AI(人工知能)やDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展で仕事の形が変わり、将来に備えて「リスキリング」を考える方が増えています。ただ、講座の受講料が想定より高く、受講をためらうこともあるでしょう。

個人が利用できる支援制度は複数あり、要件を満たすと受講料の自己負担を抑えられます。さらに、制度ごとの対象や手続きを押さえると、費用面の不安を小さくできるのです。

本記事では、リスキリング講座などに適用される補助金や支援制度について徹底解説します。この先、スキルアップを考えている方は、ぜひ参考にしてください。

リスキリングに使える補助金とは?

リスキリングに使える補助金とは、新しいスキルを学ぶ際の受講料などを国や自治体が一部支援する制度です。その背景には、技術の進化に対応できる人材を増やし、働く人の学び直しを後押ししたい政府の狙いがあります。

一方で、「補助金」「助成金」「給付金」は似た言葉に見え、違いがつかみにくいところです。以下、それぞれの意味と使われ方を整理します。

補助金と助成金の違い

種類主な管轄特徴審査
補助金経済産業省・自治体政策目的に沿った事業を支援あり(採択制)
助成金厚生労働省雇用や人材育成を支援要件を満たせばほぼ受給可
給付金厚生労働省など個人の生活・学習を支援要件を満たせば受給可

補助金は審査を通過しなければ受け取れません。一方、助成金や給付金は条件を満たせば基本的に受給できます。

リスキリング関連で個人が使いやすいのは、厚生労働省の「教育訓練給付金」や経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」です。どちらも受講料の一部を国が負担してくれる仕組みで、会社を通さずに本人が直接手続きを行えます。

個人・フリーランスが使えるリスキリング関連の補助金

ここからは、「教育訓練給付金」と「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」の内容を詳しく解説します。

教育訓練給付金(厚生労働省)

種類基本給付率追加給付最大給付率上限額
一般教育訓練20%なし20%10万円
特定一般教育訓練40%資格取得+就職で+10%50%25万円
専門実践教育訓練50%資格取得+就職で+20%賃金上昇で+10%80%年64万円

教育訓練給付金は、雇用保険の加入者(または過去の加入者)を対象に、学習費用の一部を支給する制度です。厚生労働大臣が指定した講座を修了したあと、ハローワークに申請して給付を受けます。

給付は3区分あり、一般教育訓練は受講費用の20%(上限10万円)です。そして特定一般教育訓練は基本40%(上限25万円)、資格取得と就職など一定の条件を満たすと最大50%まで上がります。

専門実践教育訓練は基本50%で、条件を満たすと追加給付が上乗せされます。2024年10月の制度改正を踏まえると、資格取得と就職に加えて賃金が5%以上上昇したときは、最大80%(年上限64万円)まで給付を受けられる仕組みです。

対象講座は全国で約17,000講座とされ、IT・医療・介護・語学など幅広い分野が含まれます。

経済産業省のキャリアアップ支援事業

項目内容
講座修了時の補助受講費用の50%(上限40万円)
転職+1年継続就業時の追加補助受講費用の20%(上限16万円)
最大補助額56万円

「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」は、転職も見据えてスキルを身につけたい在職者を対象にした制度です。キャリア相談、講座受講、転職支援をセットで受けられる点が特徴といえます。

補助は段階的に受け取る仕組みで、講座を修了すると受講費用の50%(上限40万円)が支給されます。その後、転職して1年間継続就業したときは20%(上限16万円)が追加され、合計で最大56万円まで補助を受けられます。

教育訓練給付金と比べると、雇用保険の加入が前提ではない点が大きな違いです。企業に雇用されていれば雇用形態を問わず対象になり、デジタル分野の講座を扱うスクールが多い傾向があります。

補助金が使える!リスキリング対象講座・スキル分野

リスキリング補助金の対象講座は幅広く、IT・デジタル分野に加えて、ビジネス系の資格や実務スキルに関する講座も含まれます。自分のキャリアの方向性と照らし合わせると、必要な学びを選びやすくなるでしょう。

