労務管理士の取得を検討してインターネットで情報を集めていると、「意味ない」「取っても無駄」といった声を目にすることがあります。民間資格であるがゆえに社会保険労務士(社労士)と比較されやすく、独占業務を持たないことが批判の的になりがちです。

では、実態はどうなのでしょうか?本記事では、労務管理士が「意味ない」といわれる理由を客観的に整理し、その有効性や取得メリットを確認していきます。

「労務管理士は意味ない」といわれる理由

「労務管理士 意味ない」で検索すると、ネガティブな声がずらりと並びます。なぜここまで厳しい評価が多いのか、その背景には資格の制度的な特徴が関わっています。

民間資格であり独占業務がない

労務管理士が「意味ない」と評される最大の理由は、民間資格であるため法律上の独占業務がないことです。独占業務とは、「その資格を持っている人だけがおこなえる仕事」をいいます。

たとえば、国家資格の社労士(社会保険労務士)には、労働・社会保険に関する書類等の作成代行や提出代行、労務管理や労働保険・社会保険に関する相談などの業務があります。一方、労務管理士にはこうした法律上の根拠がないため、「わざわざ取得する意味はあるの?」と疑問を持たれやすいのが実情です。

ただし、独占業務を持たない資格でも実務で高く評価されているケースは珍しくありません。たとえばTOEICやMOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)は民間資格ですが、就職・転職の場面で広く評価されています。「独占業務がない=意味がない」とは必ずしもいえません。

誰でも取れる資格というイメージ

労務管理士の受験資格は「満20歳以上」のみで、学歴や実務経験の条件はありません。Web資格認定講座の受講料は8,000円、合格基準点は70点以上と、取得のハードルが低めに設定されています。

ただ、資格の難易度と、実務での有用性は必ずしも比例しません。実務経験が浅い方や他部署から異動してきたばかりの方が、短期間で労務管理の基礎をひと通り学べるのはメリットです。

排除命令問題と「怪しい」という印象

労務管理士について調べると、「怪しい」という声が目に入ることがあります。この不信感の多くは、2007年の排除命令問題に由来しています。

2007年6月、当時労務管理士の認定をおこなっていた株式会社日本経営経理指導協会(大阪府阪南市)が、公正取引委員会から景品表示法違反(優良誤認)で排除命令を受けました。

同社は新聞折込チラシで「全資連の検定試験により公認される」などと表示していましたが、「全資連」は実在しない架空の団体名でした。民間資格にもかかわらず公的資格であるかのように見せていた点が問題とされ、同団体は同年9月に解散しています。

現在の認定団体は、排除命令を受けた組織とは別物です。過去の問題と現在の制度は切り離して、自分のキャリアに必要かどうかで判断しましょう。

「意味ない」は間違い?労務管理士資格の価値

ここまでネガティブな声を見てきましたが、労務管理士を取得して実務に活かしている人も少なくありません。「意味がない」の裏側に隠れている価値を、ここからは掘り下げていきます。

労働基準法・労働関係法令の知識が身につく

労務管理士のカリキュラムでは、労働契約、賃金、労働時間、休日・休暇、安全衛生といった労働関係法令の基礎を体系的に学べます。人事・総務の実務を通じて断片的に覚えた知識を、法令の全体像のなかで整理し直せるのが魅力です。

近年は働き方改革や同一労働同一賃金、ハラスメント防止法の強化など、労務関連の法改正が相次いでいます。改正のたびに個別対応するだけでは抜け漏れが出やすいため、基礎を今一度押さえることで、新しいルールを把握しやすいでしょう。

仕事内容に直結する実務スキル

学んだ知識を日々の業務にそのまま持ち込める点も、労務管理士の実務的な強みです。労働契約の締結、就業規則の管理、社会保険・労働保険の手続き、給与・賞与の計算など、人事・総務部門の業務を法的根拠とセットで理解しやすくなります。

