両立支援等助成金とは、育児・介護・男性の育休取得・不妊治療と仕事の両立を支援するために、企業の制度整備や取り組みに対して支給される助成金です。本記事では、制度の概要や4つのコース、申請方法をわかりやすく解説します。
両立支援等助成金とは?制度の概要をわかりやすく解説

両立支援等助成金は、仕事と家庭の両立を支援する企業向け制度です。ここでは、制度の目的と背景、対象となる事業主について解説します。
制度の目的と背景
両立支援等助成金は、従業員が育児・介護・不妊治療などのライフイベントと仕事を両立できる職場環境の整備を目的とした助成金です。制度を活用することで、離職防止や人材の定着を図り、企業の持続的な成長につながります。
対象となる事業主
両立支援等助成金は、主に中小企業事業主が対象です。助成金の中小企業の範囲は以下の通りです。
| 資本金額または出資総額の要件 | 常時雇用する労働者の数 | |
| 小売業(飲食業含む) | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
資本金等のない事業主については、常時雇用する労働者の数で判定します。
※育休中等業務代替支援コース(手当支給等)については、常時雇用する労働者の数が300人以下又は上記の「資本金または出資額の要件」の事業主が対象となります。
また、各コース共通して、以下の要件を満たす必要があります。
- 雇用保険適用事業所であること
- 就業規則などの社内制度が整備されていること
- 対象従業員が実際に制度を利用していること
- 必要書類を整備・保管し、労働局の調査に応じられること
まずは自社が対象となるかどうか確認してください。
両立支援等助成金4つのコースとは?

両立支援等助成金は、目的別に複数の支援コースで構成されています。それぞれの目的や対象を整理すると、制度の全体像を理解しやすくなります。
| コース名 | 主な目的 | 支給対象 |
| 育児休業等支援コース | 育休取得と職場復帰の支援 | 育休取得・復帰・代替体制 |
| 介護離職防止支援コース | 介護による離職防止 | 介護休業・両立制度・代替要員 |
| 出生時両立支援コース | 男性の育休取得促進 | 男性の育休取得・取得率向上 |
| 不妊治療両立支援コース | 女性の健康課題支援 | 不妊治療・月経・更年期対応 |
次から、各コースの内容や支給金額、申請要件についてわかりやすく解説していきます。
育児休業等支援コースの内容と要件
育児休業等支援コースは、育休取得から復帰までを支援する制度です。育休取得や復帰支援の体制を整えることで、企業に対して助成金が支給されます。
育児休業等支援コースの支給金額は、大きく以下の3つに分かれています。
- 育休取得時:30万円
- 職場復帰時:30万円(継続雇用などの要件を満たす場合に支給)
- 業務代替支援:最大140万円または128万円(支援方法により異なる)
それぞれの場面ごとに支給される仕組みになっており、育休の「取得・復帰・代替体制」まで一貫して支援される点が特徴です。
主な申請要件は以下の通りです。
| 主な申請要件 | |
| 育休取得時 | ・面談実施・育休復帰支援プラン作成・3ヶ月以上の育休取得・業務引き継ぎ |
| 職場復帰時 | ・復帰前面談の実施・原職等への復帰・復帰後6ヶ月以上の継続雇用 |
| 業務代替支援 | ・就業規則への制度整備・代替労働者への手当制度導入・7日以上の育休取得 |
これらの要件を満たすことで、それぞれの支給対象となります。
業務代替支援には、代替要員の確保方法によって2つの支給パターンがあります。
- 育休代替(新規雇用・手当支給など):最大140万円
- 短時間勤務代替:最大128万円
さらに、代替労働者への手当支給や業務体制整備経費なども加算対象となり、企業の負担軽減を目的とした設計になっています。
介護離職防止支援コースの内容と要件
介護離職防止支援コースは、介護による離職防止を目的とした制度です。仕事と介護の両立を支援する制度の整備が求められます。
介護離職防止支援コースは、大きく3種類に分かれます。
- 介護休業:40万円
- 介護両立支援制度:20万〜25万円
- 業務代替支援:3万〜20万円
それぞれの主な要件を以下にまとめております。
| 主な要件 | |
| 介護休業 | ・5日以上の休業・原職復帰・3ヶ月継続雇用 |
| 介護両立支援制度A | 制度1つ導入+20日以上利用 |
| 介護両立支援制度B | 制度2つ以上導入+うち1つ20日以上利用 |
| 業務代替支援 | ・代替要員の雇用・手当支給 |
業務代替支援の支給額は、以下の形で分かれています。
- 新規雇用・派遣:20万円
- 手当支給(休業代替):50,000円
- 手当支給(短時間勤務代替):30,000円
また、介護離職防止支援コースは「制度の個別周知・環境整備を2つ以上実施した場合」+10万円が支給されます。
※同一労働者の同一介護両立支援制度に係る支給は1回限りとなります。
男性の育児参加を促進する出生時両立支援コース

