人材開発支援助成金は、企業が従業員のスキル向上や人材育成に取り組む際に活用できる制度です。ただし、どの研修や講座でも助成対象になるわけではなく、対象講座には明確な条件や考え方があります。

「どの講座が対象になるのか分からない」「自社に合う研修の選び方が分からない」など、感じている担当者も多いでしょう。

本記事では、人材開発支援助成金の対象講座について、研修テーマやスキル別の一覧、選び方まで解説します。人材育成を進めるための参考としてお役立てください。

人材開発支援助成金の対象講座とは?

人材開発支援助成金を活用するには、対象となる講座とは何か正しく理解することが重要です。

人材開発支援助成金の対象講座について

人材開発支援助成金の対象講座は、業務に必要な知識やスキルを計画的に習得させるための職業訓練です。業務と関係のない講座や、一般的な教養目的の研修は対象になりません。

制度の目的は、企業が人材育成を通じて生産性を高めることにあります。助成対象を「職務に関連した技能・知識の習得を目的とする訓練」と位置づけています。

対象講座として認められやすい具体例は、以下のとおりです。

  • 業務遂行に必要な専門知識や実務スキルを習得する研修
  • 新たな業務や役割に対応するための研修
  • IT・デジタル、マネジメントなど実務に直結する研修

業務との関連性が明確であることが重要な判断基準です。

対象講座に求められる要件と条件

対象講座として助成を受けるには、内容だけでなく実施方法や形式に関する要件と条件を満たす必要があります。研修としての実態があるかどうかが重視されます。

以下の条件を満たすことが求められます。

  • OFF-JT(職場外研修)として実施されていること
  • 実訓練時間が一定時間以上であること(例:10時間以上)
  • 事前に訓練計画を作成し、届出を行っていること
  • 雇用保険の適用を受ける労働者を対象としていること

上記の要件を満たしていない場合、研修内容が適切であっても不支給となる可能性があります。

リスキリング支援との関係性

リスキリング支援とは、事業環境の変化に対応するため、従業員が新しい知識やスキルを学び直す取り組みです。デジタル化や市場の変化が進む中、従来の業務スキルだけでは対応が難しくなるケースが増えているからです。

人材開発支援助成金は、こうしたリスキリングを進める企業を支援する制度です。新たな業務や分野に対応するためのスキル習得研修は、助成対象になりやすい傾向があります。

想定されている研修は、以下のとおりです。

  • DXやIT活用に関する研修
  • 新規事業や新分野進出に必要な専門スキル研修
  • 職種転換に対応するための知識・技能習得研修

人材開発支援助成金は、企業が計画的にリスキリング施策を進めるための支援制度として活用されています。

引用元:厚生労働省「人材開発支援助成金
人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内(詳細版)

研修テーマ・スキル別の対象講座一覧

人材開発支援助成金の対象講座は、研修テーマや習得できるスキルによって幅広く設定されています。研修分野ごとに、対象講座を一覧で紹介します。

IT・デジタル分野の研修テーマとスキル

IT・デジタル分野の研修は、業務効率化やDX推進につながるスキル習得を目的とするものが対象講座になりやすい分野です。

多くの企業でデジタル対応が課題となっており、業務改善や新たな事業展開につながるITスキルの習得は、制度上も重視されています。

IT・デジタル分野の対象講座一覧は以下のとおりです。

研修テーマ習得できるスキル対象講座としてのポイント
IT基礎・業務デジタル化研修Excel活用
クラウド操作
業務効率化との関連性を示しやすい
DX推進研修RPA
データ活用
事業改革・業務改善目的が明確
システム・開発基礎研修プログラミング
DB基礎
職務との関連付けが重要

業務でどのように活用するか説明できる研修内容であることが、対象講座として判断されるポイントです。

マネジメント・営業研修の研修テーマとスキル

マネジメントや営業分野の研修は、組織力や売上向上に直結するスキルを育成する講座が対象講座になりやすい分野です。育成目的を明確に示しやすく、助成金活用がしやすいと言えます。

