総所得金額等の5%のいずれか少ない金額を超えた場合」に対象となります。

控除額は、支払った医療費から10万円(または基準額)と、保険金などで補てんされた金額を差し引いて計算します。

医療費控除はマイナポータル連携で年間医療費が自動入力でき、対象なら還付額もその場で確認できます。

領収書を一枚ずつ打ち込む作業は、医療費控除で手間がかかる場面です。連携を使えばここが大きく変わります。そのステップを順番に見ていきましょう。

参照:令和7年分 確定申告特集 医療費控除を受ける方へ 国税庁

マイナポータル連携で医療費を自動入力する方法

事前にマイナポータルとe-Taxを連携設定しておくと、健康保険から届く「医療費通知情報」をマイナポータル経由で自動取得し、申告書に自動入力でき、年間の医療費が一覧で確認できます。つまり、以前のように領収書を一枚ずつ入力する必要がありません。

マイナポータルとe-Taxの連携方法は、スマホでマイナポータルアプリを開き、ログインします。画面の右上にある三本線の「メニュー」をタップします。「外部サイトとの連携」で「国税電子申告・納税システム(e-Tax)」を選びます。その後は画面の案内で操作を進めれば連携完了となります。

ただし、マイナポータル連携で自動取得できるのは、原則として保険診療分のみです。市販薬の購入費や通院のための交通費は自動取得に含まれないため、領収書をもとに別途手入力する必要があります。

参照:マイナポータル連携で自動入力!|令和7年分 確定申告特集 国税庁

参照:マイナポータルとe-Taxを連携する方法を教えてください。| 【e-Tax】国税電子申告・納税システム(イータックス)

連携できない場合は通知や領収書から入力する

医療費の連携ができない場合でも、健康保険組合などから届く「医療費のお知らせ」や病院の領収書を使って申告できます。

領収書しかない場合は、受診日や金額を一覧にまとめながら入力すると、集計ミスを防ぎやすくなります。

確定申告の内容を間違えても修正申告できる

「確定申告の内容を間違えたら罰せられるのでは」という不安から、申告そのものを後回しにする人もいるかもしれません。

実際には、期限内に申告していれば、後から間違いに気づいてもやり直せます。税額が少なすぎた場合は「修正申告」、多く払いすぎた場合は「更正の請求」で対応できます。

申告後に誤りに気づいた場合、税額が少なかったときは修正申告、多く申告していたときは更正の請求で対応します。修正申告によって追加で納付する税額がある場合は、延滞税や過少申告加算税がかかることがあります。

過度におそれず、まずは正しく申告することに努めることが大切です。

参照:確定申告を間違えたとき 国税庁

スマホで過去のデータを見る方法はメッセージボックスで確認する

過去にe-Taxで提出した申告内容は、スマホから過去のデータを見ることができます。

作成コーナーの「メッセージボックスの確認」から、ログインすると、受信通知やお知らせで過去の申告状況が表示され、受信通知のなかにある「帳票を表示する」を選ぶと確定申告の内容を確認できます。

参照:スマートフォンを利用してe-Taxソフト(WEB版)で受付結果(受信通知)を確認するにはどうすればいいですか。| 【e-Tax】国税電子申告・納税システム(イータックス)

まとめ:スマホで確定申告は完了できる

スマホやマイナンバーカードの事前準備や最新情報を知れば、スマホで確定申告を迷わず終えられます。まず、所得と収入の違いや20万円ルールといった基本的なことを理解しておくことをおすすめします。

そのうえでマイナンバーカード・アプリ・対応機種を事前準備としてそろえましょう。申告ミスは修正ができるので、難しいと身構えすぎる必要はありません。

個人事業主として事業を行っている方は、確定申告だけでなく助成金や補助金の活用、労務管理などが必要になる場合もあります。事業に役立つ情報を探している方は、社会保険労務士法人グロースアシストの記事もご参考ください。