中小企業新事業進出補助金は、中小企業の新市場への進出や高付加価値化を支援する制度です。
制度の概要や個人事業主でも対象になるのか知りたい、という方も多いのではないでしょうか。
2026年の公募要領やスケジュール、採択結果なども注目されています。
本記事では、対象条件から上限額、事務手続きまでをわかりやすく解説します。
中小企業新事業進出補助金とは|概要を解説

新事業進出補助金の全体像や対象となる事業内容について、ポイントを整理して解説します。
出典:中小企業庁(https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/r7/shinjigyo_shinsyutsu.pdf)
新事業進出補助金制度の基本概要
中小企業新事業進出補助金は、既存事業とは異なる分野へ挑戦する中小企業を対象に、設備投資などを支援する制度です。
本制度は、経済産業省および中小企業庁の方針に基づき、中小企業基盤整備機構が運営しています。
補助対象となる事業内容
補助対象となるのは、自社にとって新たな製品やサービスを、新たな市場や顧客に提供する事業です。
単なる事業拡大ではなく、これまでとは異なる領域への進出である点が特徴です。
補助金の目的と背景
中小企業新事業進出補助金は、既存事業に依存した経営から脱却し、新たな成長分野への挑戦を促進する制度です。
近年は市場の成熟や競争の激化により、従来のビジネスモデルだけでは収益の維持・拡大が難しくなっています。
こうした状況を踏まえ、新市場への進出や高付加価値化を支援し、生産性向上や賃上げにつなげることを目的としています。
新事業進出補助金の上限額・補助率・対象経費

中小企業新事業進出補助金では、補助上限額や補助率、対象となる経費の範囲もあらかじめ決められています。
ここでは、それぞれの金額や条件、具体的な内容について解説します。
補助金の上限額
中小企業新事業進出補助金の上限額は、従業員数に応じて段階的に設定されており、企業規模に応じた支援が受けられる仕組みです。
具体的な上限額は、以下のとおりです。
| 従業員数 | 補助上限額(通常) | 補助上限額(賃上げ特例適用時) |
| 20人以下 | 2,500万円 | 3,000万円 |
| 21〜50人 | 4,000万円 | 5,000万円 |
| 51〜100人 | 5,500万円 | 7,000万円 |
| 101人以上 | 7,000万円 | 9,000万円 |
補助上限額は、従業員数に応じて2,500万円〜7,000万円です。
さらに、賃上げ特例の要件として、給与支給総額を年平均3%以上増加させるなどの条件を満たす場合には、補助上限額が3,000万円〜9,000万円に引き上げられます。
なお、補助下限額は750万円とされており、小規模な投資では対象にならない可能性があります。
例えば、補助率が2分の1の場合、少なくとも約1,500万円以上の投資が必要となる点に注意が必要です。
補助率と自己負担の考え方
新事業進出補助金の補助率は、以下のとおりです。
| 区分 | 補助率 |
| 原則 | 1/2 |
| 地域別最低賃金引上げ特例適用 | 2/3 |
補助率は原則として2分の1とされており、事業にかかる費用の半分は自己負担となります。
例えば、2,000万円の設備投資を行う場合、補助金は最大1,000万円程度となり、残りは自社で負担する必要があります。
地域別最低賃金引上げ特例の適用を受ける場合は、補助率が3分の2となり、負担を抑えることが可能です。
また、補助金は後払いで支給されるため、事業実施時にはいったん全額を立て替える点に注意しましょう。
補助対象経費の例
補助対象となる経費には、以下の費用が含まれます。
- 機械装置・システム構築費
- 建物費(工場や施設の建設など)
- 運搬費
- 技術導入費
- 知的財産権などの関連経費
- 外注費(加工・設計など)
- 専門家経費
- クラウドサービス利用費
- 広告宣伝・販売促進費
これらはすべて新規事業に直接関連する費用であることが前提となります。
なお、既存事業にかかる経費は対象外です。
出典:中小企業基盤整備機構(https://shinjigyou-shinshutsu.smrj.go.jp/docs/shinjigyou_hojo_tebiki.pdf)
対象者と申請条件|個人事業主の申請可否