「資格を取っただけでは意味がない」と指摘されることもありますが、学んだ知識を実務に反映できれば問題ありません。たとえば、就業規則の見直しや労働条件の変更対応の場面で、法的根拠を踏まえた判断ができれば、上司や関係部署への説明に説得力が生まれるでしょう。

社会保険労務士(社労士)との違いと棲み分け

労務管理士と社労士は名称が似ているため、「どう違うの?」と戸惑う方も少なくありません。両者の違いを表で確認しましょう。

比較項目社会保険労務士(社労士)労務管理士(2級)
資格区分国家資格民間資格
所管・認可厚生労働省一般社団法人日本人材育成協会
独占業務あり(社会保険手続き・帳簿作成など)なし
合格率直近5年で5.3%前後非公表(講座受講前提)
受験資格学歴・実務経験・他資格合格のいずれか1つ満20歳以上(学歴不問)
活用範囲企業内+独立開業企業内での活用が中心
取得費用目安数万〜数十万円(通信講座・予備校含む)8,000〜20,000円

両者の最大の違いは、社労士だけが持つ独占業務の有無です。

先述のとおり、社会保険手続きや帳簿作成を業務として請け負えるのは社労士に限られ、独立開業を目指す場合は社労士資格が必須となります。ただし、合格までに800〜1,000時間程度の学習が必要ともいわれており、働きながら短期間で取得できる資格ではありません。

反対に労務管理士は独占業務こそありませんが、企業内で労務管理の基礎を短期間で身につけるための資格です。「社労士を目指すほどの時間はなかなか取れないけれど、労務管理の知識はしっかり学んでおきたい」と考える方にとって、労務管理士の取得には確かな意義があるでしょう。

労務管理士の資格を活用できる場面

労務管理士の知識は、取得後にどう活かすかで価値が変わります。ここでは、転職・社内評価・日常業務の3つの場面に分けて、具体的な活用方法を確認しましょう。

転職・就職活動でのアピール材料

人事・総務の分野では、実務経験に加えて「専門知識をきちんと学んでいる」と示せると、採用担当者の目に留まりやすくなります。とくに、未経験から人事・総務への転職を目指す方にとって、労務管理士は「基礎知識がある」と伝えられる武器になります。求人サイトでも「労務管理に関する資格保有者歓迎」と記載されているケースは珍しくありません。

もちろん、資格だけで採用が決まるわけではありません。面接では「何を学び、どう活かしたいか」まで自分の言葉で語れるかが大切です。

キャリアアップと資格手当の可能性

企業によっては、資格取得者に資格手当を支給していることがあります。労務管理士に特化した相場データは公表されていませんが、民間資格の資格手当は月額3,000〜20,000円程度が一つの目安です。支給の有無や金額は企業ごとに異なるため、勤務先の制度をあらかじめ確認しておきましょう。

また、昇進・異動で評価されるのは、資格そのものよりも「学んだ知識を使ってどんな成果を出したか」です。就業規則の改定プロジェクトで中心的な役割を果たしたり、労働基準監督署の調査対応を任されたりと、「知識が実績に変わった場面」で周囲の見る目が変わります。

管理職としての労務知識の証明

部下を持つ管理職にとって、労務管理の知識は避けて通れないテーマです。労働時間の管理やハラスメント防止、メンタルヘルス対策など、「管理職だから知っておいてほしい」と言われる場面は年々増えています。

管理職自身が労務管理士を取得しておけば、法令の基礎を学んでいることの証明にもなりますし、部下からの相談に根拠を持って答えられるようになります。

労務管理士の取得をおすすめできる人

労務管理士は、立場によって活用の幅が変わる資格です。なかでも、以下3つのタイプは取得による効果を実感しやすい立場といえます。

人事・総務の実務に活かしたい人

人事・総務部門で働いている方は、学んだ知識をそのまま日常業務に反映できます。業務の全体像を先につかんでおくと、「この手続きはなぜ必要か」「法的なルールはどうなっているか」といった場面で、根拠を持って対応できるでしょう。

