固定資産を購入したとき、その費用を一度に全額計上するのではなく、数年にわたって分割して経費にする会計処理を「減価償却」といいます。正しく計算できると節税効果や資金繰り改善にもつながりますが、「計算式がよくわからない」「定額法と定率法の違いが曖昧」といった声も多いです。

この記事では、減価償却の基礎から計算方法、エクセルシートや計算サイトを活用した方法まで解説します。

減価償却とは?なぜ計算が必要なのか

減価償却は、建物・機械・車両などの固定資産を取得した際、その購入費用を耐用年数に応じて毎年少しずつ経費として配分していく会計処理のことです。たとえば、100万円の機械を購入した場合、その年に100万円を一括で経費にするのではなく、耐用年数が5年であれば、原則として毎年20万円ずつ費用計上します。

このような処理が必要なのは、固定資産が購入した年だけでなく、その後も長期間にわたって事業に使用されるためです。費用と収益の対応関係を正しく反映するために、減価償却は会計上重要な役割を持ちます。

なお、減価償却の対象となるのは、一般的に「使用可能期間が1年以上かつ取得価額が10万円以上」の資産である点には注意が必要です。

耐用年数とは?減価償却計算に必要な基礎知識

耐用年数とは、固定資産が使用できる期間として、税法上あらかじめ定められた年数のことです。「法定耐用年数」とも呼ばれ、資産の種類・構造・用途ごとに細かく設定されています。

ここでは、減価償却を理解するうえで重要となる耐用年数の基本的な考え方について解説します。

新品資産と中古資産の耐用年数の違い

耐用年数は自分で決めるものではなく、国税庁が定める法定耐用年数表をもとに確認します。

資産の種類構造・用途耐用年数
建物(事務所)鉄筋コンクリート造50年
建物(事務所)木造24年
建物(住宅)木造22年
普通自動車6年
軽自動車4年
パソコン電子計算機4年
事務机(金属製)15年

新品資産には、上記の法定耐用年数がそのまま適用されます。

一方、中古資産を取得した場合は、原則として「今後どれくらい使用可能か」を見積もって耐用年数を算定します。中古資産の耐用年数は算定が難しいケースも多いため、実務では「簡便法」が広く用いられています。

中古資産の耐用年数を求める簡便法

中古資産の耐用年数は、以下の2パターンで計算します。

ケース具体例
法定耐用年数をすでに経過している資産耐用年数=法定耐用年数×20%例:法定耐用年数6年の中古車を、耐用年数経過後に取得した場合→6年×20%=1.2年
※端数切り捨てで1年。ただし最低2年とされるため2年
法定耐用年数の一部のみ経過している資産耐用年数=(法定耐用年数 − 経過年数)+経過年数×20%例:法定耐用年数6年の中古車を3年落ちで取得した場合 →(6 − 3)+(3 × 20%)=3+0.6=3.6年
※端数切り捨てで3年

計算結果が2年未満となる場合は、最低2年として扱います。

参照元

No.5404 中古資産の耐用年数|国税庁 

減価償却の計算方法は2種類!定額法と定率法の違いを比較

減価償却の計算方法には主に「定額法」と「定率法」の2種類がありますが、どちらを選択するかによって毎年の費用計上額や節税効果は大きく変わります。とくにキャッシュフローや利益計画にも影響するため、正しい理解が重要です。

ここでは、それぞれの計算式を比較しながら違いを整理し、さらにケース別での選び方まで解説します。

定額法と定率法の計算式を比較表で解説

定額法と定率法の計算式の違いは以下のとおりです。

比較項目定額法定率法
計算の基準取得価額(毎年同額)未償却残高(毎年減少)
毎年の償却額一定初年度が最大、年々減少
計算の難易度簡単やや複雑
節税効果低め高め
法人届出が必要届出不要
個人事業主届出不要届出が必要

定額法と定率法の違いを理解するコツは、「費用の減り方のイメージ」をつかむことです。

定額法は毎年同じ金額を計上する「一直線に減っていくイメージ」、一方で定率法は残っている価値に一定率をかけるため、初年度ほど多く、年が経つほど少なくなる「右肩下がりのイメージ」と考えると整理しやすくなります。

参照元

No.5403 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示|国税庁 

No.2100 減価償却のあらまし|国税庁 

どちらを選ぶべき?ケース別の判断基準

どちらを選ぶべきかは、「利益の出方」と「節税のタイミング」で判断するのがポイントです。毎年安定した利益計上を重視するなら定額法、初期に経費を多く計上して節税効果を早めたいなら定率法が向いています。