中小企業新事業進出補助金は、事業規模や事業内容など一定の要件を満たす事業者を対象とした制度です。
ここでは、対象となる中小企業の条件や個人事業主の申請について解説します。
出典:中小企業基盤整備機構(https://shinjigyou-shinshutsu.smrj.go.jp/docs/shinjigyou_oubo_guide_4.pdf)
対象となる中小企業の条件
本補助金の対象は、日本国内に本社および事業実施場所を有する中小企業等です。
具体的には、業種ごとに定められた資本金または従業員数の基準を満たす必要があります。
主な基準は以下のとおりです。
| 業種 | 資本金 | 従業員数 |
| 製造業・建設業・運輸業 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| サービス業(ソフトウェア業等を除く) | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| ゴム製品製造業 | 3億円以下 | 900人以下 |
| ソフトウェア業・情報処理サービス業 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 旅館業 | 5,000万円以下 | 200人以下 |
| その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
また、企業だけでなく、企業組合や協同組合、一般社団法人、一般財団法人なども一定の条件を満たせば対象となります。
なお、業種によっては上記とは異なる基準が適用される場合もあるため、詳細は公募要領で確認することが重要です。
個人事業主の申請について
本補助金は、法人だけでなく個人事業主も申請可能です。
実際に、公募要領では「会社または個人」が対象として明記されており、一定の条件を満たせば個人事業主も補助対象に含まれます。
ただし、法人と同様に、上記の表で示した中小企業の基準(資本金または従業員数)を満たしていることが前提となります。
対象外となるケース
以下のいずれかに該当する場合は、要件を満たしていても補助対象外となる可能性があります。
- 他の類似補助金に直近で採択されている、または事業実施中である場合
- 過去に補助金の不正受給や重大な違反があった場合
- 事業実態がない、または新規事業の要件を満たしていない場合
- みなし大企業に該当する場合
本補助金では、事業内容だけでなく、申請者の状況や過去の実績なども含めて総合的に審査されます。
そのため、上記以外にも、公募要領に定められた条件に該当する場合は補助対象外となる可能性があります。
対象かどうかのチェックポイント
申請を検討する際は、以下のポイントを確認しましょう。
- 中小企業の基準を満たし、日本国内に本社および事業実施場所を有する法人または個人事業主である
- 新たな市場・分野への進出である
- 付加価値の向上が見込まれる
- 一定の賃上げや賃金水準の引上げを行う
- 制度上の条件(金融機関・ワークライフバランスなど)に対応している
各要件には具体的な基準や計算方法が定められており、詳細は公募要領で確認できます。
賃上げや最低賃金に関する要件は、目標未達の場合に補助金の返還義務が生じる可能性があるため、無理のない計画を立てることが大切です。
採択率と採択されるポイント

新事業進出補助金は、申請すれば必ず採択されるわけではなく、審査を意識した事業計画が求められます。
ここでは、採択率の目安と採択される事業の特徴を解説します。
採択率の目安
新事業進出補助金の採択率は、過去の実績から見ると3〜4割程度となっています。
第1回公募では、応募件数3,006件に対して採択件数は1,118件であり、採択率は約37%でした。
また、第2回公募では、応募件数2,350件に対して採択件数は832件であり、採択率は約35%です。
採択される事業の特徴
採択される事業には、いくつかの共通した特徴があります。
- 新たな市場・分野への進出である
- 付加価値の向上が見込まれる
- 既存事業との差別化が図られている
- 実現可能性の高い事業計画となっている
これらは、公募要領や新事業進出指針においても重視されており、採択されるためのポイントといえます。
新規性・付加価値・実現可能性をバランスよく示すことが重要です。
申請から交付決定までの流れと事務手続き

