DX(デジタルトランスフォーメーション)化が進むなか、今のスキルで大丈夫だろうかと不安を感じる方も多いでしょう。学び直しには興味がある。ただ、費用負担が気になったり、何を学べばいいか分からなかったりします。

そこで役立つのが、経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」です。学び直しに踏み出しにくいと感じるときでも、キャリア相談を起点に講座受講や転職支援をワンセットで受けられます。

本記事では、リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業の対象者、利用できる講座、申請方法などを詳しく解説します。

リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業とは?

リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業は、経済産業省が2023年度から実施している制度です。企業間・産業間の労働移動の円滑化を目的としており、在職者のスキルアップと転職を総合的にサポートしています。

本事業の特徴は、キャリア形成から転職後のフォローアップまで一貫した支援を受けられる点にあります。教育訓練給付金とは異なり雇用保険への加入は不要で、転職を目指す幅広い在職者が対象です。

リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業|対象者と利用条件

対象者可否備考
正社員対象雇用契約があれば可
派遣社員対象派遣元との契約でOK
契約社員対象雇用契約があれば可
パート・アルバイト対象雇用保険未加入でも可

本事業を利用できるのは、登録時と初回面談時に企業と雇用契約を結んでいる在職者です。雇用形態は問われず、雇用保険に入っていなくても申し込めます。

この事業は、学び直しを転職につなげることを目的としているため、「転職を目指していること」が要件に含まれます。ただし「転職をしなければ支援を受けられない」という意味ではありません。講座を修了すれば、転職の有無にかかわらず補助を受けられます。

学びを進めながら、転職するかどうかは状況に応じて決められる設計です。まずはキャリア相談から始め、いまの経験をどう伸ばすかを整理しておくと、次の選択がしやすくなります。

主な対象者

対象者可否備考
公務員対象外国家・地方公務員は対象外
独立行政法人の職員対象(条件あり)雇用保険に加入している方は対象
フリーランス対象外雇用契約がないため
個人事業主対象外同上
無職(求職中)対象外受講開始時に雇用契約が必要
経営者・役員対象外雇用契約がないため
業務委託対象外雇用契約ではないため

前提として、企業との雇用契約がない方は本事業の対象外です。たとえば、フリーランスや個人事業主、経営者・役員、業務委託などは雇用契約ではないため、利用できません。

さらに国家公務員・地方公務員も原則として対象外です。独立行政法人の職員も、雇用保険に加入している場合は本事業の対象です。なお、副業をしている方は、本業で雇用契約を結んでいれば申請できます。

リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業|補助金の金額と受け取り条件

受講料修了時(50%)転職後(追加20%)合計補助金自己負担額
30万円15万円6万円21万円9万円
60万円30万円12万円42万円18万円
80万円40万円16万円56万円24万円
100万円40万円(上限)16万円(上限)56万円44万円

受講料に応じて補助額が変わり、補助金の受け取りは「修了時」と「転職後」の2段階で進みます。たとえば、受講料が30万円なら補助は合計21万円で、自己負担は9万円です。受講料が60万円なら補助は合計42万円、自己負担は18万円となります。

上記の表をもとに、負担額のイメージをつかみましょう。以下、補助が「いつ」「どの条件で」支給されるのかを整理します。

講座修了時の補助(50%)

講座を修了すると、受講費用(税抜)の50%(上限40万円)が補助されます。ただし、出席だけでは認められません。事業者が定めた修了要件(試験合格、課題提出、一定の出席率など)を満たす必要があります。

修了後、事業者から修了証明書が発行されます。この証明書と領収書をもとに、事業者経由で補助金を申請すれば、通常1〜2ヶ月程度で還付されます。なお、申請手続きは事業者がサポートするため、個人で複雑な書類を作成する必要はありません。

転職後の追加補助(20%)

講座修了後に転職し、1年間継続して働くと追加20%(上限16万円)が補助されます。

ただし、「補助事業者の転職支援サービスを利用した転職」が追加補助の適用条件となります。個人で見つけた転職先、自分で利用した転職エージェント・求人サイト経由の転職などは対象外です。必ず登録した事業者の転職支援サービスを利用してください。

転職後は、給与明細のコピーの提出が求められます。加えて、転職先での就業継続を確認するフォローアップ面談も実施されます。

補助対象外となる費用

すべての費用が補助対象になるわけではありません。以下の費用は対象外です。

  • 検定試験の受験料
  • 補助教材費(講座に含まれない追加教材)
  • 補講費
  • 通学交通費
  • パソコン・タブレットなどの機器購入費

本事業の補助対象は「リスキリング講座の受講費用」に限定されており、講座本体以外の費用は自己負担です。

また、割引が適用された場合は「割引後の金額」が計算対象となります。仮に受講料50万円の講座が割引で45万円になった場合、45万円をもとに補助金が計算される仕組みです。

リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業|利用できる講座の一覧と分野

対象講座は、IT・デジタルに限らず幅広い領域が用意されています。キャリア相談で整理した内容を踏まえ、リスキリング講座の受講、転職支援までをセットでサポートするのが特徴です。ここでは、利用できる講座・分野について解説します。

分野別の講座と費用

分野代表的な事業者
プログラミングSAMURAI ENGINEER、DMM WEBCAMP、TechAcademy、RUNTEQ、ポテパンキャンプ
WebデザインデジタルハリウッドSTUDIO、デジハリONLINE
データ分析・AIアイデミー
Webマーケティングマケキャン、ワナビーアカデミー、Break Marketing Program、WEBMARKS