出生時両立支援コースは、男性の育児休業取得の促進を目的とした制度です。「産後パパ育休」の取得を支援し、家庭と仕事の両立を後押しします。男性の育休取得は企業のイメージ向上や人材確保にもつながります。
本コースは、個人の育休取得を支援する「第1種」と、企業全体の取得率向上を評価する「第2種」に分かれています。
一定の取り組み要件を満たすことで、それぞれ以下の助成金を申請できます。
| 第1種 | 第2種 | |
| 目的 | 男性個人の育休取得 | 企業全体の取得率向上 |
| 支給回数 | 最大3人まで | 1事業主につき1回 |
| 支給額 | 20万円(ひとり目)、10万円(2・3人目) | 60万円 |
| 主な要件 | 出生後8週間以内の育休取得 | 取得率30ポイント以上上昇+50%達成 |
| 併給制限 | 育児休業等支援コースと併給不可 | 第1種との同年度併給不可 |
ひとり目の育休取得前に雇用環境整備措置を4つ以上実施している場合、ひとり目に10万円が加算されます。
対象事業主がプラチナくるみん認定事業主の場合、15万円加算されます。
また、厚生労働省の「両立支援のひろば」サイト上に、自社の育児休業等の取得状況に関する情報を公表した場合、20,000円加算されます。
不妊治療療及び女性の健康課題対応両立支援コース
このコースは、不妊治療や女性の健康課題と仕事の両立を支援します。不妊治療や月経、PMS、更年期といった女性の健康課題と仕事の両立を支援するために、企業の制度整備を促進する助成金です。
このコースでは、以下のような取り組みが求められます。
- 不妊治療のための休暇制度の導入
- 時差出勤や短時間勤務制度の整備
- 相談体制の整備と担当者の選任
- 従業員への制度周知
助成金の支給を受けるには、以下の条件を満たす必要があります。
- 制度を合計5回以上利用していること(1年以内)
- 対象従業員が雇用保険被保険者として雇用されていること
本コースでは、対象となる健康課題ごとに支給されます。
- 不妊治療への両立支援:30万円
- 女性の健康課題対応(月経・PMS):30万円
- 女性の健康課題対応(更年期):30万円
※それぞれ1事業主につき1回限りの支給です。
両立支援等助成金の申請方法と手続きの流れ

