キャリアアップ助成金は誰がもらえるのか、疑問に感じている経営者や人事担当者は少なくありません。
有期雇用労働者や短時間労働者を正社員化した場合に活用できる制度ですが、対象企業や従業員の要件、処遇改善の基準など、確認すべきポイントは多岐にわたります。
個人事業主でも受給できるのか、どのような条件を満たせばよいのかを正しく理解することが重要です。
本記事では、キャリアアップ助成金は誰がもらえるのかという視点から、対象者や受給条件、申請の流れまでをわかりやすく解説します。
キャリアアップ助成金は誰がもらえる?
キャリアアップ助成金は、非正規雇用の労働者の正社員化や処遇改善を進めた事業主に対して支給される制度です。
雇用形態ごとに扱いが異なるため解説します。
有期雇用労働者は対象になるか
有期雇用労働者は、キャリアアップ助成金の代表的な対象です。
有期雇用労働者とは、契約期間が定められている労働者を指します。契約社員・パート・アルバイトなどが該当します。
有期雇用労働者については、次のようなケースが対象になります。
- 有期雇用から正社員へ転換した場合
- 有期雇用から無期雇用へ転換した場合
- 雇用区分の変更により処遇改善が行われた場合
単に契約を更新しただけでは対象になりません。雇用区分が明確に変更され、正社員化や処遇改善が実施されていることが前提です。
短時間労働者・派遣労働者の扱い
短時間労働者や派遣労働者も、一定の条件を満たせば対象になります。
短時間労働者とは、通常の正社員より所定労働時間が短い労働者を指します。パートタイマーが代表例です。短時間労働者を正社員化した場合も、キャリアアップ助成金の対象になります。
派遣労働者については、派遣先企業が直接雇用する形で正社員化した場合などが対象です。派遣元との契約のままではなく、派遣先での直接雇用へ切り替わることがポイントになります。
対象となる主な雇用区分は、次のとおりです。
- 有期雇用労働者
- 無期雇用労働者(正社員以外)
- 短時間労働者
- 派遣労働者(直接雇用へ転換した場合)
雇用契約の内容と就業規則上の区分を確認することが重要です。
非正規雇用の労働者を正社員化した場合
キャリアアップ助成金は、非正規雇用の労働者を正社員化する取り組みを支援する制度です。
非正規雇用の労働者には、次のような区分があります。
- 有期雇用労働者
- 無期雇用労働者(正社員以外)
- 短時間労働者
これらの労働者を、期間の定めのない正規雇用へ転換した場合に助成の対象となります。
重要なことは、「正社員化」の定義です。
名称だけを変更するのではなく、就業規則上で正規雇用労働者として位置づけられ、基本給や賞与などの処遇改善が行われている必要があります。
参照元:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和7年度版)」
キャリアアップ助成金は誰がもらえる:対象企業

キャリアアップ助成金は、労働者の区分だけでなく、対象企業が受給条件を満たしているかを確認する必要があります。
対象企業の基本要件や個人事業主の可否、受給できないケースを解説します。
対象企業の受給条件
キャリアアップ助成金を受給するためには、企業側が一定の条件を満たしていなければなりません。
主な受給条件は次のとおりです。
- 雇用保険適用事業所であること
- 対象となる労働者が雇用保険被保険者であること
- 就業規則や賃金規定を整備していること
- 正社員化制度などを明確に規定していること
- 労働関係法令を遵守していること
重要なのは、就業規則に正社員転換制度を明記し、実際に制度として運用している点です。口頭の合意や個別対応だけでは足りません。
また、支給申請時点で賃金の未払いがある場合や、重大な法令違反がある場合は、不支給となる可能性があります。
個人事業主でも申請できるか
キャリアアップ助成金は、法人だけでなく個人事業主も対象になります。個人事業主であっても、次の条件を満たしていれば申請可能です。
- 雇用保険適用事業所として届け出ている
- 対象となる労働者を雇用している
