「賃上げをした」「非正規社員を正社員にした」「新しく人を採用した」こうした取り組みをしたあとで、「使える助成金があったのでは」と気づく企業もあるかもしれません。

しかし、助成金は種類が多く、国と自治体で別々に制度が設けられているため、どこを確認すればよいのかわかりにくいのが実情です。さらに、制度の内容は年度ごとに変わり、その内容を把握するのに手間取ることもあるでしょう。

この記事では、厚生労働省の助成金や、地域ごとの制度をどこで探せばよいのかをわかりやすく解説します。

自社で使える助成金選びから、社労士がサポートします

厚生労働省の助成金の一覧を分類別に紹介

厚生労働省の助成金の一覧を分類別に紹介

国の雇用関係助成金は、雇用維持から人材開発まで目的別に8つに分類されています。

厚生労働省の助成金の分類を一覧にすると以下の通りです。

分類主な目的
A:雇用維持休業などを行いながら従業員の雇用を守る
B:在籍型出向支援出向を活用して雇用維持やスキルアップを図る
C:再就職支援離職する従業員の再就職を支援する
D:転職・再就職拡大支援中途採用などを増やす
E:雇入れ関係高年齢者や障害者などを新たに雇用する
F:雇用環境の整備職場環境の改善や正社員化、定年延長などに取り組む
G:仕事と家庭の両立支援育児や介護と仕事を両立できる環境を整える
H:人材開発従業員の研修やリスキリングを行う

参照:令和8年度 雇用・労働分野の助成金のご案内(簡略版)|厚生労働省

採用や人材育成、障害者雇用の助成金は目的から探す

「これから何をするのか」から探すと、自社に関係する制度を見つけやすくなります。代表的な助成金を目的別に整理すると、次の通りです。

目的代表的な助成金主な対象となる取り組み
従業員の雇用を維持したい雇用調整助成金休業や教育訓練、出向などによって雇用を維持する
新しい人材を採用したい特定求職者雇用開発助成金高年齢者、障害者、母子家庭の母などを雇い入れる
まず試しに雇用したいトライアル雇用助成金就職が難しい求職者などを一定期間試行的に雇用する
非正規社員を正社員にしたいキャリアアップ助成金契約社員やパートなどを正社員へ転換する
非正規社員の賃金を上げたいキャリアアップ助成金有期雇用労働者などの基本給を一定以上引き上げる
従業員が定着する職場にしたい人材確保等支援助成金雇用管理制度や職場環境を整備する
65歳を超えて働ける会社にしたい65歳超雇用推進助成金定年の引上げや高年齢者の雇用制度を整備する
育児休業を取りやすくしたい両立支援等助成金育児休業の取得や職場復帰を支援する
介護と仕事を両立できるようにしたい両立支援等助成金介護離職を防ぐための制度や職場環境を整える
従業員に研修を受けさせたい人材開発支援助成金職務に必要な研修や教育訓練を実施する
DXやリスキリングを進めたい人材開発支援助成金デジタル人材の育成や新事業に必要な研修を行う
障害者が働きやすい設備を整えたい障害者作業施設設置等助成金など障害特性に合わせた設備や職場環境を整備する

このほかにも、地域雇用開発助成金、通年雇用助成金、外国人労働者の職場環境整備を支援する制度、建設業向けの助成制度などがあります。

制度名を上から順番に確認するよりも、「採用したい」「正社員にしたい」「賃上げしたい」「研修を行いたい」といった自社の目的を先に決め、その目的に合う助成金を探すほうが効率的です。

なお、助成金は年度によってコースの新設や廃止、要件の変更があります。過去の記事に掲載されている制度が現在も利用できるとは限らないため、申請する際は厚生労働省の最新情報を確認してください。

