人事・総務の仕事をしていると、「労務管理の知識をもっと身につけたい」と感じる場面があるかもしれません。この先は、1987年以来約40年ぶりとなる労働基準法の抜本改正に向けた議論が進められており、労務管理に求められる知識の幅は広がり続けるばかりです。

そうした流れのなかで、「労務管理士」の資格に関心を持つ方が見られます。ただ、「社労士とは何が違うのだろう」「取得して本当に役立つのだろうか」と迷うケースが多いのではないでしょうか。

本記事では、労務管理士の資格概要から社労士との違い、取得方法やメリット、注意点を徹底解説します。資格取得を検討する際の参考にしてください。

労務管理士とは?資格の概要と位置づけ

労務管理士は、労務管理に関する専門的知識を学べる民間資格です。国家資格の社会保険労務士(社労士)とは違い、労務管理士には法律で定められた独占業務がありません。

まずは、労務管理士の特徴や資格概要、位置づけを確認してきます。

労務管理の専門知識を証明する民間資格

労務管理士は、企業内の労務管理に必要な知識を体系的に学び、その習得度を証明する民間資格です。2級の出題範囲は労働基準法が中心で、労働契約・賃金・労働時間・就業規則など、人事・総務の日常業務に直結するテーマが含まれます。

国家資格の社会保険労務士(社労士)とは異なり、労務管理士には独占業務がありません。ただし、労働基準法の基礎を一から整理できるため、社内でのスキルアップに活用しやすい資格です

認定団体は「日本人材育成協会」

労務管理士を認定しているのは、一般社団法人日本人材育成協会(jinzai.org)です。本記事で解説する資格情報も、同協会の認定制度にもとづいています。

項目日本人材育成協会日本経営管理協会(JIMA)
認定資格労務管理士(2級・1級)経営管理士・M&Aスペシャリストなど
労務管理士の認定あり確認できず
公式サイトjinzai.orgjima.org

一方、名前が似ている一般社団法人日本経営管理協会(JIMA)という団体も存在します。JIMAが認定しているのは経営管理士やM&Aスペシャリストなどで、2026年4月時点、公式サイト上に労務管理士の記載は見当たりません。

インターネット上では両団体を混同した情報が見られるため、受講前に申込先の公式サイトで認定団体を確認しておきましょう。

社会保険労務士(社労士)との違い

労務管理士と名前が似ている資格に、社会保険労務士(社労士)があります。両者の大きな違いは、「国家資格か民間資格か」です。

比較項目社会保険労務士(社労士)労務管理士
資格区分国家資格民間資格
根拠法令社会保険労務士法なし(各団体が独自に認定)
独占業務あり(労働・社会保険手続きの書類作成・提出代行、帳簿書類の作成など)なし
試験合格率直近5年で5~7%台比較的高い(講座受講+試験)
受験資格学歴・実務経験などの条件あり20歳以上(学歴不問)

社労士は手続き代行などの独占業務を担える国家資格であり、取得には相応の学習期間が必要です。一方、労務管理士は独占業務を持たないかわりに、受験のハードルが低く、社内で必要な労務知識を短期間で整理できます。

まずは自分の目的が「専門家として独立したい」のか「今の業務に必要な知識を身につけたい」のかを整理すると、どちらの資格を目指すべきか判断しやすいでしょう。

労務管理士の主な仕事内容

ここでは、労務管理士の主な仕事内容を3つの領域に分けて整理します。

勤怠管理・給与計算と法令対応

従業員の出退勤や残業、有給休暇の取得状況を正確に記録し、それをもとに給与計算をおこないます。36協定の届け出や変形労働時間制の運用など、法令にもとづいた判断を求められる場面が日常的に発生する領域です。

勤怠管理システムの導入・運用にあたっても、法令上のルールを理解したうえで設定する必要があるため、制度と実務の両面を押さえなければなりません。

安全衛生とメンタルヘルス対策

メンタルヘルスやハラスメントへの対応は、今や企業規模を問わず求められる業務です。具体的には、ストレスチェックの実施・集計、相談窓口の運営、社内研修の企画・実施といった実務を担います。

就業規則・社内規程の整備(職場環境の適正化)

就業規則の作成・見直しや賃金規程の整備は、労働基準法をはじめとする法令の理解が求められる業務です。労働時間や休日・休暇のルール、賃金の計算方法や支払い条件などを規程に落とし込み、法令に沿った内容に保つ業務を担います。

冒頭で触れたように、現在は労働基準法の大幅改正も議論されています。法改正の動向を追い、その変更点を社内規程に反映して従業員に説明することも、労務管理士の大切な仕事です。

労務管理士の資格取得方法

労務管理士の資格取得方法は、大きく分けて4つあります。会場受講、オンライン受講、通信講座、書類審査に対応しているため、働きながらでも取り組みやすい資格です。

公開認定講座(会場受講)

公開認定講座は、全国各地で定期的に開催されている会場型の講座です。1日で講義と認定試験が完結するため、短期間で取得を目指す方に選ばれています。

受講料は一般受講で10,000円(税込)です。講座では労働基準法の基礎知識や労務管理の実務的な内容を講師から直接学べるため、テキストだけでは理解しにくい部分を質問しながら進められます。

Web資格認定講座

受講料8,000円(税込)で、テキスト・資料・認定試験費用がすべて含まれているのがWeb資格認定講座です。インターネット環境さえあれば日時や場所を選ばず学習を進められるため、まとまった時間が取りにくい方でも自分のペースで取り組めます。

通信講座

送付される教材をもとに学習を進め、決められた研修を修了したあとに到達度試験を受験します。会場に出向く必要がなく、仕事や家庭の都合に合わせてスケジュールを組める点が特徴です。