また、設備投資が大きい業種や初期負担が重いケースでは定率法が選ばれやすく、長期安定経営では定額法が好まれる傾向があります。

【具体例つき】定額法・定率法の計算式をそれぞれ紹介

減価償却の計算方法には主に「定額法」と「定率法」の2種類がありますが、どちらも具体的な数字を使って理解すると一気に整理しやすくなります。

ここでは、実際の計算例とあわせて定額法・定率法の計算式をそれぞれ解説します。「毎年一定額で減るのか」「残存価額に一定率を掛けるのか」という違いを式に当てはめて確認することで、それぞれの仕組みをより直感的に理解できるようになるでしょう。

定額法の計算式

定額法の計算式は、以下のとおりです。

  • 減価償却費=取得価額× 定額法の償却率

取得価額120万円・耐用年数5年の機械を定額法で償却する場合、以下のように計算します。

120万円×0.200=24万円(毎年)

※耐用年数5年の定額法償却率は0.200です。

この場合、5年間にわたり毎年24万円を計上し、最終年は端数調整として23万9,999円を計上して、帳簿価額を1円残します。

定率法の計算式

定率法は2段階の計算が必要です。

ケース計算式
基本の計算式減価償却費=未償却残高×定率法の償却率
償却保証額を下回った年度から切り替え減価償却費=改定取得価額 × 改定償却率

償却保証額とは「取得価額×保証率」で求められる金額であり、減価償却費がこの金額を下回った年度から改定償却率による計算に切り替えます。

取得価額100万円・耐用年数4年の機械を定率法(200%定率法)で償却する場合、以下のように計算します。

年度期首未償却残高減価償却費期末未償却残高
1年目100万円100万円×0.500=50万円50万円
2年目50万円50万円×0.500=25万円25万円
3年目25万円25万円×0.500=12万5,000円12万5,000円
4年目12万5,000円12万5,000円×1.000 =12万4,999円(1円残す)1円

※定率法の償却率:0.500

 保証率:0.12499

3年目までは通常の定率法で計算しますが、4年目は償却額が保証額を下回るため、改定償却率を用いた計算に切り替えます。最終的に帳簿価額を1円残すため、端数調整が行われます。

【資産別】減価償却の計算例を一覧で解説

減価償却は資産の種類によって耐用年数や計算方法が異なるため、「どの資産がどれくらいの期間で費用化されるのか」を理解することが重要です。パソコン・自動車・中古資産・中古マンションなどは、それぞれ耐用年数や扱い方に特徴があり、理解しているかどうかで節税効果や会計処理の精度も変わります。

ここでは、減価償却の計算例を資産別に解説します。

パソコンの耐用年数

パソコン(電子計算機)の法定耐用年数は4年で、定額法の償却率は0.250です。

取得価額20万円のパソコンを定額法で償却する場合、次のとおり計算します。

  • 20万円×0.250=5万円(毎年)

なお、取得価額が10万円以上30万円未満の資産については、年間合計300万円までの範囲であれば、「中小企業者等の少額減価償却資産の特例」を適用することで、取得した年に全額を経費として計上することが可能です。

自動車の耐用年数

自動車の耐用年数は車種によって異なります。

車種耐用年数
普通自動車6年
軽自動車4年
運送事業用の大型乗用車5年

取得価額200万円の普通自動車を定額法で償却する場合、次のとおり計算します。

  • 200万円×0.167=33万4,000円(毎年)

※耐用年数6年の定額法償却率は0.167

中古資産・中古マンションの耐用年数

築20年の木造中古建物(法定耐用年数22年)を購入した場合の耐用年数は次のとおりです。

(22年−20年)+(20年×20%)=2+4=6年

中古資産の耐用年数は「未経過年数+経過年数×20%」で算出されます。なお、不動産投資では、建物部分のみが減価償却の対象となり、土地は対象外である点には注意が必要です。

不動産・建物の減価償却計算で押さえるべきポイント

不動産・建物の減価償却をする際は、以下のポイントに注意しましょう。

  • 建物と土地は分けて計算する(土地は償却対象外)
  • 構造別に耐用年数が異なる
  • 新築と中古で計算方法・期間が変わる
  • 取得価額には付随費用も含める
  • 定額法が基本だが用途によって例外あり

不動産の減価償却は、建物の構造や取得条件によって計算が大きく変わります。そのため、まず「どこまでが償却対象か」を正しく切り分けることが重要です。

そのうえで耐用年数と取得価額の範囲を押さえることで、節税効果や収支計画の精度が高まり、実務でも迷いにくくなります。

年度途中で取得・売却した場合の減価償却計算

減価償却は原則として1年単位で計算されますが、年度途中で取得・売却した場合は「いつから・いつまで使用したか」を正しく反映する必要があります。ここを誤ると、経費計上額や利益計算にズレが生じるため注意が必要です。