助成金と補助金の違いは審査の有無が目安

助成金と補助金の大きな違いは、条件を満たせば受給できるのか、それとも審査で選ばれる必要があるのかという点です。

雇用関係の助成金は、定められた条件を満たしていれば原則として支給対象になります。一方、補助金は申請後に審査があり、その審査に通った事業者だけが受け取れます。

ただし、助成金なら必ず受け取れるわけではありません。労働保険料の未納などの不支給要件に当てはまる場合は受給できません。また、制度によっては予算の上限に達すると、申請期間の途中でも受付が終了することがあります。

もうひとつ注意したいのが、制度の名前だけでは助成金と補助金をはっきり区別できないことです。自治体では、似たような支援制度でも「助成金」「奨励金」「支援金」「補助金」など、さまざまな名称が使われています。

そのため、制度を探すときは名前だけで判断せず、厚生労働省や経済産業省、都道府県、市区町村など、どこが実施している制度なのかを確認するとわかりやすくなります。

個人事業主が使える助成金はハローワークでも確認できる

個人事業主が使える助成金はハローワークでも確認できる

雇用関係の助成金は、法人だけでなく個人事業主も対象です。ポイントは、法人か個人かではなく、雇用保険の適用事業所であるかどうかです。

個人事業主でも、従業員を雇い、雇用保険に加入させていれば助成金を申請できる可能性があります。一方、従業員を雇わず1人で事業をしている場合は、原則として対象になりません。

また、雇用保険の条件を満たしていても、次のような場合は助成金を受けられないことがあります。

  • 労働保険料を納めていない
  • 過去1年間に労働関係法令の違反がある
  • 申請時や支給決定時に倒産している

つまり、個人事業主かどうかではなく、「雇用保険に加入している従業員がいるか」「労働保険料や労務管理に問題がないか」を確認することが大切です。

自分が対象になる助成金がわからない場合は、管轄のハローワークや労働局に相談し、利用できる制度や申請方法を確認するとよいでしょう。

参照:雇用関係助成金の申請にあたって|厚生労働省

自社で使える助成金は、30分の無料相談で確認できます

東京都や神奈川県など地域の助成金は国とは別に探す

東京都や神奈川県など地域の助成金は国とは別に探す

国の助成金とは別に、都道府県や市区町村が独自に設けている助成金や補助金もあります。

そのため、自社で使える制度を探すときは、国の制度だけでなく、所在地の都道府県や市区町村の制度も確認しましょう。ただし、同じ取り組みについて国と自治体の制度を同時に利用できない場合があります。

東京都と神奈川県、横浜市は実施主体が複数の層に分かれている

自治体の制度がわかりにくい理由のひとつは、制度を実施している機関が複数あることです。

例えば東京都では、東京都産業労働局だけでなく、東京しごと財団や東京都中小企業振興公社なども事業者向けの支援制度を実施しています。

神奈川県内の事業者であれば、神奈川県だけでなく、市区町村の制度も確認する必要があります。例えば、神奈川県には「中小企業生産性向上促進事業費補助金」があり、横浜市には「中小企業新技術・新製品開発促進助成金」などがあります。

つまり、横浜市の事業者であれば「神奈川県」と「横浜市」の両方を確認することで、利用できる制度を見落としにくくなります。

参照:令和8年度中小企業生産性向上促進事業費補助金|神奈川県

参照:中小企業新技術・新製品開発促進助成金|横浜市

福岡市は創業の支援が厚い

自治体によって、力を入れている支援分野も異なります。

例えば福岡市では、創業やスタートアップを支援する制度が用意されています。令和8年度には「福岡市新規創業促進補助金」や「福岡市ソーシャルスタートアップ成長支援補助金」などがあります。

