ITツールの見積もりを見て、思っていたより高いと感じたことはないでしょうか。デジタル化・AI導入補助金が使えると聞いても、補助率も上限額も枠ごとに幅があります。

いくら受け取れてどれくらい手間がかかるのかがわからないまま、判断を保留している方は少なくありません。

この制度は2026年に名称が変わったばかりで、旧IT導入補助金の情報が検索結果に残っていることがあります。いつ時点の情報かを確かめずに判断すると、対象外の経費を見込んでしまう恐れがあります。この記事では対象になる事業者、通常枠の経費と金額、締切までの流れを解説します。

デジタル化・AI導入補助金の申請準備を、専門家がサポート

デジタル化・AI導入補助金とは

デジタル化・AI導入補助金とは

デジタル化・AI導入補助金とは、ITツール導入費を補助する制度で、正式名称は「中小企業デジタル化・AI導入支援事業」です。2025年までのIT導入補助金から名称が変わりました。

この補助金で対象になるのは、事務局にあらかじめ登録されているITツールです。そのため、自分で市販のソフトやAIサービスを購入・契約したあとに、「補助金を使いたい」と申請することはできません。導入を検討する段階で、そのツールが補助対象として登録されているかを確認する必要があります。

また、制度名には「AI」と入っていますが、AIツール専用の申請枠があるわけではありません。AIツールを導入したからといって補助率が高くなったり、審査で加点されたりする仕組みもありません。あくまで補助対象となるITツールの中に、AI機能を持つソフトウェアも含まれていると考えるとわかりやすいでしょう。

参照:デジタル化・AI導入補助金2026|独立行政法人中小企業基盤整備機構

申請枠はチラシと公募要領で最新情報を確認する

申請枠は、通常枠、インボイス枠(インボイス対応類型・電子取引類型)、セキュリティ対策推進枠、複数者連携デジタル化・AI導入枠があります。

業務効率化のためにソフトウェアを導入する場合は通常枠が基本になります。

制度の全体像は、中小企業庁が公開するチラシで確認できます。申請時は公募要領で、申請要件、補助対象経費、補助率・補助額などを確認しましょう。

参照:「デジタル化・AI導入補助金」でITツール・AI導入による生産性向上を支援!(令和8年7月時点版)|中小企業庁

通常枠の対象事業者には個人事業主も含まれる

通常枠の対象事業者には個人事業主も含まれる

通常枠では個人事業主も対象です。業種ごとに資本金または従業員数の上限が定められており、どちらか一方の要件を満たせば申請できます。両方を満たす必要はありません。

個人事業主が申請するときの必要書類

個人事業主が申請するときに必要な書類は、主に次の4種類です。

  • 本人確認書類(運転免許証、運転経歴証明書または住民票)
  • 所得税の納税証明書
  • 確定申告書の控え
  • 青色申告決算書または収支内訳書

申請時の際に慌てないように早めの準備が大切です。

参照:デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)|中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局

通常枠の補助額と対象となる経費

通常枠で補助されるのは、ソフトウェアやクラウドサービスなどの導入費用です。パソコンやタブレットなどの機器は対象になりません。

補助額は最大450万円

通常枠の補助額は、最大450万円です。導入するITツールが対応する「業務プロセス」の数によって、補助額の上限が変わります。

業務プロセス数補助額
1つ~3つ5万円以上150万円未満
4つ以上150万円以上450万円以下

業務プロセスとは、会計、販売管理、在庫管理、人事・給与など、ITツールで効率化する業務の種類のことです。会計・財務・経営の業務だけに対応するITツールの場合、1プロセスとして扱われます。

補助率は原則として2分の1以内です。ただし、最低賃金に近い水準で働く従業員が一定割合いる事業者は、3分の2以内まで引き上げられます。

例えば、補助率が2分の1で補助対象経費が100万円の場合、補助額は50万円です。残りの50万円と消費税は自己負担となります。

対象はソフトウェア購入費やクラウド利用料

通常枠で補助対象になる主な経費は、次の3つです。

対象経費内容
ソフトウェア購入費業務に使用するソフトウェアの購入費
クラウド利用料クラウドサービスの利用料。最大2年分まで
導入関連費保守サポート、マニュアル作成、導入後の活用支援など

ただし、ソフトウェアの導入が必須です。保守サービスやオプションだけを申し込んでも補助対象にはなりません。

また、対象となるソフトウェアには、会計や受発注、勤怠管理など、業務を改善する機能が1種類以上必要です。

例えば、次のような活用例があります。

  • 勤怠管理ツールを導入し、出先から打刻できるようにして残業時間を削減
  • クラウド会計システムを導入し、AIによる自動仕訳で経理作業を効率化

パソコンやタブレットは通常枠では対象外

対象外として覚えておきたいのが、パソコンやタブレットなどのハードウェアです。通常枠では、次の機器は補助されません。

  • パソコン
  • タブレット
  • レジ
  • 券売機

一方、インボイス枠(インボイス対応類型)では、対象ソフトウェアとあわせて導入する場合、パソコン・タブレット等は10万円以下、レジ・券売機等は20万円以下まで補助対象となります。補助率はいずれも2分の1以内です。