たとえば、プログラミングは未経験からエンジニア転職を目指す方に選ばれやすい分野です。カリキュラムに沿って学べば、基礎から実務レベルまで段階的にスキルを身につけられます。加えて、転職サポートが手厚い事業者が多い点も魅力です。

Webデザインも同様で、デザインスキルとコーディングの両方を習得できます。Webサイトのデザインからコーディング、公開までを包括的に学べるため、本業はもちろん、副業案件も受注しやすくなるでしょう。将来的にフリーランスとして活動したい方におすすめです。

近年は、社内に蓄積されたデータを意思決定や業務改善に活かす動きが広がり、データ分析・AIに強いDX人材が求められています。マーケティングや企画の経験がある方なら、これまでの知見を土台にしつつ、分析の視点を加えることで職域を広げられるでしょう。

その他の分野

本事業では語学や医療・介護、保育、歯科衛生など、さまざまな分野の講座が用意されています。

自分に合う分野が定まらないときは、先にキャリア相談を活用すると整理しやすくなります。キャリアコンサルタントが経験やスキル、希望を踏まえ、学ぶ方向性を一緒に考えてくれます。

講座の探し方

公式ポータルサイトで分野・職種・習得スキルの3つの軸で講座を検索できます。気になる講座が見つかったら、事業者のサイトでカリキュラム内容や受講スケジュール、サポート体制まで確認しておきましょう。

リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業|申請方法と補助金受け取りまでの流れ

補助金を受け取るまでの流れは、大きく3つのステップにわかれます。

無料のキャリア相談に参加する

まずは採択事業者に登録し、無料のキャリア相談に参加します。相談は合計2回以上、1回につき30分以上の面談が必要です。

相談を担当するのは、キャリアコンサルタントの資格を持つ人、または実務経験が2年以上ある専門家です。方向性が定まっていなくても相談できるため、気軽に利用しやすいでしょう。

対象講座を受講・修了する

キャリア相談の結果を踏まえて、対象講座を選び受講を開始します。通常、公式ポータルサイトまたは各事業者のサイトから講座を選んで申し込みます。

受講料は全額自己負担(後日還付)です。一時的な資金が必要ですが、クレジットカード払いや分割払いに対応している事業者もあります。なお、受講期間は12ヶ月以内であることが要件です。

講座の修了要件を満たすと、事業者から修了証明書が発行されます。この証明書は補助金の申請に必要です。

必要書類を提出して補助金を受け取る

講座修了後、必要書類を提出すると補助金50%を受け取れます。必要書類は、修了証明書、受講料の領収書(税抜・税込価格を明示)、アンケートなどです。

先述したように、手続きは事業者がサポートするため、個人で複雑な申請をする必要はありません。補助金は通常、修了後1〜2ヶ月程度で振り込まれます。そして転職後に1年間勤務を継続すると、フォローアップ面談を経て追加20%の補助金を受け取れます。

リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業|よくある質問

本事業に関するよくある質問をまとめました。申請前の参考にしてください。

転職は必ずしないといけない?

50%の補助金を受け取るだけなら、転職は必須ではありません。講座を修了すれば、転職しなくても受け取れます。追加20%(上限16万円)を受け取るには、転職と1年間の継続就業が必要です。

40代・50代でも申請できる?

年齢制限はありません。40代・50代の方も申請できます。そもそも本事業は、新しいスキルを身につけてキャリアアップしたい中高年層の利用を想定しています。

育休中でも利用できる?

企業との雇用契約が続いていれば対象となります。休職中であっても「在職者」として要件を満たすためです。

また、オンラインで受講できる講座が多いため、自宅で育児をしながら学習を進めやすいでしょう。復職後の働き方やキャリアの選択肢を広げる目的で、育休期間を学び直しに充てる方もいるようです。

公務員でも利用できる?

国家公務員および地方公務員は対象外です。ただし、独立行政法人等の職員で雇用契約がある方は利用できます。

独立行政法人の職員は、雇用保険加入者であれば対象です。正規の公務員の方は、各自治体や省庁の研修制度を確認してみてください。

教育訓練給付金との違いは?

項目リスキリング支援事業教育訓練給付金
実施機関経済産業省厚生労働省
対象者転職を目指す在職者雇用保険加入者
補助率最大70%(上限56万円)20〜80%(講座区分による)
雇用保険加入不要加入必須
サービス範囲キャリア相談+講座+転職支援+フォローアップ講座のみ
実施機関数約200社の事業者約16,000講座
給付申請事業者がサポート個人がハローワークで申請

リスキリング支援事業は「転職を見据えた学び」を前提に、キャリア相談から講座受講、転職支援までを一体で受けられる点が特徴です。一方の教育訓練給付金は、雇用保険加入者が対象で、講座受講そのものへの給付に軸足があります。

そのため、転職も視野に入れて伴走支援を受けたいならリスキリング支援事業、今の働き方を前提に講座でスキルを伸ばしたいなら教育訓練給付金が最適です。

申請期限はいつまで?

講座の受講は、最終期限が2027年3月31日までとされています。転職後の継続就業を確認する期間は、最長で2028年3月31日まで延長されています。

人気講座は定員に達することもあるため、受講したい講座が決まっているなら早めに動きましょう。最新の期限情報は経済産業省公式サイトでご確認ください。

まとめ:リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業で職域を広げよう

リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業は、キャリア相談から転職支援までをセットで提供する制度です。すべての条件を満たせば、受講料の最大70%が補助されます。

雇用保険への加入は不要で、正社員だけでなく派遣社員やパート・アルバイトの方も利用できます。まずは無料のキャリア相談から始め、学び直しの軸を決めていきましょう。