「自分の地域に助成金があるか」と広く探すよりも、「自分が行いたい取り組みを支援する制度が地域にあるか」という視点で探すと見つけやすくなります。

参照:創業支援|福岡市

太陽光発電の補助金は自治体から探す

助成金や補助金は、目的によって担当する省庁や機関が異なります。厚生労働省が扱う助成金は、採用や賃上げ、人材育成など雇用に関する制度が中心です。

そのため、太陽光発電の支援制度は、厚生労働省の雇用関係助成金の一覧には掲載されていません。

住宅用太陽光発電システム単体に対する国の補助金は終了しており、現在は都道府県や市区町村の制度、省エネ住宅や蓄電池などと組み合わせた支援制度が中心です。

太陽光発電の導入を検討している場合は、住んでいる自治体や省エネ関連の支援制度を確認しましょう。

参照:国からの住宅用太陽光発電システム補助金はもうないのですか。|太陽光発電協会

文化芸術の助成金は文化庁などから探す

文化芸術に関する助成制度は、文化庁や日本芸術文化振興会などが設けています。公演や展示、創作活動など、支援を受けたい活動によって対象となる制度は異なります。

助成金や補助金は分野によって確認する窓口が変わります。まず何のために支援を受けたいのかを整理し、その分野を担当する省庁や機関の制度を探しましょう。

参照:日本芸術文化振興会助成事業ウェブサイト|日本芸術文化振興会

助成金は原則後払いで事前確認が必要

厚生労働省の雇用関係の助成金は、対象となる取り組みを行い、要件を満たしたあとに支給申請するのが基本です。支給申請は、制度ごとに定められた日の翌日から原則2ヶ月以内です。

ただし、取り組みを始める前に計画届などの提出が必要な制度もあります。助成金を利用したい場合は、実施前に手続きの流れを確認しておきましょう。

ステップ1.その制度が現在も利用できるか確認する

最初に、利用したい助成金が現在も受け付けられているか確認します。

助成金は年度の途中でも制度改正が行われることがあります。過去の情報で判断せず、申請する時点の公式情報を確認しましょう。

ステップ2.必要な手続きを確認して取り組みを実施する

制度の条件を確認したら、必要に応じて書類を提出し、正社員化や研修などの対象となる取り組みを実施します。

その後、必要書類をそろえて支給申請を行い、審査を経て支給が決まると助成金が入金されます。

費用が発生する制度では、助成金の入金より先に自社で支払う場合があります。そのため、助成金を前提とする場合でも、必要な資金を準備しておくことが大切です。

ステップ3.自分の地域の制度はJ-Net21で探す

国だけでなく、都道府県や市区町村にも独自の助成金や補助金があります。

地域の制度をまとめて探すなら、中小企業基盤整備機構が運営するJ-Net21の「支援情報ヘッドライン」が便利です。補助金や助成金などの支援制度を、地域や目的などから絞り込んで検索できます。

ただし、J-Net21に掲載されている制度でも、すでに募集が終了している場合があります。気になる制度を見つけたら、最後は実施機関の公式サイトで最新の募集状況や申請条件を確認してください。

参照:支援情報ヘッドライン|J-Net21(中小企業基盤整備機構)

助成金を探すときは最新情報を確認する

助成金を探すときは、制度名をひとつずつ確認するよりも、「自社の取り組みが何に当てはまるか」「国と自治体のどちらに制度があるか」「現在も申請できるか」の3点から絞り込むと効率的です。

厚生労働省の雇用関係助成金は、採用、正社員化、賃上げ、人材育成など目的別に整理されています。まずは自社が何をしたいのかを明確にし、それに合う制度を探しましょう。

また、個人事業主でも従業員を雇い、雇用保険の適用事業所になっていれば対象になる可能性があります。

国だけでなく、都道府県や市区町村にも独自の助成金や補助金があります。ただし、同じ取り組みに複数の制度を利用できないケースもあるため、併用できるかも確認しておきましょう。

助成金は年度によって内容や募集状況が変わります。利用したい制度が見つかったら、最後は必ず公式サイトで最新の要件と申請期限を確認してください。判断が難しい場合は、管轄の労働局やハローワーク、社会保険労務士法人グロースアシストなどの専門家に早めに相談すると、申請直前になって対象外とわかるリスクを減らせます。