利益が出てきて、決算が近づくたびに「このまま税金を払い続けるのはもったいない」と感じていませんか。
「税理士に任せきりで、自分では何から手をつければいいかわからない」そんな状態のまま手当たり次第に動くと、やりすぎて税務署から指摘を受けたり、手間の割に効果が出なかったりしかねません。
この記事では、法人を運営する中小企業の経営者に向けて、先に押さえるべき注意点を整理したうえで、使える節税対策を順番に紹介します。
法人の節税対策で最初に知っておきたい注意点
法人の節税で誤った方法をやりすぎると税務署の指摘を招くため、効果と手間で選ぶのが前提です。
具体的な手法に入る前に、注意すべき点を先に押さえておきましょう。
節税と脱税の違い
節税と脱税の違いは、法律のルールに沿っているかどうかです。ルール内で税負担を軽くするのが節税、事実を偽って税を逃れるのが脱税です。その中間に、形式上は合法でも制度の趣旨を外れた「租税回避」というグレーな領域があります。
実態のないペーパーカンパニーや、不自然な量の経費計上は、税務調査で指摘されやすい典型です。
参照:租税回避とは?日本におけるルールや事例、リスクについて解説 | 会社設立の基礎知識 – 小谷野税理士法人
法人税は所得800万円以下が15%
資本金1億円以下の中小法人は、年800万円以下の所得部分が15%、800万円を超える部分が23.20%です。
この15%は本来より引き下げられた特例で、当面のあいだ延長されています。地方税を含めた実質的な負担(実効税率)は所得の規模で変わり、利益が小さいうちは2割強、大きくなると3割台になるのが目安です。
見落としやすいのが、経費を増やしても手元のお金がそのまま戻るわけではない点です。
例えば10万円を経費にしても、減る税金は税率分の2万〜3万円ほどで、残りは支出として出ていきます。「経費を増やすほど得」ではなく、必要な支出かどうかで選ぶのが現実的です。
「課税の繰り延べ」に注意|保険や共済は出口で課税される
節税策を見るときに欠かせない視点が「課税の繰り延べ」です。
これは税金が消えるのではなく、支払う時期を後ろにずらすだけという話です。後で紹介する法人保険や共済の多くはこれにあたり、解約のときに課税されます。出口で何に使うかまで考えておかないと、節税したつもりが税金の先送りとなります。
経費・決算前にできる法人の節税テクニック

経費や決算前の節税は、役員報酬・社宅・消耗品・決算賞与・車・設備投資が中心で、実行しやすいというメリットがあります。
①役員報酬の適正化
役員報酬は会社にとって経費になるため、役員報酬を増やすと、会社の利益が減り、法人税の負担を抑えられます。
ただし、経費として認められるには「定期同額給与」のルールがあり、原則として事業年度開始から3ヶ月以内に決めた金額を毎月同額で支払う必要があります。つまり、決算前だけ役員報酬を増やして利益を減らすような操作は認められません。
また、役員報酬は高ければ得というわけではありません。報酬を増やすと会社の法人税は減りますが、社長個人の所得税・住民税・社会保険料は増えます。反対に低すぎると会社の利益が増えて法人税が高くなります。
そのため、役員報酬は「会社と個人の税金・社会保険料の合計が最も少なくなる金額」を目安に設定することを検討しましょう。
参照:No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)|国税庁
②社宅制度|会社負担との差額を経費にする
会社名義で契約した賃貸物件を社宅として貸し出す方法です。会社が大家に支払う家賃と、本人から徴収する家賃の「差額」を会社の経費にできます。
従業員に貸す場合は、本人が賃貸料相当額を負担していれば、会社の負担分は給与として課税されません。
一方、経営者(役員)が住む役員社宅では従業員とは異なる計算基準が適用されます。役員の場合は、物件の規模などに応じて国税庁が定める「賃貸料相当額」を本人が負担する必要があります。
この基準額を本人の負担額が下回った場合、その差額が役員賞与(給与)とみなされて課税されるため注意が必要です。
③出張手当|出張旅費規程で損金を増やす
出張が多い会社は、出張旅費規程を整えて出張手当(日当)を支給すると損金を増やせます。
規程にもとづいて社会通念上ふさわしい金額を支給すれば、会社はその全額を経費にでき、受け取る役員や従業員の側も、通常必要と認められる範囲なら所得税がかかりません。
会社と個人の双方にメリットがあるため、出張の多い会社は規程の整備を検討する価値があります。
④消耗品の前倒し購入|決算前に支出を今期へ寄せる
決算直前でも間に合う節税は、支出のタイミングを今期に寄せる方法が中心です。消耗品の前倒し購入がその代表で、ほかにも同じ発想の手があります。
- 消耗品の前倒し購入:事務用品などは、通常業務で経常的に使用する範囲であれば経費処理できる場合がある
(ただし、決算時点で未使用のまま大量に残っているものは、原則として貯蔵品などとして資産計上が必要になる場合があります。) - 広告の前倒し:今期中に出稿した広告費を計上できる
- 短期前払費用:家賃などを年払いにすると、要件を満たせば1年分を今期の経費にできる
ただし、不自然な量の消耗品をまとめ買いすると税務調査で否認される可能性もあるため、通常の範囲にとどめましょう。
⑤決算賞与|従業員への賞与を今期の損金にする
従業員への決算賞与は、今期の損金にできます。
ただし、まだ支払っていない賞与を未払いで今期に計上するには、決算までに支給額を各人別に通知し、その通知をしたすべての使用人に対して、事業年度終了日の翌日から1か月以内に実際に支払うなどの要件があります。
要件を満たさないと今期の経費として認められないため、支給を決めたら早めに段取りを進めるのが安全です。
⑥社用車は購入とリースどちらが節税になるか