対象講座:IT・デジタル分野(AI・プログラミングなど)

講座例給付金の種類
AIエンジニア養成講座専門実践教育訓練
データサイエンティスト養成講座専門実践教育訓練
Webデザイン・プログラミング特定一般教育訓練
ITパスポート取得講座一般教育訓練

IT・デジタル分野は、リスキリングのテーマとして選ばれやすい領域です。教育訓練給付金でも、この分野に該当する講座が多く見られます。

加えて、経済産業省のキャリアアップ支援事業でもAI・機械学習・クラウドなどのデジタルスキル講座が多く扱われています。未経験から受講できるコースもあり、ITへのキャリアチェンジを考えている方にとっての選択肢が豊富です。

対象講座:ビジネススキル・資格(社労士・英語など)

講座例給付金の種類
社会保険労務士一般教育訓練
中小企業診断士一般教育訓練
TOEIC対策講座一般教育訓練
簿記検定一般教育訓練
介護福祉士専門実践教育訓練
看護師専門実践教育訓練

デジタル分野以外にも、資格取得を通じてキャリアの幅を広げたい方向けの講座が対象です。職種によって給付区分が分かれることを押さえておきましょう。

対象講座の一覧を調べる方法

気になる講座が対象かどうかは、厚生労働省の「教育訓練給付制度 検索システム」から調べられます。

講座名・資格名・地域・受講スタイル(通学・通信・オンライン)などの条件で絞り込み検索ができるため便利です。対象講座は約16,000〜17,000件登録されており、給付金の種類や給付率も一緒に確認できます。

リスキリング補助金の対象者・条件とは?

リスキリング関連の補助金を受け取るには、制度ごとに定められた条件を満たす必要があります。会社員やフリーランスなど、立場別に対象者の要件を整理していきましょう。

個人で申請できる条件(会社員の場合)

条件初回利用2回目以降
雇用保険加入期間(一般・特定一般)1年以上3年以上
雇用保険加入期間(専門実践)2年以上3年以上
受給間隔前回から3年以上経過

会社員の方がもっとも利用しやすいのは、教育訓練給付金です。雇用保険に加入していれば、正社員だけでなくパートや派遣社員も対象になります。

離職中の方でも、退職から1年以内であれば申請可能です。妊娠・出産・病気などで受講できない期間があったときは、最大20年まで申請期限を延長できる制度もあります。

フリーランス・個人事業主の場合

フリーランスや個人事業主は、教育訓練給付金の対象になりにくい立場です。制度が雇用保険を前提としているため、雇用保険に加入していないと利用できません。

経済産業省のキャリアアップ支援事業も、企業に雇用されている在職者を対象にしています。個人事業主として独立している方は、原則として対象になりません。

一方で、「会社員として雇用保険に加入していた期間」があり、離職から1年以内であれば教育訓練給付金を申請できることがあります。実際に該当するかどうかは、ハローワークで受給資格を確認すると確実です。

なお、雇用保険未加入の方向けには、2025年10月からスタートした「リ・スキリング等教育訓練支援融資制度」を使う手があります。年利2%・年間最大140万円の融資枠が示されているため、給付金以外の選択肢として押さえておくといいでしょう。

リスキリング関連の補助金|申請方法と手続きの流れ

補助金を受け取るには、講座の受講前から計画的に準備を進める必要があります。申請のタイミングを逃すと給付を受けられなくなるため、事前に流れを把握しておきましょう。

個人申請で準備するもの

必要書類備考
本人確認書類運転免許証、マイナンバーカードなど
マイナンバー確認書類マイナンバーカードまたは通知カード
雇用保険被保険者証在職中の場合は会社に確認
振込先口座の通帳またはキャッシュカード本人名義のもの
ジョブ・カード特定一般・専門実践の場合は必須