新事業進出補助金の申請の流れは、以下のとおりです。
- 事業計画の作成・事前準備
- 申請手続き・書類提出
- 審査・交付候補者の決定
- 交付申請・交付決定
- 補助事業の実施
- 実績報告・補助金の受領
各ステップについて詳しく解説します。
事業計画書の作成・事前準備|ステップ①
まずは、事業計画の作成・事前準備です。
新規事業の内容を整理し、公募要領で求められる要件を満たした事業計画を策定します。
事業計画では、新市場への進出や高付加価値化に加え、付加価値額の成長や賃上げなどの目標を具体的に設定します。
また、事業の実現可能性や収益性、競争優位性などを、根拠となるデータをもとに説明することが重要です。
あわせて、電子申請に必要なGビズIDの取得や、見積書などの必要書類の準備も事前に進めます。
申請手続き・審査|ステップ②〜③
申請は、電子申請システムを通じて行われ、事業計画書や必要書類の提出により審査が実施されます。
審査では、事業の新規性や市場性、実現可能性などが総合的に評価されます。
審査結果に基づき交付候補者が決定されますが、この段階ではまだ正式な交付決定ではありません。
その後の手続きを適切に進める必要があります。
採択後の流れ|ステップ④〜⑥
交付申請を行い、内容の確認を経て正式な交付決定を受けます。
交付決定後は、事業計画に基づいて設備投資やシステム導入などの補助事業を実施していきます。
事業完了後は実績報告や確定検査が行われ、補助金額の確定を経て、最終的に補助金が支払われる流れです。
2026年の公募要領とスケジュール
2026年新事業進出補助金(第4回公募)のスケジュールは、以下のとおりです。
- 公募開始:2026年3月27日
- 申請受付開始:2026年5月19日
- 申請締切:2026年6月19日18時
- 採択結果公表:2026年9月頃
申請締切後は書面審査や必要に応じた口頭審査が行われ、交付候補者が決定されます。
公募要領とスケジュールを事前に確認し、余裕をもって準備を進めることが大切です。
事務手続きのポイントと必要書類
申請や交付手続きでは、公募要領や手引きに基づき、期限や手続きの順序を正確に守ることが求められます。
特に、交付決定前に契約や発注を行った経費は補助対象外となるため、事業開始のタイミングには注意が必要です。
また、事務手続きでは各段階ごとに必要となる書類が異なります。
主な必要書類は、以下のとおりです。
| 手続きの段階 | 主な必要書類 |
| 申請準備・事業計画書の作成 | 事業計画書、労働者名簿、納税証明書等【法人の場合】決算書、法人事業概況説明書【個人事業主の場合】確定申告書、収支内訳書 |
| 申請手続き | 申請書(電子申請)、補足資料などの各種添付書類 |
| 採択後(交付申請・実施・報告) | 見積書(複数社)、契約書、発注書、納品書、請求書、支払証憑、実績報告書、成果物 |
法人と個人事業主では、提出書類が異なります。
金融機関から資金提供を受ける場合や、賃上げ・最低賃金に関する特例や加点を申請する場合には、確認書や賃金台帳などの追加書類が必要になります。
書類に不備があると、審査や補助金の支払いに影響する可能性があるため、事前に要件を確認したうえで整理・準備を進めることが重要です。
出典:中小企業基盤整備機構(https://shinjigyou-shinshutsu.smrj.go.jp/docs/shinjigyou_tempusyorui_4.pdf)
中小企業新事業進出補助金に関するよくある質問(Q&A)
Q. 個人事業主でも申請できる?
A. 個人事業主も申請可能です。
一定の要件を満たしていれば、個人事業主でも補助対象となります。
Q. 交付決定前に契約・発注しても問題ない?
A. 交付決定前の契約・発注は補助対象外です。
事業の開始時期や発注のタイミングには十分注意しましょう。
Q. 申請は難しい?初心者でもできる?
A. 申請自体は可能です。
ただし、事業計画書の作成や要件の整理など専門的な対応が求められるため、初めての場合は難しく感じることがあります。
採択を目指すには、審査ポイントを意識し、必要に応じてコンサルタントなど専門家の支援を活用することも有効です。
まとめ|中小企業新事業進出補助金を活用するために今すぐ確認したいポイント
中小企業新事業進出補助金は、新市場への進出や高付加価値化を支援する制度であり、活用することで事業成長の大きな後押しとなります。
個人事業主も対象となっており、2026年の公募要領とスケジュールを踏まえた早めの準備が重要です。
採択を目指すには、要件を満たすだけでなく、新規性・成長性・実現可能性を意識して事業計画を整理することが重要です。
また、申請手続きや必要書類の準備には専門的な確認が必要となるため、不安がある場合は専門家への相談も有効です。
制度の詳細や、補助金活用に伴う労務面・賃上げ対応・実施体制の整理に関するご相談は、当事務所のウェブサイトよりお気軽にお問い合わせください。