飲食店の開業や改装には、厨房設備の入れ替えや内装工事、POSレジの導入など、まとまった費用がかかります。こうした初期投資の負担を軽減する手段として注目されているのが、国や自治体が設けている補助金・助成金です。

この記事では、飲食店の開業や設備投資、改装などの目的別に活用できる補助金・助成金を整理し、申請の流れや注意点まで解説します。

飲食店が活用できる補助金・助成金とは

補助金・助成金は、国や地方自治体が中小企業や個人事業主の事業活動を支援するために交付する資金のことです。融資とは異なり返済の必要がなく、開業資金や設備投資の負担を抑える手段として多くの飲食店経営者に活用されています。

補助金・助成金・融資の違い

補助金と助成金は混同されやすい言葉ですが、性質には違いがあります。

項目補助金助成金融資
返済義務なしなしあり
財源税金(予算枠あり)主に雇用保険料金融機関の貸付金
受給の難易度審査があり不採択もある要件を満たせば受給しやすい審査基準を満たせば借入可能
入金タイミング事業完了後の後払いが基本要件達成後契約時にまとまって入金

補助金は、事業計画などの審査を経て、採択された事業者が受け取れる仕組みです。そのため、公募のタイミングや事業計画の内容、審査基準への適合度などが採否を左右します。

雇用や労働環境の改善を目的とする助成金は、定められた要件を満たすことで受給できる可能性があります。ただし、申請内容や提出書類の確認されるため、要件を満たせば必ず支給されるとは限りません。

融資は返済を前提とする資金調達方法ですが、補助金や助成金とは異なり、事業を始める前に資金を調達できる場合があります。開業直後で実績が少ない事業者は、日本政策金融公庫などの創業者向け融資制度も選択肢となるでしょう。

資金計画を立てる際は、この3つを組み合わせて検討することをおすすめします。

飲食店の補助対象になりやすい経費

飲食店が補助金を申請する際、対象になりやすい経費には共通した傾向があります。

  • 厨房機器やレジなどの機械装置費
  • 内外装工事にかかる建物費・改修費
  • チラシやウェブサイト制作などの広報費
  • 専門家へのコンサルティング費用
  • システム導入にかかるクラウド利用料

家賃や光熱費などの運転資金、消耗品や食材の仕入れ費用は、補助対象外となるケースが多いため、事前の確認が欠かせません。

対象経費の範囲は制度ごとに異なります。見積書を用意する段階で、記載する費用が補助対象に含まれるかどうかを確認しておくとよいでしょう。

飲食店の開業に使える補助金・助成金一覧

飲食店の開業に使える補助金・助成金一覧

開業のタイミングで使える補助金は複数あり、開業前の準備段階から申請できるものと、開業後の実績が必要なものに分かれます。ここでは、飲食店の開業に使える代表的な補助金・助成金について解説します。

小規模事業者持続化補助金|店舗改装や販路開拓に活用できる

小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が行う販路開拓や、それに伴う生産性向上の取り組みを支援する制度です。飲食店の場合は、原則として常時使用する従業員が5人以下であれば対象となります。

補助上限額は、一般型・通常枠で50万円です。また、創業から間もない事業者などを対象とする創業型では、補助上限額が200万円に引き上げられます。

販路開拓につながる店舗改装費に加え、ウェブサイト制作費や新メニューの試作にかかる費用なども、要件を満たせば補助対象となる場合があります。そのため、創業後の集客やブランディングにも活用を検討しやすい制度です。

ただし、創業型を利用するには、開業日や特定創業支援等事業による支援を受けた日が、公募締切時から起算して過去1年以内であることなどの要件があります。申請を検討する場合は、早めに最新の公募要領を確認しましょう。

参照元

【公式】小規模事業者持続化補助金【2026年最新版】

自治体の創業補助金・助成金|内装工事や設備導入を支援

国の補助金に加えて、都道府県や市区町村が独自に実施している創業支援の補助金・助成金も見逃せません。地域によって名称や内容は異なりますが、店舗の内装工事費や什器の購入費、賃借料の一部を助成する制度があります。

自治体の制度には、地域の商店街活性化や空き店舗対策を目的としたものも多く、対象地域内での開業が利用条件となっている場合があります。また、募集期間が短い制度や、申請額が予算の上限に達した時点で受け付けを終了する制度もあるので、注意が必要です。

「もう募集していなかった」という事態を避けるため、開業を予定しているエリアの商工会議所や自治体の産業振興課へ早い段階で問い合わせておくと安心です。

外国人が日本で飲食店を開業する場合も補助金を利用できる?