教育訓練給付金の申請では、上記のような書類を準備します。給付金の種類によって必要書類は異なりますが、本人確認書類とマイナンバー関連書類は共通です。

ただし、特定一般教育訓練と専門実践教育訓練の場合は、受講前にキャリアコンサルティングを受けてジョブ・カードを作成する必要があります。この点は見落としやすいため、注意が必要です。

個人の申請方法と手続きステップ

教育訓練給付金の申請は、次の流れで進めます。

Step 1:受給資格の確認

ハローワークで支給要件照会票を提出し、給付の対象かどうかを先に確認します。受講を決める前に、この段階で条件に合うかを押さえてください。

Step 2:キャリアコンサルティング+受給資格確認の手続き

ハローワークでキャリアコンサルタントの面談を受け、ジョブ・カードを作成します。受講開始日の2週間前までに、受給資格確認の手続きを済ませます。

Step 3:講座の受講・修了・支給申請

指定講座を修了したら、支給申請書と修了証明書をハローワークに提出します。内容の確認が終わると、給付金が指定口座に振り込まれます。

申請期限はいつまで?制度ごとの締め切り

給付金の種類申請期限
一般教育訓練修了日の翌日から1ヶ月以内
特定一般教育訓練修了日の翌日から1ヶ月以内
専門実践教育訓練6ヶ月ごとの支給単位期間末日の翌日から1ヶ月以内

教育訓練給付金は、給付区分によって申請期限の起点が変わります。先に期限の数え方を押さえると、修了後の手続きで慌てにくくなるでしょう。

一般教育訓練と特定一般教育訓練は、修了日の翌日から1ヶ月以内が申請期限です。専門実践教育訓練は、受講中も含めて6ヶ月ごとに申請でき、支給単位期間末日の翌日から1ヶ月以内に手続きをおこないます。

そして追加給付(資格取得・賃金上昇分)は、条件を満たした日の翌日から1ヶ月以内に申請します。キャリアアップ支援事業はスクール経由で進むため、締め切りや必要書類は各スクールの案内に沿って確認してください。

リスキリングに使える補助金のよくある質問

リスキリングに使える補助金・給付金について、よく寄せられる質問をまとめました。

個人事業主でも申請できる?

個人事業主は、原則として教育訓練給付金とキャリアアップ支援事業の対象になりません。教育訓練給付金は雇用保険の加入歴が前提で、キャリアアップ支援事業は企業に雇用されている在職者が対象です。

一方で、直近まで会社員として雇用保険に加入していた方は、離職から1年以内で教育訓練給付金を申請できる可能性があります。該当するかどうかは、ハローワークで受給資格を確認してください。

補助金の支給率は50%?70%?80%?

給付率は講座区分と条件で変わります。まず教育訓練給付金(専門実践)は基本50%で、条件を満たすと70%、さらに賃金が5%以上上がると80%まで上がります。

キャリアアップ支援事業は講座修了で50%が支給され、転職して1年継続就業すると追加で20%が上乗せされます。合計は最大70%です。

転職しなくても補助金はもらえる?

教育訓練給付金は転職を前提とせず、在職中の受講でも給付の対象です。ただし、追加給付で給付率が上がるかどうかは、資格取得や就職などの条件で決まります。

キャリアアップ支援事業は、転職しなくても講座修了時の50%(上限40万円)を受け取れます。追加の20%は、転職して1年継続就業したときに支給されます。

まとめ:補助金を有効活用して学び直しを始めよう

リスキリングに使える補助金・給付金は、個人でも活用できる心強い制度です。厚生労働省の教育訓練給付金では最大80%、経産省のキャリアアップ支援事業では最大70%の補助を受けられます。

対象講座は全国で約17,000件あり、IT・デジタル分野から国家資格まで幅広く選べます。費用面で踏み出せなかった方も、これらの制度なら自己負担を大幅に抑えられるでしょう。

リスキリング関連の支援制度をさらに知りたい方は、コラムページをご確認ください