管理職として労務知識を身につけたい人

人事・総務以外の部署で管理職を務める方は、労務知識を求められる場面が多いわりに、学ぶ機会が限られがちです。部下の残業申請の判断や育児休業の相談対応など、管理職研修だけではカバーしにくいテーマも少なくありません。

資格学習で基礎を押さえておくと、業務判断に法的な裏づけを持てるようになります。部下や人事部門とのやり取りをスムーズに進められるはずです。

学習コストを抑えて労務の基礎を学びたい人

社労士試験は、通信講座や予備校を含めて数万〜数十万円の費用と長期間の学習が必要になります。忙しい日々のなかでこの負担を引き受けるのは、決して簡単ではありません。

労務管理士であれば、Web資格認定講座8,000円、公開認定講座10,000円、通信講座20,000円と、費用を大幅に抑えて学べます。

「まずは全体像をつかんでおきたい」「将来的に社労士を目指すにしても、まずは基礎を固めたい」と考えている段階であれば、費用対効果の高い資格といえます。

労務管理士の取得を見送ってもよい人

労務管理士は企業内での活用を前提に設計された資格であり、目的によっては別の資格や方法を選ぶほうが効率的です。以下に当てはまる方は、取得を急がず、ほかの選択肢と比較してから判断してみてください。

独占業務のある国家資格を目指す人

独立開業や、社会保険の手続き代行といった独占業務をおこなうには、社労士資格の取得が必要です。これらは法律で社労士にのみ認められた業務であり、労務管理士の資格では対応できません。もっとも、社労士試験に向けた基礎固めとして、労務管理士資格の取得を目指すのは有効です。

転職の決め手だけを求めている人

「この資格さえ取れば転職できる」と期待して取得しても、採用の現場で重視されるのは資格よりも実務経験です。労務管理士だけで書類選考を突破するのは、現実的には難しいでしょう。資格そのものの効果を求めるよりも、学んだ知識を実務でどう活かすかに意識を向けてみてください。

よくある質問

労務管理士の取得を検討するなかで、よくある疑問をまとめました。

労務管理士は履歴書に書ける?

労務管理士は民間資格ですが、履歴書の資格欄に記載できます。記載する際は「2級労務管理士(一般社団法人日本人材育成協会認定)」のように、認定団体名もあわせて書くと正確さが増します。

資格を登録しないとどうなる?

試験に合格しただけでは、正式な資格保有者として認定されません。合格後に資格登録の手続きをおこなうと、登録證・認定書・身分証明書・バッジの4点が交付されます。

登録しなければ対外的に資格を証明する手段がないため、履歴書への記載を考えている方は合格後に忘れず手続きを済ませておきましょう。

労務管理士の費用はどのくらい?

取得にかかる費用は、取得方法によって異なります。

取得方法費用特徴
Web資格認定講座8,000円オンライン完結・最も手軽
公開認定講座10,000円講師から直接指導を受けられる
通信講座20,000円自分のペースで学習可能
書類審査20,000円実務経験3年以上+労務管理士資格取得者の推薦が必要
1級昇級審査20,000円2級合格後にステップアップ

上記は受講・受験にかかる費用です。合格後に正式な登録をおこなう場合は、別途登録料20,000円と月会費1,000円が発生します。登録は任意ですが、社労士の受験手数料(15,000円)や予備校費用と比べると、登録料を含めてもトータルの負担は抑えめです。

まとめ:労務管理士の価値は活かし方で決まる

労務管理士が「意味ない」といわれる背景には、独占業務がないことや過去の排除命令問題があります。批判の根拠は理解できますが、労働関係法令の基礎を効率よく学べる実用性まで否定されるものではありません。

労務管理士は、働きながらでも短期間で取得を目指せる資格です。労務管理の実務や関連制度について詳しく知りたい方は、公式ウェブサイトの関連コラムもあわせてご覧ください。

参照:

厚生労働省「労働基準関係リーフレット」

一般社団法人日本人材育成協会「労務管理士受験方法」

公正取引委員会