ここでは、年度途中で取得・売却した場合の計算手順について解説します。

取得月ごとの月割り計算方法

固定資産を年度の途中で取得した場合は、事業用に供した月から年度末までの月数に応じて減価償却費を按分します。

初年度の減価償却費=年間の減価償却費×使用月数 ÷ 12

3月決算の会社が10月に取得価額120万円・耐用年数5年のものを購入した場合、以下の手順で計算します。

  1. 年間の減価償却費:120万円 × 0.200(定額法)= 24万円
  2. 使用月数:10月〜3月 = 6ヶ月
  3. 24万円×6÷12=12万円(初年度)

なお、1か月に満たない端数がある場合は、1か月に切り上げて計算します。

売却・廃棄時の未償却残高の求め方

資産を売却・廃棄した際は、その時点での未償却残高を計算し、売却損益や除却損として処理します。

未償却残高=取得価額−減価償却累計額

取得価額100万円・減価償却累計額60万円の機械を70万円で売却した場合、以下のとおり計算します。

  1. 未償却残高:100万円−60万円=40万円
  2. 売却価額70万円−未償却残高40万円=固定資産売却益30万円(特別利益)

※上記は法人の場合の処理です。個人事業主が事業用資産を売却した場合は『譲渡所得』となり、事業所得には含めません。

売却価額が未償却残高を上回る場合は「売却益」、下回る場合は「売却損」として計上します。なお、年度途中で売却した場合は、売却月までの減価償却費を月割りで計上したうえで、未償却残高を確定させます。

参照元

No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法|国税庁 

減価償却の計算を簡単にするエクセルシート・計算サイトの活用方法

減価償却の計算は複雑で手作業ではミスが起こりやすいため、「どのようにすれば効率的かつ正確に処理できるのか」と悩む方も多いでしょう。そこで役立つのが、Excelや計算サイトの活用です。

ここでは、計算サイトの使い方とExcelでの自動計算方法について、それぞれ詳しく解説します。

減価償却計算サイトの使い方

無料で使える計算サイトでは、取得価額・耐用年数・取得年月日・償却方法を入力するだけで、各年度の減価償却費を自動で計算できます。手計算に不安がある場合や、複数の資産を素早く試算したい場合に便利です。

また、国税庁の「確定申告書作成コーナー」でも減価償却費の計算シミュレーションを利用できるため、計算ツールを活用したい方は併せて確認しておくとよいでしょう。

エクセルシートで自動計算する方法

エクセルを使えば、定額法・定率法どちらの計算もテンプレートとして管理できます。基本的な設計は以下のとおりです。

A:年度B:取得価額C:償却率D:年間減価償却費(=B×C)E:累計償却額F:未償却残高(=取得価額−累計償却額)

定率法の場合は、IF関数を活用して、減価償却費が償却保証額を下回った年度から自動的に改定償却率へ切り替わるよう設定すると、手入力によるミスを防げます。また、自社の固定資産台帳と連携して管理することで、決算時の集計作業を大幅に効率化できます。

減価償却の計算に関するよくある質問

ここでは、減価償却の計算に関するよくある質問をQ&A方式で解説します。

個人事業主で車を対象とする場合、定額法と定率法のどちらを選ぶべきですか?

個人事業主の場合、減価償却の方法は資産の種類ごとに原則が定められています。定率法を選択できる資産については、「減価償却資産の償却方法の届出書」を税務署へ提出しなければなりません。

実務上、車両は使用初期に価値の下落が大きいため、定率法を選択すると初年度の経費を多く計上できます。ただし、所得が少ない年度や赤字の年度では節税効果が限定的になるため、収益状況と照らし合わせて選択することが重要です。

無料の計算サイトだけで計算しても問題ありませんか?

概算の把握や学習目的であれば、計算サイトは十分に役立ちます。ただし、税務申告に使用する正式な数値は、国税庁が定める法定償却率を用いて正確に計算する必要があります。

サイトの計算結果はあくまで参考とし、最終的な数値については税務署の資料や専門家の確認のもとで使用することが確実です。

【まとめ】減価償却の計算は耐用年数と計算方法を理解すれば難しくない

減価償却の計算は、はじめは複雑に見えますが、「耐用年数」と「定額法・定率法のどちらを使うか」を整理すれば、基本的な計算はシンプルです。

まずは自社・自身が保有する資産の耐用年数と取得価額を確認し、計算サイトやエクセルを活用しながら試算してみることをおすすめします。

もし、この記事をきっかけに、税務処理に関する情報をより把握したいと考えている方は、社会保険労務士法人グロースアシストの情報も参考にしてみてください。