- 就業規則や転換制度を整備している
法人格の有無は要件ではありません。雇用保険の適用事業所であることが前提になります。
小規模事業者や家族経営の事業所でも、要件を満たせば受給の対象になります。
受給できない企業の共通点
キャリアアップ助成金は要件を満たせば受給できますが、実務上は不支給になるケースもあります。
受給できない企業に見られる主な共通点は次のとおりです。
- 雇用保険に加入していない
- 正社員化制度を就業規則に定めていない
- 書類や証憑の整備が不十分
- 申請期限を守っていない
- 法令違反や賃金未払いがある
キャリアアップ助成金は、形式的な雇用形態の変更だけで受給できる制度ではありません。制度に沿った準備と運用が求められます。
自社が対象企業に該当するかどうかを事前に確認しておくことが、受給成功への第一歩です。
従業員の要件と処遇改善の条件:受給基準
キャリアアップ助成金は、対象企業の条件だけでなく、従業員の要件を具体的に確認することが重要です。
正社員化コースを中心に、勤続期間や契約形態、処遇改善の基準を解説します。
勤続期間と契約形態の要件
まず確認すべきなのが、転換前の雇用実績です。
主な従業員の要件は次のとおりです。
- 転換前に一定期間、継続して雇用されていること
- 雇用保険の被保険者であること
- 転換前の雇用区分が有期雇用労働者または正社員以外の無期雇用労働者であること
一般的には、転換前に6か月以上の雇用実績が必要です。短時間労働者や派遣労働者であっても、直接雇用へ転換するなど一定の条件を満たせば対象になります。
注意したいのは、単なる契約更新では対象にならない点です。有期から有期への更新ではなく、雇用区分が明確に変更されていることが必要です。
正社員化の定義と賃金増額要件
キャリアアップ助成金における「正社員化」は、名称変更だけでは認められません。
正社員化として認められるためには、次の条件を満たす必要があります。
- 期間の定めのない労働契約へ転換していること
- 就業規則上で正規雇用労働者として位置づけられていること
- 転換後に基本給が増額していること
重要なのが、基本給の増額です。正社員化コースでは、原則として転換後に基本給が3%以上増額していることが求められます。賞与や手当のみの増額では足りません。
あくまで基本給の引き上げが受給の前提になります。
処遇改善として認められる内容
キャリアアップ助成金では、実質的な処遇改善が行われているかどうか、判断基準になります。
処遇改善として認められる主な内容は次のとおりです。
- 基本給の増額
- 賞与の新設または増額
- 退職金制度の適用
- 昇給制度の整備
- 福利厚生制度の拡充
ただし、正社員化コースでは基本給の増額が中心的な要件です。制度上の位置づけだけを変更しても、賃金水準が変わっていなければ受給できません。
キャリアアップ助成金は誰がもらえるのかを判断するうえでは、対象企業であることに加え、こうした従業員の要件と処遇改善の基準を満たしているかを確認することが欠かせません。
キャリアアップ助成金は誰がもらえる:受給額と流れ

キャリアアップ助成金は、実務上重要になるのが受給額と申請の流れです。正社員化コースを中心に、受給額の目安と受給までの流れを解説します。
正社員化コースの受給額
正社員化コースの受給額は、転換前の雇用区分や企業規模によって異なります。
代表的な支給額の目安は次のとおりです。
- 有期雇用労働者を正社員化した場合
中小企業:1人あたり 57万円
大企業:1人あたり 42万7,500円 - 無期雇用労働者(正社員以外)を正社員化した場合
中小企業:1人あたり 28万5,000円
大企業:1人あたり 21万3,750円
中小企業のほうが支給額は高く設定されています。また、母子家庭の母や父子家庭の父など、一定の要件を満たす労働者を正社員化した場合には、加算措置が設けられることがあります。
支給額は1人単位で算定され、年度ごとに上限人数が設定されています。さらに、制度改正により金額や要件が見直されることもあるため、申請前には必ず最新の支給額や加算要件を確認することが重要です。