書類審査による資格取得

労務管理の実務経験が一定年数以上ある場合、書類審査で資格を取得できる制度を利用できます。職務経歴書や担当業務の内容をもとに審査がおこなわれ、一定の基準を満たしていれば認定を受けられます。

ただし、経験年数や業務内容に関する条件があるため、誰でも使える訳ではありません。詳しい要件は日本人材育成協会の公式サイトで確認してください。

労務管理士資格を取得するメリット

管労務管理士を取得するメリットは、独立・転職よりも「今の職場での実務力アップ」にあります。ここでは、実務面・キャリア面それぞれのメリットを整理します。

人事・総務部門での採用試験で評価される

人事・総務の求人に応募する際、労務管理士を取得していると「労務管理の基礎を体系的に学んだ人材」として他の候補者と差別化できます。

面接の場でも、労働基準法や勤怠管理といったテーマを学んでいることは、採用担当者へのプラス評価につながります。資格の取得そのものだけでなく、学習を通じて身につけた知識が実務でそのまま活かせる点も魅力です。

社労士を目指す前の基礎固めになる

社労士試験は合格率5〜7%台で、労働法・社会保険・年金と出題範囲が広いため、学習を始めた段階でつまずく方が少なくありません。労務管理士は、この広い範囲のうち労働基準法や就業規則、勤怠管理といった基礎部分をひと通り学べる資格です。

先に労務管理士資格で全体像をつかんでおくと、社労士資格の勉強に入ったときに各科目のつながりが見えやすくなります。段階を踏んで学びたい方は、まず労務管理士から始めてみるのもひとつの方法です。

部下の労務相談に自信を持って対応できる

管理職やチームリーダーは、「残業時間が多いけれど大丈夫だろうか」「有給休暇を取りにくい雰囲気がある」といった相談を部下から受けることがあります。そのとき、法的な根拠を踏まえた回答ができるかどうかで、部下からの信頼は大きく変わるものです。

労務管理士の学習を通じ、労働基準法や勤怠管理の基礎を身につけておくと、感覚ではなく根拠にもとづいた対応ができるようになります。日ごろから知識を意識しておくことで、いざというとき自信を持って対応できるはずです。

労務管理士資格の注意点

メリットだけでなく注意点も確認しておくと、自分に合った資格かどうかを冷静に判断できます。詳しく見ていきましょう。

登録料20,000円と月会費がかかる

費用項目金額
受講料(Web講座の場合)8,000円(税込)
受講料(公開講座の場合)10,000円(税込)
登録料20,000円
月会費1,000円(年一括払いは10,000円=2,000円割引)

資格を取得して登録すると、登録證・認定書・身分証明書・バッジの4点が交付されます。資格を維持するには月会費の支払いを続ける必要があるため、長期的なコストとして見積もっておきましょう。

独占業務がないため評価は分かれがち

社労士のような独占業務がないため、一部では「取得しても実務上の権限が変わらない」「意味がない」と評価されることがあります。ただ、労務管理の基礎知識を短期間で学べるのは確かなメリットです。

「資格で独占業務を得たい」のか「実務の基礎を効率よく身につけたい」のか、取得の目的をはっきりさせたうえで検討することをおすすめします。

よくある質問

労務管理士の資格について、検討段階でよく出る疑問を整理しました。

Q. 労務管理士は国家資格ですか?

労務管理士は国家資格ではなく、一般社団法人日本人材育成協会が認定する民間資格です。国家資格である社会保険労務士(社労士)とは異なり、法律で定められた独占業務はありません。社会保険手続きの代行など、社労士にしか認められていない業務はおこなえないため注意してください。

Q. 誰でも取れる?受験資格はある?

日本人材育成協会が認定する労務管理士2級の受験資格は、20歳以上であることのみです。学歴や職歴による制限はなく、幅広い方が受験できます。ただし、書類審査ルートでの取得には実務経験3年以上などの条件があります。

合格率は公式に公表されていません。ただ、講座を受講したうえで試験に臨む形式のため、講座内容を理解していれば比較的合格を目指しやすいでしょう。合格率の目安や試験の実態について詳しく知りたい方は、関連コラムもあわせてご覧ください。

Q. 労務管理士の年収はどのくらい?

「労務管理士」という資格単体での平均年収データは公表されていません。労務管理士はあくまで知識の証明であり、資格を取得しただけで年収が上がる仕組みではないためです。

まとめ:労務管理士の特徴を理解して資格取得を目指そう

労務管理士は、労働基準法や勤怠管理、安全衛生など、企業の労務まわりの知識をつかめる民間資格です。社労士のような独占業務はありませんが、人事・総務の実務に直結する知識を短期間で身につけられることに価値があります。

取得方法は4つあり、受講・受験・審査料は取得方法によって8,000円〜20,000円とされています。現状からのスキルアップしたい方、将来的に社労士を目指したい方の足がかりになる資格といえます。

「労務管理の知識を整理したい」「キャリアアップのきっかけがほしい」と感じている方は、まず労務管理士から検討してみてください。自分に合った学び方を見つけることが、キャリアを広げる第一歩になります。

このほか、労務管理に関するコラムも掲載していますので、あわせてご覧ください。

参照

一般社団法人日本人材育成協会「労務管理士受験方法」

一般社団法人日本人材育成協会「資格登録・入会」

厚生労働省「労働基準関係リーフレット」

厚生労働省「職業情報提供サイト(job tag)」

一般社団法人日本人材育成協会「類似団体について」

厚生労働省「第57回社会保険労務士試験の合格者発表」