マネジメント・営業研修の対象講座一覧は以下のとおりです。

研修テーマ習得できるスキル対象講座としてのポイント
マネジメント研修目標管理
部下育成
管理職育成目的が明確
リーダーシップ研修組織運営
意思決定
計画的育成として評価されやすい
営業力強化研修提案力
交渉力
業務成果と結びつけやすい

研修テーマと自社の課題を結びつけ、どのスキルを強化したいのかを整理することが重要です。

専門スキル研修の対象講座一覧

専門スキル研修は、業種や職種ごとの実務能力向上を目的とする講座が中心です。業務内容との関連性が明確で、助成対象になりやすい傾向があります。

専門スキル研修の対象講座一覧は以下のとおりです。

研修テーマ習得できるスキル対象講座としてのポイント
技術・製造研修工程改善
安全管理
現場力向上が明確
資格取得研修専門知識
資格対応力
成果を示しやすい
社内教育担当者研修指導力
育成設計
人材育成体制の強化につながる

助成対象として、専門性を高めることが、業務に必要であることが判断の基準となります。

対象講座に該当する具体例・事例

人材開発支援助成金では、研修テーマそのものよりも「業務との関係性」「育成目的」が重視されます。中小企業で活用されている事例を紹介します。

助成金対象となる講座の具体例

業務内容や事業戦略と明確につながる講座は、人材開発支援助成金対象として認められやすいです。

代表的な具体例は以下のとおりです。

  • DX推進を目的としたIT・デジタル研修
  • 管理職やリーダー育成を目的としたマネジメント研修
  • 新規事業立ち上げに必要な専門スキル研修
  • 職種転換や業務拡大に対応するためのリスキリング研修

「なぜその研修が必要なのか」「業務にどう活かすのか」を説明できることが、対象講座として判断される重要なポイントです。

中小企業における活用事例

事例①:情報通信業で高度デジタル人材育成研修を実施

情報通信業の中小企業(従業員数20名程度)は、組織力強化のために高度なデジタル分野の資格取得研修を計画的に実施しました。

従来は個人任せだったスキル習得を、企業として計画化し、外部教育機関の講座でプロジェクトマネージャ試験対策講座などを実施しています。

これにより、組織内に高度デジタルスキルを持つ人材を育成することができ、助成金の対象となりました。

引用元:厚生労働省

事例②:製造業で新人研修制度の整備と定着促進

ある製造業の企業(従業員数45名)は、新人教育を現場任せにしていたため育成のムラや離職率の高さに課題がありました。

そこで、OFF-JT中心の新人研修制度を整備し、外部講師を招いた研修を実施。また研修内容を社内で共有できるようドキュメント化し、評価・フィードバックも記録として残す仕組みを構築しました。

この取り組みに対して「人材開発支援助成金(特定訓練コース)」が活用され、研修の標準化・教育効率化と新人定着率の改善につながったと報告されています。

引用元:助成金プランナーズ協会

対象外になりやすい講座の事例

研修内容によっては助成対象外となるケースもあります。業務との関連性が薄い講座や、訓練実態が確認できない研修は対象外になりやすいです。

対象外になりやすい事例として、以下が挙げられます。

  • 趣味や教養を目的とした講座
  • 通常業務と区別がつかないOJTのみの研修
  • 訓練時間が短く、研修としての実態が乏しい講座
  • 事前の訓練計画や届出を行っていない研修

内容が良くても制度要件を満たさなければ不支給となる可能性があります。

人材開発支援助成金の対象講座の選定基準

人材開発支援助成金を活用するうえで重要なのは、制度に合っているかどうかです。対象講座を選ぶ際に押さえておきたい基準を解説します。

助成金要件を満たすかの選定基準

まず確認すべきは、助成金の制度要件を満たしているかどうかです。要件を満たさない研修は内容が優れていても対象になりません。

助成対象となる研修について、以下のような条件が示されています。

  • OFF-JT(職場外研修)として実施されている
  • 実訓練時間が一定時間以上確保されている
  • 事前に訓練計画を作成し、届出を行っている
  • 雇用保険の適用を受ける労働者を対象としている

