人材開発支援助成金は、企業が人材育成やスキルアップに取り組む際に、活用できる国の助成制度です。研修や訓練にかかる費用だけでなく、訓練期間中の賃金の一部も助成対象とり、人材への投資を進めやすくなります。

一方で、制度の種類が多く、助成額はいくらもらえるのか、受給条件や申請方法はどうなっているのか、分かりにくいと感じるケースも少なくありません。2025年度は、リスキリングやDXへの対応を意識した制度設計が進み、正確な理解が重要になっています。

本記事では、人材開発支援助成金の制度概要から助成額、受給条件、申請方法まで解説します。自社で活用できるかの判断に、役立ててください。

人材開発支援助成金の制度概要をわかりやすく解説

人材開発支援助成金をわかりやすく理解するため、制度の特徴や概要、他の助成金との違いを解説します。

人材開発支援助成金の特徴とは

人材開発支援助成金は、企業が計画的に人材育成へ取り組むことを前提とした制度です。単なる研修費補助ではなく、職務に関連した訓練を継続的に実施する点が重視されています。

主な特徴は次のとおりです。

  • 職務内容に関連する訓練が助成対象
  • 訓練にかかる経費だけでなく訓練期間中の賃金も助成対象になる
  • 訓練実施前に計画を提出する必要がある

人材育成を仕組みとして定着させやすい点が、この制度の大きな特長です。

2025年度の人材開発支援助成金の制度概要

2025年度の人材開発支援助成金は、育成目的や訓練内容に応じて複数のコースが用意され、企業の課題に合わせて選択できます。

代表的なコースは次のとおりです。

コース名内容の概要
人材育成支援コース基本的な職務関連訓練を対象
人への投資促進コースデジタル分野や高度スキルの習得を支援
事業展開等リスキリング支援コース新事業やDX推進に必要な訓練を支援

2025年度は、リスキリングや成長分野への対応を意識した制度設計になっています。

他の助成金と比較した人材開発支援助成金

人材開発支援助成金を、他の雇用関係助成金と比較します。

比較項目人材開発支援助成金他の雇用関係助成金の例
主な目的人材育成・スキル向上雇用維持・採用促進
支援対象職務に関連する訓練・研修雇用調整・採用・定着
助成内容訓練経費・訓練期間中の賃金賃金補助や雇用維持費用
活用タイミング中長期的な人材戦略短期的な雇用対策
リスキリングとの相性高い低い場合が多い

人材開発支援助成金は、人材への投資を前提とした制度であり、DXやリスキリングを含む育成施策と組み合わせやすい点が特徴です。

人材開発支援助成金はいくらもらえる?

人材開発支援助成金の助成額は、利用するコースや訓練内容、企業の状況によって異なります。助成額の考え方と具体的な金額の目安を解説します。

人材開発支援助成金の助成額の考え方

人材開発支援助成金の助成額は、いくつかの要素を組み合わせて算定されます。助成額がどのような仕組みで決まるのか、構成要素は次のとおりです。

  • 訓練の実施にかかった費用の一部を補助する経費助成
  • 訓練時間中の労働者の賃金を補助する賃金助成
  • コースごとに定められた年度内の受給上限額

上記の要素が組み合わさることで、同じ人材開発支援助成金でも受給できる金額に差が生じます。

人材開発支援助成金はいくらもらえるか具体例

人材開発支援助成金の助成額は、訓練の種類ごとに構成されています。

主要な訓練区分は以下のとおりです。

訓練区分(代表例)賃金助成額
(1人1時間)
経費助成率
(中小企業)
補足
人材育成訓練(OFF-JT)760円45%基本的な職務関連訓練
認定実習併用職業訓練760円45%OJT実施で別途助成あり
有期実習型訓練760円60%非正規雇用者向け
高度デジタル人材訓練960円75%人への投資促進コース
成長分野等人材訓練960円75%リスキリング向け

※金額・助成率は中小企業の場合の代表例です。

引用元:厚生労働省「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)のご案内

助成額が変わる条件

人材開発支援助成金の助成額は、一定の条件によって増減します。事前に把握しておきたいポイントは以下の通りです。

  • 選択するコースによって助成率や賃金助成額が異なる
  • 中小企業か大企業かによって助成内容が変わる場合がある
  • 訓練時間や受講回数に上限が設定されている
  • リスキリングや成長分野に関する訓練は助成率が高くなる傾向がある

上記の条件を理解したうえで計画を立てることで、想定とのズレを防ぎやすくなります。

人材開発支援助成金の受給条件とは?