自社が対象企業に該当するか、どの区分で申請できるかを事前に整理しておくことで、受給額の見込みを正確に把握しやすくなります。
申請の流れと必要書類
キャリアアップ助成金の申請は、事前準備から支給申請まで段階的に進みます。
基本的な流れは次のとおりです。
- 就業規則に正社員化制度を規定する
- キャリアアップ計画書を提出する
- 計画に基づき正社員化や処遇改善を実施する
- 転換後、一定期間経過後に支給申請を行う
事前に計画書を提出する点が大きな特徴です。 制度を整備せずに正社員化を行った場合、さかのぼって受給することはできません。
主な提出書類は次のとおりです。
- 支給申請書
- 就業規則
- 雇用契約書
- 賃金台帳
- 出勤簿
書類の整備状況が審査に大きく影響します。
受給までのスケジュールと注意点
正社員化後すぐに支給されるわけではありません。転換後の賃金支払い実績を確認する期間を経て、支給申請を行います。
受給までの流れで注意したいポイントは次のとおりです。
- 計画届の提出期限を守る
- 転換後の基本給増額を確実に実施する
- 賃金台帳や出勤簿を正確に管理する
- 申請期限を超えないようにする
キャリアアップ助成金は誰がもらえるのかという点だけでなく、受給までの流れを理解しておくことで、実務上のミスを防ぎやすくなります。
参照元:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和7年度版)」
不支給事例と制度活用のポイント

キャリアアップ助成金は、制度運用や手続きのミスがあると受給できない可能性があります。よくある不支給事例と、受給につなげるためのポイントを解説します。
よくある不支給ケース
不支給となる主な原因は、制度要件の見落としや準備不足です。
代表的なケースは次のとおりです。
- 就業規則に正社員転換制度を明記していない
- キャリアアップ計画書を事前に提出していない
- 基本給の増額が3%未満である
- 転換前から実質的に正社員と同等の処遇だった
- 申請期限を過ぎている
制度整備や計画届の提出前に正社員化を実施してしまうケースが多いです。キャリアアップ助成金は事前準備が前提の制度であり、後から申請することはできません。
申請前チェックリスト
不支給を防ぐためには、申請前の確認が重要です。
次の項目を事前にチェックしておくと安心です。
- 雇用保険適用事業所であるか
- 対象となる労働者は雇用保険被保険者か
- 転換前の勤続期間は要件を満たしているか
- 就業規則に正社員化制度が規定されているか
- 基本給を3%以上増額しているか
- 計画届・支給申請を期限内に行っているか
チェックリストを活用することで、申請後の差し戻しや不支給リスクを抑えやすくなります。
専門家に相談するメリット
キャリアアップ助成金は、制度改正や細かな運用基準が多く、判断が難しい場面があります。
次のような場合は、専門家への相談が有効です。
- 自社が対象企業に該当するか判断できない
- 従業員の要件や処遇改善の基準が不明確
- 就業規則の整備方法が分からない
- 他の助成金との併用可否を確認したい
社会保険労務士などの専門家に相談することで、制度に沿った運用を進めやすくなります。
キャリアアップ助成金は誰がもらえるのかを理解することに加え、不支給リスクを事前に排除する体制を整えることが、確実な受給につながります。
まとめ:キャリアアップ助成金は誰がもらえるかを知る
キャリアアップ助成金は、法人だけでなく個人事業主でも、雇用保険適用事業所であることなどの要件を満たせば受給できます。
重要なことは、有期雇用労働者などの非正規雇用の労働者を正社員化し、処遇改善を実施したうえで、計画書を事前に提出するなど制度の流れに沿って進めることです。
また、制度内容や申請書様式は年度ごとに見直されるため、最新情報を確認しながら対応する必要があります。
自社が対象企業に該当するか、どのコースを選ぶべきか迷う場合は、専門家へ相談することも有効です。詳しくは社会保険労務士法人グロースアシストの公式ウェブサイトをご確認ください。