助成金は制度整備と実績確認後に申請する流れで支給されます。両立支援等助成金は、制度を整備するだけでなく、実際に従業員が制度を利用した実績を確認したうえで支給されます。申請から支給までの基本的な流れは次のとおりです。
申請から支給までのステップ
- 制度の導入・就業規則の整備
- 従業員による制度の利用
- 支援プランの作成・面談の実施
- 必要書類の準備
- 都道府県労働局へ申請
- 審査後、助成金の支給
申請から支給までは、一般的に2〜3ヶ月程度が目安です。
必要書類の例
- 支給申請書
- 就業規則
- 出勤簿・賃金台帳
- 育児・介護休業に関する申請書
- 支援プランの写し
各コースの主な申請期限
各コースとも、支給要件を満たした日の翌日から2ヶ月以内の申請が基本となります。期限をすぎると受給できないため、スケジュール管理が重要です。
※申請期限は制度改正により変更される可能性があるため、最新情報は厚生労働省の手引きを確認してください。
両立支援等助成金のメリットは?
両立支援等助成金を活用することで、人材の定着や採用力の向上、企業イメージの強化に加え、制度導入に伴う経済的負担を軽減できます。
両立支援等助成金は、企業と従業員の双方に大きなメリットをもたらす制度です。具体的には、以下のような効果が期待できます。
- 人材の定着率向上:離職を防ぎ、優秀な人材を確保できます。
- 採用力の強化:働きやすい企業として求職者からの評価が高まります。
- 企業イメージの向上:社会的責任を果たす企業として信頼性が向上します。
- 経済的負担の軽減:制度導入にかかるコストを補填できます。
助成金は単なる資金援助ではなく、働きやすい職場環境づくりを支援する重要な制度です。
申請時によくある失敗と注意点
助成金申請は制度理解不足や書類不備で不支給になるケースがあります。事前のチェックが成功の鍵となります。
両立支援等助成金は企業にとって大きなメリットがある一方で、要件や申請手続きが複雑であるため、些細なミスが不支給につながる可能性があります。ここでは、申請時によくある失敗とその対策をチェックリスト形式で整理しました。申請前の最終確認として活用してください。
制度整備の不備
就業規則や社内制度が要件を満たしていない場合、助成金は支給されません。
両立支援等助成金では、育児・介護・不妊治療などの両立支援制度を「実際に利用できる形で整備していること」が前提となります。制度が存在していても、就業規則への明記や従業員への周知が不十分な場合は、支給対象外となる可能性があります。
✔ チェックリスト
- □ 就業規則に該当する制度が明記されている
- □ 制度の施行日が適切に設定されている
- □ 労働基準監督署へ就業規則の届出を行っている
- □ 従業員へ制度を周知している(社内通知・説明会など)
書類の記載ミス
申請書類の不備や記載ミスは、不支給や審査の遅延につながります。
両立支援等助成金の申請では、多くの書類を提出する必要があります。記載内容の誤りや添付書類の不足は、審査に大きな影響を与えるため、慎重な確認が求められます。
✔ チェックリスト
- □ 支給申請書の記載内容に誤りがない
- □ 就業規則の最新版を添付している
- □ 出勤簿・賃金台帳の内容が一致している
- □ 支援プランの作成日や実施内容が要件を満たしている
- □ 労働者の同意書や申出書を適切に保管している
- □ 添付書類の漏れがない
スケジュール管理不足
申請期限をすぎると、要件を満たしていても助成金は受給できません。
両立支援等助成金は、各コースごとに「制度導入時期」「支援プラン作成時期」「申請期限」などが細かく定められています。これらのスケジュールを正確に把握していない場合、不支給となるリスクが高まります。
✔ チェックリスト
- □ 支援プランを適切な時期に作成している
- □ 育児休業・介護休業の取得期間が要件を満たしている
- □ 職場復帰後の継続雇用期間を確認している
- □ 各コースの申請期限を把握している
- □ 社内でスケジュール管理表を作成している
要件の誤認
助成金の要件を正しく理解していないことが、不支給の大きな要因となります。
両立支援等助成金はコースごとに細かな要件が設定されており、「対象となる従業員」「休業期間」「制度利用の条件」などを誤って解釈してしまうケースが少なくありません。
✔ チェックリスト
- □ 雇用保険被保険者であることを確認している
- □ 対象となる休業期間を満たしている
- □ 支給対象となる企業規模を理解している
- □ コースごとの個別要件を把握している
- □ 最新の制度内容を確認している
助成金申請を成功させるための対策
両立支援等助成金の申請を成功させるためには、以下の対策が必要です。
- 早期の制度整備
- 書類のダブルチェック
- スケジュール管理の徹底
- 最新情報の確認
- 専門家への相談
これらの対策を実践することで、両立支援等助成金の申請をより確実でスムーズに進められます。
社会保険労務士に相談するメリット

両立支援等助成金の申請は、制度の理解や書類作成が必要となるため、専門的な知識が求められます。社会保険労務士に相談することで、以下のようなメリットがあります。
- 最新制度に基づいたアドバイスが受けられる
- 申請手続きの負担を軽減できる
- 受給可能性を高められる
- 不備による不支給リスクを回避できる
専門家のサポートを活用することで、両立支援等助成金の申請はより確実でスムーズになります。
みんなのQ&A
中小企業以外でも申請できますか?
両立支援等助成金は一部のコースで大企業も申請可能です。 ただし、多くのコースは中小企業向けに設計されており、助成額や要件が異なる場合があります。申請前に最新の制度内容を確認してください。
申請から支給までどれくらいかかりますか?
申請から支給までは一般的に数ヶ月程度かかります。 審査期間は申請内容や労働局の状況によって異なり、書類不備があると遅れる可能性があります。余裕を持ったスケジュールで準備しましょう。
複数のコースを同時に申請できますか?
要件を満たせば複数のコースを併用して申請できます。 ただし、同一の取組や対象者については併給できない場合があります。各コースごとに申請手続きが必要なため、事前確認が必要です。
まとめ:両立支援等助成金の申請は専門家のサポートで安心
両立支援等助成金は、専門家の支援を受けることでスムーズかつ確実に受給できる制度です。
両立支援等助成金は、育児・介護・男性の育休取得・不妊治療と仕事の両立を支援する4つのコースから成り、企業の制度整備と実績に応じて受給できます。この助成金を活用することで、従業員が安心して働き続けられる環境を整備でき、人材の定着や企業価値の向上につながります。
申請には制度の正確な理解と計画的な準備が不可欠です。社会保険労務士などの専門家のサポートを受けることで、書類不備や要件誤認による不支給リスクを抑え、申請手続きを円滑に進めやすくなります。企業の持続的な成長のためにも、積極的な活用を検討してみてはいかがでしょうか。