人材開発支援助成金を受給するためには、すべてのコースに共通する条件があります。

人材開発支援助成金の受給条件について解説します。

人材開発支援助成金の受給条件

人材開発支援助成金では、事業主と労働者の双方が条件を満たしている必要があります。

基本となる受給条件は次のとおりです。

  • 雇用保険の適用を受けている事業所である
  • 対象となる労働者が雇用保険の被保険者である
  • 職務に関連した訓練を計画に基づいて実施している
  • 訓練期間中も通常どおり賃金を支払っている
  • 申請に必要な書類を整備し、適切に管理している

上記の条件は、すべてのコースで共通して求められます。

人材開発支援助成金の対象となる企業

人材開発支援助成金の対象となるのは、雇用保険の適用を受けている事業主です。企業規模による制限はなく、幅広い事業者が対象になります。

  • 中小企業・大企業のいずれも対象
  • 正社員だけでなく、一定条件を満たす非正規雇用者も含まれる
  • 職業能力開発推進者を社内で選任している必要がある
  • 訓練計画を作成し社内に周知していることが求められる

コースによっては、対象となる雇用形態や訓練内容に追加要件が設けられる場合があります。

受給条件で注意すべきポイント

受給条件を満たしていても、運用上の不備によって不支給となるケースがあります。

注意したいポイントは以下の通りです。

  • 訓練内容が対象労働者の職務と明確に関連している
  • 訓練時間や受講率などの数値要件を満たしている
  • 計画どおりに訓練を実施している
  • 賃金台帳や出勤簿などの証憑を適切に保存している
  • 申請期限を守り、期限内に手続きを行っている

事前にこれらを確認しておくことで、申請後のトラブルを防ぎやすくなります。

人材開発支援助成金の種類

人材開発支援助成金は、訓練の目的や内容に応じて複数の種類に分かれています。主なコースを解説します。

人材開発支援助成金の種類とは?

代表的な人材開発支援助成金の種類は次のとおりです。

コース名主な内容想定される活用場面
人材育成支援コース職務に関連する基本的な訓練新人教育、既存社員のスキル向上
教育訓練休暇等付与コース教育訓練のための休暇・制度整備学び直し制度の導入
人への投資促進コース高度デジタル・成長分野の訓練DX人材、専門人材の育成
事業展開等リスキリング支援コース新事業・業務転換に伴う訓練事業再構築、業務改革

どのコースも、職務に関連した訓練であることが前提条件です。

人材開発支援助成金の種類ごとのメリット

各コースの特徴を把握しやすいよう、メリットを表にしました。

コース名メリット
人材育成支援コース・幅広い業種
・職種で活用しやすい
・基本的な研修内容が対象になりやすい
・新人教育から既存社員研修まで対応できる
・訓練計画を立てることで育成を仕組み化しやすい
・初めて助成金を利用する企業でも取り組みやすい
教育訓練休暇等付与コース・学び直しを支援する制度を整備しやすい
・長期的な人材育成施策につなげやすい
・従業員の自発的な学習を促しやすい
・離職防止や定着率向上を図りやすい
・働き方改革と併せて導入しやすい
人への投資促進コース・助成率が高めに設定されている
・デジタル人材育成と相性が良い
・高度スキル習得を支援しやすい
・定額制研修など柔軟な訓練が可能
・成長分野への投資を進めやすい
事業展開等リスキリング支援コース・新事業やDX推進に直結しやすい
・業務転換時の人材育成を支援できる
・経営戦略と人材育成を連動させやすい
・中長期的なスキル転換に対応できる
・リスキリング施策を体系的に進めやすい

人材開発支援助成金の申請方法とは?

