スキルアップが必要だと感じていても、費用や時間の都合で一歩を踏み出せない方は少なくありません。働きながら学ぶことは、想像以上に負担が大きく感じられるものです。

ただ、厚生労働省の教育訓練給付金など国の給付制度を活用すれば、条件を満たした場合に受講費用の最大80%が支給される講座もあります。オンラインで受講できる講座も多く、仕事を続けながら学べるのが魅力です。

本記事では、リスキリング講座の一覧に加えて、補助金の申請方法までわかりやすく解説します。

リスキリング講座とは?政府が推進する背景

まずは、リスキリングの基本的な意味と、政府が支援に力を入れている背景を整理します。

リスキリングとリカレント教育・アップスキリングの違い

リスキリングとは、新しい職業や業務に必要なスキルを学び直すことです。単なる資格取得や社内研修とは異なり、AIやデジタル技術の進化で変わりつつある仕事に対応するために取り組みます。

具体的には、事務職の方がデータ分析ツールの使い方を学ぶといった例が挙げられます。加えて、営業職がデジタルマーケティングの基礎を身につけたり、経理担当者がクラウド会計ソフトの操作を習得したりするのも、リスキリングの一例です。

似た言葉に「リカレント教育」や「アップスキリング」があります。

リカレント教育は生涯にわたる継続的な学びを指すのに対し、リスキリングは短期集中で、働きながら取り組みやすい点が特徴です。

一方で、アップスキリングは現在の職種でスキルを高めることを意味します。リスキリングが「新しい分野への挑戦」だとすれば、アップスキリングは「今の仕事の深掘り」といえます。

なぜ政府はリスキリングを推進しているのか?

政府がリスキリングを推進しているのは、産業構造の変化が速まり、今あるスキルのままでは仕事の転換に追いつきにくくなっているためです。実際、経済産業省は2030年に最大79万人のIT人材が不足する見込みを示しており、デジタル分野の人材育成を重点施策に掲げています。

この課題に対し、国は学び直しを個人任せにせず、費用面のハードルを下げる施策を打ち出してきました。働きながら取り組める仕組みを整えることで、必要な人材を育て、企業の人手不足解消にもつなげる狙いがあります。

具体策の一つが、厚生労働省による教育訓練給付制度の拡充です。2024年10月の改正で給付率が引き上げられ、専門実践教育訓練では条件を満たすと最大80%の補助を受けられます。加えて、経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」も2027年度末まで延長されました。

公的な支援制度の利用を検討するなら、申込期限の確認が欠かせません。個人の受講申込期限は事業の終了時期より前に締め切られることがあるため、最新のスケジュールを早めに確認しておきたいところです。

リスキリング講座の対象者と年齢制限

「リスキリング講座は若い人向けでは?」と感じる方もいますが、多くの制度に年齢制限はありません。実際、受講者のなかには30代から50代の方も含まれており、キャリアの転換期を迎える40代・50代も活用できます。

対象者は制度によって異なりますが、大きく分けると「在職者向け」と「求職者向け」の2種類があります。雇用形態による制限も少なく、正社員だけでなく契約社員や派遣社員、パート・アルバイトの方も利用できます。

ただし、フリーランスの方は雇用保険を財源とする「教育訓練給付」や「経産省キャリアアップ支援」の対象外となります。

リスキリング講座一覧|経済産業省・厚生労働省・ハローワークの制度

制度名運営対象者補助額
リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業経済産業省在職者最大56万円
教育訓練給付金制度厚生労働省雇用保険加入者受講費用の20〜80%
公的職業訓練ハローワーク求職中の方無料
自治体独自支援各都道府県居住者・勤務者制度による