車は使用方法によって、購入とリースのどちらが最適であるかが変わります。それぞれの特徴を整理すると次のとおりです。
| 観点 | 購入 | リース |
| 経費化の方法 | 車両代を減価償却で経費化 | 毎月のリース料をそのまま経費化 |
| 1年あたりの経費 | 中古車は法定耐用年数が短く大きく取りやすい | 契約期間に応じて平準化 |
| 初期費用 | まとまった資金が必要 | 抑えられる |
| 注意点 | 取得月数分しか償却できない | 金利・リース会社の利益を含み総額が割高になることも |
「決算前に車を買えば全額経費にできる」と思われがちですが、これは誤りです。購入した車は所有月数分しか減価償却できないため、節税狙いなら期首に近い時期の購入が有利です。
⑦少額減価償却資産の特例|設備投資を経費にする
本来は数年に分けて減価償却する資産でも、取得価額が一定額未満で、事業の用に供した場合には、その事業年度に全額を損金算入できる場合があります。1年あたり合計300万円までが上限で、対象は青色申告の中小企業者等に限られます。
令和8年4月1日以後に取得等をする資産については、取得価額基準が40万円未満に引き上げられています。期限つきの特例なので、使うときは取得時期や最新の条件を確認しておくと安心です。
保険・共済・不動産・別会社設立を使った法人の節税

保険や共済や不動産は中長期の節税ですが多くは課税の繰り延べで、別会社設立は所得分散になるものの事業実態が前提です。
⑧経営セーフティ共済の節税効果と出口戦略
中小企業に使いやすいのが経営セーフティ共済(倒産防止共済)です。掛金は毎月積み立てられ、総額800万円まで全額を損金にできます。取引先の倒産に備えつつ税負担を平準化できる仕組みとして、中小企業に広く使われています。
ただし、解約して受け取るお金は全額が課税対象です。これも繰り延べなので、退職金の支払いと時期を合わせるなど、出口の使い道を決めておく必要があります。近年の改正で、解約後すぐに再加入した場合の掛金は経費にできなくなった点にも注意します。
参照:経営セーフティ共済で節税できる?仕組み・課税タイミング・加入方法を解説 | マネーフォワード クラウド会社設立
⑨法人保険は2019年改正で限定的に|全額損金は原則不可
法人保険で節税という話を聞いたことがあっても、いまは仕組みが変わっています。2019年の改正以降に契約する定期保険などは、解約時に戻るお金の割合が高いと規制の対象になります。保険料の一部を資産として計上する必要があり、全額をその年の経費にはできません。
さらに解約返戻金は受け取り時に課税されるため、保険による節税効果は限定的です。保険は節税商品としてではなく、保障が必要かどうかで判断するのが本来の使い方です。
参照:法人保険で節税できる?全額損金にできる条件やルールを解説|マネーフォワード クラウド会社設立
⑩不動産投資の仕組みとデッドクロスのリスク
不動産投資は、建物の価値の目減り(減価償却)を経費にして利益を圧縮する方法です。特に法定耐用年数が短い木造の築古物件は、1年あたりの減価償却費を取りやすいとされます。利益規模の大きい会社ほど効果が出やすい反面、手間とリスクも大きい方法です。
注意したいのが「デッドクロス」です。ローンの元金返済額が減価償却費を上回ると、帳簿上は黒字でも手元資金が苦しくなり、税金だけが重くのしかかります。出口(売却や借り換え)まで計画してから始めるのが安全です。
参照: 不動産投資の「デッドクロス」とは|節税目的なら避けられない?回避するポイントも解説 | manabu不動産投資
⑪別会社の設立による所得分散|中小企業の軽減税率を活かす
すでに法人を運営している場合の応用として、事業の一部を切り出して別会社を設立し、所得を分散する方法があります。中小法人は所得の一定額まで低い軽減税率が使えるため、複数の法人に所得を分けると、低い税率の枠を活用しやすくなります。
ただし注意点があります。大きな親会社に完全に支配されている会社は、この軽減税率の対象外です。
また、税負担を減らすためだけに実態のない会社を作ると、租税回避として否認されるリスクがあります。別々の事業や取引の実態があることが前提で、安易な分社化は避け、導入前に専門家へ相談するのが安全です。
参照:No.5800 一定の大法人等の100%子法人等における中小企業向け特例措置の不適用について|国税庁
まとめ:最新の情報を確認して適切に節税する
節税は手法の数ではなく、自社の利益規模に合うものを効果・手間・出口の3点で選び、毎年の改正に合わせて見直すのが近道です。
注意したいのが保険や共済、不動産による節税の多くが課税の繰り延べであり、解約や売却の出口で課税される点です。効果は税率分にとどまるため、手間や資金の流出とのバランスで選ぶ必要があります。
そのほか、度を越えた節税は税務署の指摘につながる点です。節税はあくまで手段であり、本業の利益を伸ばすことが土台になります。
自社の利益規模にどの手法が合うか、改正後の要件を満たすかの最終判断は、専門家に確認するのが確実です。
法人の税務対策を見直すタイミングは、人件費や社会保険料といった「労務コスト」を最適化する絶好の機会でもあります。現在の労務環境に合った制度活用の相談は、社会保険労務士法人グロースアシストの公式ウェブサイトをご確認ください。