上記は最低限の確認事項です。講座を検討する前に、該当コースの要件を確認することが重要です。

研修テーマと自社課題の適合性

研修テーマが自社の課題に合っているかは重要です。研修の目的を明確に説明できない場合、助成金活用は難しくなります。

選定時には、以下の点を整理すると判断しやすくなります。

  • どの業務課題を解決するための研修なのか
  • どの職種・役割の人材を育成するのか
  • 将来の事業展開や組織づくりにつながる内容か

例えば、業務のデジタル化が課題であればIT研修、管理職不足が課題であればマネジメント研修といったように、課題と研修内容を結びつけることが選定のポイントです。

研修内容と実施条件の確認ポイント

研修内容だけでなく実施方法や運用面の確認も欠かせません。研修の実施体制が不十分な場合、支給申請時に問題が生じる可能性があります。

事前に確認しておきたいポイントは以下のとおりです。

  • 講師や研修機関の実績・信頼性
  • 研修内容やカリキュラムが明確に示されている
  • 出席管理や実施記録を適切に残せる体制がある
  • オンライン研修の場合、受講管理方法が明確

上記を事前に整理しておくことで、申請手続きや支給申請をスムーズに進めやすくなります。

対象講座の選び方とおすすめポイント

人材開発支援助成金を活用するためには、対象講座を一定の考え方に基づいて選定することが重要です。

人材育成目的から考える選び方

対象講座を選ぶ際は、研修内容から考えるのではなく、人材育成の目的から逆算することが基本です。「どのスキルを、誰に、なぜ身につけさせたいのか」を明確にすることが重要です。

例えば、次のような視点で考えると選びやすいです。

  • 業務効率化やDX推進を進めたい
  • 管理職やリーダー層を育成したい
  • 新規事業や新分野に対応できる人材を育てたい

人材育成の目的を明確にしたうえで研修テーマを選ぶことで、助成金制度にも合致しやすく、研修効果も高まりやすくなります。

失敗を防ぐための確認ポイント

助成金活用で多い失敗は、研修内容自体は適切でも、制度要件を満たしていないケースです。講座を決める前に制度面の確認を行うことが欠かせません。

注意したい確認ポイントは以下のとおりです。

  • 研修がOFF-JTとして実施されるか
  • 実訓練時間が要件を満たしているか
  • 事前に訓練計画を提出できるか
  • 出席管理や実施記録を残せる体制があるか

講座選定の段階で、制度要件を満たしているかを必ず確認することが重要です。

専門家に相談するおすすめの考え方

人材開発支援助成金は、コースごと・年度ごとに要件が異なり、判断が難しい制度です。
助成金活用に不安がある場合は、社労士などの専門家に相談することも有効な選択肢です。

専門家に相談することで、次のようなメリットが期待できます。

  • 自社の研修がどのコースに該当するか整理できる
  • 要件の見落としによる不支給リスクを減らせる
  • 研修設計から申請までの流れを把握しやすくなる

第三者の視点を取り入れることで失敗を防ぎやすくなります。

まとめ:人材開発支援助成金の対象講座を正しく選ぶ

人材開発支援助成金を活用するには、対象講座を正しく選ぶことが重要です。研修内容の良し悪しだけで判断するのではなく、自社の人材育成目的や事業課題に合っているかを確認する必要があります。

あわせて、OFF-JTでの実施や訓練時間、事前計画の提出など、助成金の要件を満たしているかの確認も欠かせません。IT・デジタルやマネジメント、専門スキル、リスキリング分野の研修は対象になりやすい一方、条件を満たさなければ不支給となる場合もあります。

制度の考え方を理解したうえで、必要に応じて専門家の知見も取り入れ、計画的に講座を選定することが、助成金活用を成功させるポイントです。