国や自治体が支援するリスキリング講座は複数あり、それぞれ対象者や補助額が異なります。ここでは、代表的な制度の詳細を見ていきます。

経済産業省のリスキリング講座|キャリアアップ支援事業と補助金

段階条件給付率上限額
第1段階講座修了時50%40万円
第2段階転職後1年継続追加20%16万円
合計70%56万円

経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」は、キャリア相談・講座受講・転職支援を一体で提供するプログラムです。民間の転職支援会社やスクールが補助事業者として参加しており、プログラミングやデータ分析、Webデザイン、動画編集など幅広い分野の講座を受講できます。

補助金は2段階の仕組みです。まず講座修了時に受講費用の50%(上限40万円)が支給されます。転職して1年間働き続けると、追加で20%(上限16万円)が支給され、合計で最大56万円の補助となります。

本事業は転職者向けですが、実際に転職しなくても第1段階の補助金は受給できます。スキルアップだけが目的の方も利用できるのが魅力です。

厚生労働省のリスキリング講座|教育訓練給付金の対象と補助額

種類給付率上限額主な対象講座
一般教育訓練20%10万円簿記、TOEIC、ITパスポート
特定一般教育訓練最大50%25万円大型免許、介護職員初任者研修
専門実践教育訓練最大80%年間64万円看護師、介護福祉士、MBA

教育訓練給付金は講座のレベルに応じて3種類に分かれます。

対象となるのは、雇用保険に加入している方(または過去に加入していた方)です。実際、約16,000もの講座が指定されており、簿記やTOEICから看護師・介護福祉士といった国家資格まで幅広い分野に対応しています。

ハローワークのリスキリング講座|無料の公的職業訓練

種類対象者受講料手当
公共職業訓練雇用保険受給者無料失業給付の延長あり
求職者支援訓練雇用保険を受給できない方無料月額10万円+交通費

ハローワークでは、求職中の方を対象とした無料の職業訓練を提供しています。公的職業訓練には「公共職業訓練」と「求職者支援訓練」の2種類があります。

雇用保険を受給している方は公共職業訓練を利用できます。訓練期間中は失業給付が延長され、受講料も無料です。一方、雇用保険を受給できない方は求職者支援訓練が対象となります。一定の条件を満たすと月額10万円の職業訓練受講手当と通所手当(交通費)が支給されます。

東京都など自治体独自のリスキリング講座一覧

国の制度に加えて、自治体独自の支援制度もあります。たとえば、東京都では「DXリスキリング助成金」を設けており、都内中小企業の従業員がデジタル分野の講座を受講する際の経費を助成しています。これは1社あたり最大100万円まで申請可能です。

ほかにも大阪府や愛知県など、各地で独自の支援策が設けられています。お住まいの都道府県や勤務先がある自治体のサイトで、利用できる制度がないか確認してみましょう。

無料で受けられるリスキリング講座と補助金の活用法

リスキリングはお金がかかる印象がありますが、無料で学べる枠も用意されています。ここでは、完全無料のおすすめ講座をいくつかご紹介します。

完全無料のリスキリング講座おすすめ一覧

サービス名運営・支援特徴
日本リスキリングコンソーシアム経済産業省1,500以上の講座、うち500件以上が無料
マナビDX経済産業省デジタルスキル標準(DSS)対応講座を検索可能
Google Digital GarageGoogleデジタルマーケティング・データ分析など
Microsoft LearnMicrosoftクラウド・AI・プログラミングなど
JMOOC大学公開講座国内大学の講義を無料で受講可能

費用をかけずに学びたい方には、上記の無料講座がおすすめです。

たとえば、経済産業省が支援する「日本リスキリングコンソーシアム」では、デジタルスキル講座が多数用意されており、無料で受けられる講座もあります。大手企業の研修プログラムが一般向けに公開されていることもあり、実務に近い内容から選びやすいでしょう。

同じく「マナビDX」は、目的や身につけたいスキルに合わせて講座を探せる検索型のプラットフォームです。まずは登録し、興味のある分野をいくつか試してみると、自分に合う学び方が見えやすくなります。

無料講座と有料講座はどちらがおすすめ?