外国人が日本国内で飲食店を開業する場合でも、補助金ごとに定められた要件を満たせば、国や自治体の制度に申請できる可能性があります。ただし、対象者の所在地や事業形態などの条件は制度によって異なるため、事前に公募要領を確認しましょう。

また、在留資格が「経営・管理」など、飲食店の経営や事業活動を行えるものであることも前提となります。加えて多くの補助金では、事業計画書や決算書などの申請書類を日本語で作成する必要がある点にも注意しましょう。

飲食店の設備・機器購入に使える補助金

設備投資は飲食店経営における大きな出費のひとつです。機器の種類によって活用しやすい補助金が異なるため、目的に応じた補助金を選ぶように心がけましょう。

エアコン・換気扇などの空調設備に使える補助金

厨房や客席の空調・換気設備は、衛生管理や快適性の観点から重要な投資です。小規模事業者持続化補助金や自治体の改装助成金では、空調設備の入れ替えが対象経費として認められるケースがあります。

とくに老朽化した換気設備は火災予防の観点からも改善が求められやすく、改修工事とあわせて申請することで補助対象に含めやすくなります。

ただし、老朽化した設備を単に入れ替えるだけでは、補助対象外となる可能性があります。制度の目的や対象経費を確認し、事業計画書に必要な要点を盛り込むように心がけましょう。

冷蔵庫・製氷機・食洗機などの厨房設備に使える補助金

冷蔵庫や製氷機、食洗機といった厨房機器は、事業に直接使用する機械装置として多くの補助金で対象経費に含まれています。

小規模事業者持続化補助金では、生産量や販売量の拡大を目的とした冷凍冷蔵庫やオーブンなどが対象経費の例として挙げられています。ものづくり補助金についても、革新的な新商品・新サービスの開発に必要な厨房設備であれば、対象となる可能性が高いです。

老朽化した機器を省エネ性能の高いものへ更新する場合、光熱費の削減効果も見込めるため、事業計画書には数値的な効果を盛り込むと採択されやすくなります。

参照元

トップページ|ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金公式ホームページ ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金総合サイト

POSレジ・券売機・モバイルオーダーに使える補助金

POSレジや券売機、モバイルオーダーシステムを導入する際は、IT関連の補助金を活用できる場合があります。会計業務のデジタル化やインボイス制度への対応を目的とした補助金では、システムの導入費用に対して比較的高い補助率が設定されている点が特徴です。

人手不足に悩む飲食店にとって、注文受付から会計までの業務を効率化できるITツールは、導入を優先的に検討したい設備の一つといえるでしょう。

ただし、補助対象となるのは登録されたITツールに限られ、POSレジや券売機などの機器だけでは申請できない点には注意しましょう。

配膳ロボットや自動調理機器に使える省力化投資向け補助金

配膳ロボットや自動精算機、スチームコンベクションオーブンなどの省力化機器は、人手不足の解消や業務効率化を目的とする補助金の対象となる場合があります。カタログ注文型の制度では、あらかじめ登録された対象製品から選んで申請することもあり、導入する製品や手続きの流れが分かりやすい点が特徴です。

補助上限額は申請時点の従業員数に応じて設定されるため、自社が申請できる金額や補助率を事前に確認しておきましょう。

飲食店の改装・リフォームに使える補助金

飲食店の改装・リフォームに使える補助金

改装工事は内容によって使える補助金が変わります。工事の目的別に整理しておくと申請の見通しが立てやすくなります。

内装・外装・看板の改修に使える補助金

内装や外装、看板の改修は、店舗の印象を左右する重要な投資です。小規模事業者持続化補助金や自治体の店舗改修助成金では、こうした工事費用が広く対象経費として認められています。

居抜き物件を活用する場合でも、業態転換にともなう改修であれば対象になることが多く、既存の設備をそのまま使う場合よりも補助を受けやすい傾向があります。

トイレの洋式化やバリアフリー改修に使える補助金

トイレの洋式化やバリアフリー改修は、高齢者や障害のある方、車いすを利用する方などが安心して来店できる環境を整えるための投資です。自治体によっては、洋式便器への交換や多目的トイレの設置、段差の解消などが補助対象となる場合があります。

また、バリアフリー化にかかる工事費について、通常の店舗改修よりも補助額を加算している制度もあります。集客力の向上と誰もが利用しやすい店舗づくりを両立するため、改装を予定している場合は、対象地域の支援制度を確認しておくとよいでしょう。

空調・照明・断熱などの省エネ改修に使える補助金

空調設備の更新や照明のLED化、断熱工事などの省エネ改修は、光熱費の削減に直結する投資です。国や自治体が実施する省エネ関連の補助金では、こうした改修費用が手厚く支援される場合があります。