人材開発支援助成金は、どの種類を選んだ場合でも基本的な申請の流れは共通し、以下のとおりです。

  1. 訓練実施前に計画届を提出
  2. 計画内容に沿って訓練を実施
  3. 訓練終了後に支給申請を行う

ただし、コースの種類によって必要書類や訓練要件が異なるため、選択したコースごとの要件確認が欠かせません。

人材開発支援助成金の申請方法

人材開発支援助成金の申請は、事前準備から訓練実施、支給申請まで段階的に進みます。人材開発支援助成金の申請方法について解説します。

申請時に必要な書類

人材開発支援助成金では、訓練を計画どおり実施したことを客観的に証明する書類の提出が求められます。

準備が必要となる書類は次のとおりです。

  • 支給申請書、支給要件確認申立書
  • 訓練計画および訓練実施状況に関する書類
  • 賃金台帳、出勤簿、給与明細
  • 研修費用に関する請求書、領収書、振込記録
  • OFF-JT実施状況報告書、OJT実施日誌(該当する場合)

コースや訓練内容によって必要書類が異なるため、申請前に様式一覧を確認しておくことが重要です。

申請方法で失敗しやすいポイント

申請要件を満たしていても、手続き面の不備によって不支給となるケースがあります。

注意したいポイントは以下の通りです。

  • 訓練開始前に計画届を提出していない
  • 支給申請の期限を過ぎている
  • 計画内容と実際の訓練内容に差異がある
  • 賃金支払い・出勤状況の証明が不足している
  • 証憑書類が整理・保存されていない

2025年度以降は、支給申請時にまとめて審査されるため、訓練実施中から記録管理を行うことが欠かせません。

人材開発支援助成金を活用する考え方

人材開発支援助成金は、申請そのものよりも、人材育成の計画と実務運用の整合性が重要です。

制度を有効に活用するための考え方は以下の通りです。

  • 人材育成の目的を明確にしたうえで訓練内容を設計
  • 助成金の要件と実際の業務運用を一致させる
  • 訓練実施と同時に書類・記録を整備
  • リスキリングや将来の事業展開を見据えた活用

助成金を目的にするのではなく、人材戦略の一部として位置づけることで、制度の価値を引き出しやすくなります。

人材開発支援助成金を活用した人材育成

人材開発支援助成金は、単発の研修支援ではなく、企業の人材育成を中長期で支える制度です。育成方針と結び付けて活用することで、効果を高めやすくなります。

人材開発支援助成金を活用した人材育成について解説します。

リスキリングと人材開発支援助成金の関係

人材開発支援助成金は、国が進めるリスキリング施策と連動する制度として位置づけられています。

特に事業環境の変化に対応する人材育成と相性が良い点が特徴です。

リスキリングとして活用しやすい訓練の方向性は次のとおりです。

  • デジタル分野やIT関連スキルの習得
  • 新規事業や業務転換に必要な専門知識
  • 業務効率化や高度化を目的としたスキル転換

人への投資促進コースや事業展開等リスキリング支援コースでは、こうした訓練を前提とした活用が想定されています。

人材開発支援助成金の相談先

人材開発支援助成金は、訓練内容や企業の状況によって判断が分かれる場面があります。制度理解を深めるため、事前に相談できる窓口を把握しておくことが重要です。

主な相談先は次のとおりです。

  • ハローワーク(公共職業安定所)
  • 都道府県労働局の助成金担当窓口
  • 社会保険労務士
  • 助成金対応の支援機関や専門家

訓練計画の段階で相談することで、申請後の修正や不支給リスクを抑えやすくなります。

まとめ:人材開発支援助成金を活用しよう

人材開発支援助成金は、研修費用の補助にとどまらず、人材育成を計画的に進めるための制度です。制度概要や助成額、受給条件、申請方法などを理解すると、自社で活用できるか判断できます。

特にリスキリングやDX対応を進める企業にとって、助成金を活用した人材育成は、将来に向けた投資として位置づけやすい施策です。一方で、訓練計画と実施内容、書類管理が一致していないと受給できない場合があります。

制度を理解したうえで、早い段階から育成方針と訓練計画を整理することが重要です。人材育成の方向性が明確になれば、助成金の活用価値も高まりやすくなります。