無料講座と有料講座のどちらを選ぶかは、学ぶ目的によって変わります。たとえば、基礎を試したい方には無料の講座が向いているでしょう。日本リスキリングコンソーシアムやマナビDXで興味のある分野を探し、入門レベルから始めるのが無難です。

一方、本格的にスキルを身につけたい方、キャリアアップにつなげたい方には補助金を活用した有料講座がおすすめです。体系的なカリキュラムで学べるうえ、修了証や資格取得によって成果を形にできます。

リスキリング講座の選び方

リスキリングは選択肢が多い分、講座選びで立ち止まる方が少なくありません。以下のように、目的と受講環境から自分に合った講座を選びましょう。

目的を明確にする

転職を目指すのか、今の仕事でスキルアップしたいのか、副業につなげたいのかによって、選ぶべき講座は変わります。たとえば、転職なら資格取得を重視した講座、スキルアップなら実務に直結する内容を選ぶといいでしょう。

対象者の条件を確認する

在職者向けの制度と求職者向けの制度では、利用できる補助金が異なります。自分がどちらに該当するか、雇用保険の加入状況も含めて事前に把握しておきましょう。

学習形式をチェックする

オンラインで完結する講座もあれば、通学が必要なものもあります。働きながら学ぶなら、夜間や休日に受講できるかどうかが重要です。受講期間や課題の量も含めて、生活リズムに合わせて選ぶと無理なく続けられるでしょう。

リスキリング講座に関するよくある質問

リスキリング講座について、読者からよく寄せられる疑問をまとめました。申請前の不安解消にお役立てください。

リスキリング講座は何歳まで受けられますか?

教育訓練給付金の多くは年齢制限がありませんが、一部に例外があります。

たとえば、専門実践教育訓練給付金のうち「失業状態で初めて受講する場合」は、受講開始時に45歳未満であることが条件とされています。一方で、在職中の利用や夜間制・通信制の一部講座では45歳以上でも対象となる場合があります。教育訓練支援給付金は45歳未満の方が対象です。

転職するつもりがなくても受講できますか?

教育訓練給付金やハローワークの公的職業訓練は、転職を前提としない制度です。今の仕事を続けながらスキルアップを目指す方も利用できます。経産省の「キャリアアップ支援事業」は転職を目指す在職者が対象ですが、結果的に転職しなくても第1段階の補助金は受給可能です。

会社に勤めながらでも受講できますか?

多くの講座はオンラインで受講でき、働きながら学ぶことを想定しています。夜間や休日に受講できる講座も豊富にあり、仕事と両立しやすい環境が整っています。動画視聴型の講座であれば、通勤時間やスキマ時間を使って学べるでしょう。

補助金は何回まで受けられますか?

教育訓練給付金は、前回の受給から3年以上経過していれば再度利用できます。なお、2回目以降は雇用保険の加入期間が3年以上必要です。初回とは条件が異なる点に注意が必要です。

ハローワークで申し込むにはどうすればいいですか?

最寄りのハローワークで求職申込を行い、相談窓口でリスキリング講座について相談するといいでしょう。対象講座や受講手当についても案内を受けられます。

まとめ:リスキリング講座に参加してスキルアップを目指そう

リスキリング講座は、公的な支援制度を活用することで、費用負担を抑えながら受講しやすくなります。たとえば在職者向けには「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」があり、キャリア相談から講座受講、転職支援までを一体で進める枠組みが整っています。

また、求職中の方は、ハローワークの職業訓練(ハロートレーニング)を検索できるほか、教育訓練給付の対象講座も調べられます。学び方や手続きの入口が複数あるため、自分に合う講座がきっと見つかるでしょう。

これから受講を検討するなら、申込期限や必要書類は先に確認しておくと安心です。希望分野と学習期間の目安を決めたうえで、最適な講座を洗い出してみてください。