機器補助上限額補助率
パソコン・タブレット10万円まで2分の1以内
レジ・券売機20万円まで2分の1以内

ただし、機器だけを購入できるわけではありません。会計・受発注・決済の機能を持つ対象ソフトウェアを導入することが前提です。

参照:中小企業デジタル化・AI導入支援事業「デジタル化・AI導入補助金2026」の概要(令和8年4月)|中小企業庁

2026年のスケジュール|申請から入金までの流れ

2026年のスケジュール|申請から入金までの流れ

2026年の締切は6次まで公表されています。申請から補助金を受け取るまでの流れは、大きく3ステップです。

ステップ1|GビズIDプライムとSECURITY ACTIONを準備する

申請前に、次の2つを準備します。

  • GビズIDプライムの取得
  • SECURITY ACTIONの「★一つ星」または「★★二つ星」の宣言

SECURITY ACTIONとは、中小企業が情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度です。

なお、GビズIDプライムは、行政のオンライン手続きを行うための事業者向けのアカウントで、発行まで時間がかかることがあるため、早めに準備しましょう。

参照:GビズID|デジタル庁

参照:中小企業の情報セキュリティ|中小企業庁

ステップ2|締切までに交付申請を提出する

交付申請は、IT導入支援事業者と共同事業体を組んで締切までに提出します。事業者単独ではできません。

補助対象になるのは、事務局に登録された事業者が提供する登録済みのITツールだけです。

2026年は3月30日に受付が始まりました。締切は次の通りです。

締切回締切日交付決定日実績報告期限
1次5月12日6月18日2026年12月25日
2次6月15日7月23日2027年1月29日
3次7月21日9月2日(予定)2027年2月26日
4次8月25日10月7日(予定)2027年3月31日
5次9月29日11月9日(予定)2027年4月30日
6次10月30日12月10日(予定)2027年5月31日

締切時間はいずれも17時です。採択でも不採択でも審査内容や理由は開示されません。

参照:事業スケジュール|デジタル化・AI導入補助金2026

ステップ3|交付決定後に契約し、実績報告で受け取る

採択されても、すぐに補助金が振り込まれるわけではありません。

交付決定を受けてからITツールを契約・発注し、いったん自社で代金を全額支払います。その後、請求書や支払い記録、ITツールを利用していることがわかる画面などを提出して実績報告を行います。

審査を経て補助額が確定したあと、補助金が振り込まれます。

とくに注意したいのは、交付決定前に契約・発注すると補助対象外になることです。「申請→交付決定→契約・購入→支払い→実績報告→入金」という順番で覚えておくとわかりやすいでしょう。

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採択率は通常枠で43.5%

デジタル化・AI導入補助金2026の通常枠の2次締切の採択率は43.5%で、申請しても半数以上が不採択となっています。申請要件を満たすだけでなく、審査で評価される内容を意識することが大切です。

枠採択率
通常枠43.5%
(申請:1,879者、採択:819者)

参照:「デジタル化・AI導入補助金2026」「通常枠:2次締切」等の補助事業者を採択しました|中小企業庁

審査では経営課題とITツールの相性が見られる

審査では、主に次の点が確認されます。

  • 自社の経営課題に合ったITツールを選んでいるか
  • ITツールの導入によって生産性向上が期待できるか

さらに、クラウド製品の導入や「省力化ナビ」の活用、健康経営優良法人などの認定は加点対象になります。

一方、過去に補助を受けたものと同じ業務プロセスのソフトウェアを申請するなど、減点や不採択につながる条件もあります。

採択後も3年間の事業計画が必要

この補助金は、ITツールを導入して終わりではありません。申請時に3年間の事業計画を作り、生産性を継続的に高めることが求められます。

基本的には、労働生産性を年平均3%以上向上させる計画が必要です。

また、150万円以上の補助を申請する場合は、給与の引き上げや事業場内最低賃金を地域別最低賃金より30円以上高くするなど、賃上げに関する条件も加わります。

これらの目標を達成できなかった場合は、補助金の一部または全額の返還を求められることがあります。

採択後も数年間にわたって実績報告が必要になるため、申請前に「補助金を受け取れるか」だけでなく、「その後の計画や報告まで続けられるか」も確認しておきましょう。

自社が対象か確認した後は日程を意識して取り組む

通常枠では、ソフトウェア購入費やクラウド利用料、導入関連費が補助対象です。パソコンやレジなども対象にしたい場合は、インボイス枠を検討しましょう。

今回の締切に準備が間に合わない場合は、無理に申請せず、次の締切を目指す方法もあります。

判断が難しいのが、補助率が3分の2になる最低賃金に関する条件や、採択後の賃上げ計画です。これらは賃金台帳や従業員の雇用状況を確認して判断する必要があり、目標を達成できなければ補助金の返還を求められる場合もあります。

自社が条件を満たしているかわからない場合は、社会保険労務士法人グロースアシストのような労務の専門家に相談する方法もあります。制度活用のご相談や支援内容については、詳しくは公式ウェブサイトをご確認ください。