店舗の改装に合わせて省エネ性能を高めておくことで、長期的なランニングコストの削減にもつながります。

飲食店が補助金を申請する流れ

補助金の申請は、以下のような流れで進めるのが一般的です。

  1. 自社の事業計画に合った補助金を選ぶ
  2. 公募要領を確認し、見積書や決算書などの必要書類を準備する
  3. 事業計画書と申請書類を作成し、期限内に提出する
  4. 審査を経て、採択結果と交付決定を確認する
  5. 交付決定後、計画に沿って補助事業を実施する
  6. 事業完了後に実績報告書を提出する
  7. 確定検査や補助金額の確定を経て、補助金を請求・受給する

多くの補助金は後払いであり、実際に入金されるのは、事業の完了後に実績報告や確定検査などの手続きを終えてからです。

そのため、申請から入金までには一定の期間を要します。事業費を一時的に自己資金や融資で立て替える可能性も踏まえ、資金繰りとスケジュールに余裕を持たせることが補助金活用のポイントです。

飲食店が補助金を申請するときの注意点

飲食店が補助金を申請する際は、以下のポイントに注意しましょう。

  • 対象となる業種、事業規模、地域などの申請要件を確認する
  • 厨房機器や内装工事など、補助対象となる経費の範囲を確認する
  • 原則として、交付決定前に契約、発注、支払いを行わない
  • 見積書や領収書、振込明細などの証拠書類を保管する
  • 売上向上や業務効率化につながる具体的な事業計画を作成する
  • 営業許可や食品衛生法・消防法上の要件を確認する
  • 申請期限だけでなく、事業実施期間や実績報告期限も把握する
  • 補助金受給後の税務処理や収益納付の有無を確認する

注意点を確認せずに申請すると、対象外経費の計上や交付決定前の発注、必要書類の不足などによって、不採択や補助金の減額につながるおそれがあります。

さらに、受給後に要件違反が判明した場合は、補助金の返還を求められる可能性があります。資金繰りや出店計画にも影響を及ぼしかねないため、公募要領や交付規程を事前に確認しましょう。

参照元

マンガでわかる「補助金入門①基礎知識」 | 補助金活用ナビ(中小機構)

飲食店の補助金選びから申請まで、無料で相談できます

飲食店向け補助金に関するよくある質問

ここでは、飲食店向け補助金に関するよくある質問をQ&A方式で解説します。

飲食店のトイレを和式から洋式へ改修する場合に使える補助金はありますか

自治体が実施する店舗改修系の補助金・助成金の中には、バリアフリー化を目的とした改修を対象経費に含めているものがあります。トイレの洋式化は該当するケースが多く、店舗改修助成金や創業支援の補助金と組み合わせて申請できることがあります。

制度によって対象範囲が異なるため、募集要領で改修内容が対象経費に含まれるかを確認しておくと安心です。

中古の厨房設備や居抜き店舗の改装費も対象になりますか

中古設備の購入費用や居抜き物件の改装費用が補助対象となるかどうかは、制度によって異なります。業態転換や生産性向上につながる改装工事であれば、補助対象となる場合もありますが、単なる設備の入れ替えや修繕は対象外となる可能性があります。

申請を進める前に、公募要領を確認するとともに、不明点があれば事務局へ問い合わせておきましょう。

補助金と日本政策金融公庫の融資は併用できますか

補助金と融資は性質が異なる資金調達方法のため、基本的に併用が可能です。むしろ、補助金は後払いであることから、工事費用や設備費用を立て替えるつなぎ資金として、補助金と組み合わせるケースは珍しくありません。

事業計画書を作成する段階で、補助金の入金時期と融資の返済計画を合わせて設計しておくと、資金繰りに無理のない開業・改装計画を立てやすくなります。

【まとめ】飲食店の開業・設備・改装に合った補助金を活用しよう

飲食店の開業や設備投資、改装にかかる費用は、補助金・助成金をうまく組み合わせることで大きく軽減できます。補助金は後払いであることや、対象経費が制度ごとに細かく定められている点に注意しながら、開業計画・改装計画に合った制度を早めに選定することが採択への近道です。

事業計画を練り直す機会としても補助金の活用は有効なので、複数の制度を比較しながら自店に合った組み合わせを検討してみましょう。

もし、この記事をきっかけに補助金に関する情報をさらに深く知りたい方がいましたら、社会保険労務士法人グロースアシストをチェックしてみてはいかがでしょうか。

参照元一覧

【公式】小規模事業者持続化補助金【2026年最新版】

トップページ|ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金公式ホームページ ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金総合サイト

マンガでわかる「補助金入門①基礎知識」 | 補助金活用ナビ(中小機構)