設備投資を検討する際、多くの事業者がまず直面するのが、資金確保の課題です。機械の入れ替えや店舗改装、生産ラインの増設には、数百万円から数億円規模の費用がかかることも珍しくありません。

こうした設備投資の負担軽減に役立つのが、補助金をはじめとする支援制度です。この記事では、中小企業や個人事業主が活用できる設備投資向けの補助金を整理し、業種別の活用例や採択の可能性を高める事業計画のポイントまで解説します。

設備投資に使える補助金・助成金とは

設備投資に活用できる補助金・助成金は、機械装置やシステム、店舗設備などの導入にかかる費用の一部を、国や自治体が支援する制度です。対象となる設備には、工作機械やロボットなどの有形固定資産だけでなく、業務システムやソフトウェアなどの無形固定資産が含まれる場合もあります。

なお、生産性の向上や人手不足の解消、賃上げの実現など、制度の政策目的に沿った設備投資であることが、補助や助成を受けるための重要な条件となります。

補助金・助成金・融資の違い

補助金と助成金は、原則として返済不要の資金である点は共通していますが、審査方法や支給要件、主な所管などが異なります。一方、融資は返済が必要ですが、審査に通れば補助金・助成金よりも早い段階で資金を確保しやすいという特徴があります。

項目補助金助成金融資
所管・実施主体経済産業省系厚生労働省系金融機関
返済義務原則なし原則なしあり(利息含む)
審査審査があり要件を満たせば原則として受給できる信用力や事業計画などをもとに審査される
入金タイミング事業完了後の後払い要件達成後の後払い融資実行時に資金を受け取れる

設備投資そのものを直接支援する制度は補助金に多く、助成金では、賃上げや職場環境の改善に伴う設備導入が対象となる場合があります。資金計画を立てる際は、補助金だけで全額をまかなうことは難しいため、自己資金や融資と組み合わせることを前提に考えましょう。

中小企業の生産性向上に使える設備投資補助金・助成金3選

中小企業が生産性向上を目的に設備投資する場合、代表的な選択肢となるのが以下の3つの制度です。

制度名主な目的補助・助成上限の目安
ものづくり補助金(第23次公募)新製品・新サービス開発750万〜3,000万円
中小企業省力化投資補助金(一般型)自動化・省力化最大1億円
業務改善助成金(令和8年度)賃金引き上げに伴う設備改善最大600万円

それぞれ対象経費や補助率が異なるため、投資規模と目的に応じて選びましょう。

参照元

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領 (第23次公募)

中小企業省力化投資補助金

令和8年度業務改善助成金のご案内 

ものづくり補助金

ものづくり補助金は、革新的な新製品・新サービスの開発や海外事業に必要な設備・システム投資などを支援する制度です。製造業に限らず、サービス業を含む幅広い業種の中小企業や小規模事業者が申請できます。

第23次公募では、補助上限額は申請枠や従業員数に応じて750万円から3,000万円で、補助率は中小企業が原則2分の1、小規模企業・小規模事業者が3分の2です。ただし、単に機械装置やシステムを導入するだけでは対象とならず、革新的な新製品・新サービスの開発を伴う必要があります。

中小企業省力化投資補助金

中小企業省力化投資補助金は、人手不足の解消に向けて、自動化・省力化につながる設備やシステムを導入する際に活用できる制度です。個別の現場や事業内容に合わせた設備導入・システム構築を支援する「一般型」と、あらかじめカタログに登録された汎用製品から選んで導入する「カタログ注文型」の2種類があります。

一般型の補助上限額は、従業員数に応じて750万円から8,000万円で、大幅な賃上げに取り組む場合は最大1億円まで引き上げられます。ただし、給与支給総額の増加や事業場内最低賃金の引き上げなどを盛り込んだ事業計画の策定が必要です。

カタログ注文型では、カタログに登録された省力化製品を選び、販売事業者のサポートを受けながら申請できます。

業務改善助成金

業務改善助成金は、事業場内最低賃金を50円以上引き上げ、生産性向上に資する設備投資などを行った中小企業・小規模事業者に対し、費用の一部を助成する制度です。厚生労働省が所管しており、機械・設備の導入に加え、国家資格者による経営コンサルティングや顧客管理情報のシステム化なども対象になる場合があります。

助成上限額は、事業場内最低賃金の引き上げ額や対象となる労働者数、事業場規模などによって異なります。令和8年度の助成上限額は最大600万円で、設備投資などにかかった費用に助成率を掛けた金額と助成上限額のうち、低いほうが支給されます。

個人事業主が使える設備投資補助金・助成金

補助金というと中小企業向けのイメージが強いものですが、個人事業主でも申請できる制度は複数あります。ここでは、個人事業主が使える設備投資補助金・助成金に加え、活用するポイントを解説します。

個人事業主が申請できる補助金・助成金一覧

個人事業主が設備投資や業務効率化に活用できる主な補助金には、以下のような制度があります。

制度名特徴個人事業主が検討する際のポイント
小規模事業者持続化補助金販路開拓や業務効率化に必要な経費の一部を補助広報活動や店舗改装など、販路開拓につながる取り組みに活用できる
ものづくり補助金新製品・新サービスの開発に必要な設備・システム投資などを支援小規模事業者には補助率の優遇措置が設けられている
デジタル化・AI導入補助金2026 業務のデジタル化や生産性向上につながるITツールの導入費用を補助会計・販売管理・顧客管理などの業務システム導入に活用できる

参照元

【公式】小規模事業者持続化補助金【2026年最新版】 

トップページ | デジタル化・AI導入補助金2026 

トップページ|ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金公式ホームページ ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金総合サイト 

制度ごとに対象となる事業者や経費、申請要件が異なります。自社の課題や事業計画に合う制度を比較し、最新の公募要領を確認したうえで申請を検討しましょう。

法人と個人事業主で異なる対象要件

法人の場合は、資本金や従業員数、設立年月日、登記事項などが確認されるのが一般的です。一方、個人事業主の場合は、開業届の提出状況や確定申告の実績、事業の実態などが判断材料となります。

また、同じ制度でも、法人と個人事業主では申請枠や必要書類が異なる場合があります。どちらも対象と記載されていても、自社または自身がすべての申請要件を満たしているとは限りません。

申請時に要件に関するトラブルを避けるためにも、申請前に、最新の公募要領を確認しましょう。

個人事業主が申請前に確認すべきチェックリスト

要件を満たしているか判断できるよう、あらかじめ以下のチェックポイントを確認しておきましょう。

  • 確定申告を法定期限内に行っているか
  • 対象となる業種区分に該当しているか
  • 導入予定の設備が対象経費の区分に含まれているか
  • 見積書を複数社から取得できる体制があるか
  • 利用する制度の公募要領で、発注・契約・購入が可能となる時期を確認したか 

交付決定前の発注や契約を補助対象外としている制度は多いため、利用する制度の公募要領で、事業着手が可能となる時期を確認することが重要です。 事前着手によって補助を受けられなくなるリスクを避けるためにも、公募要領を確認し、余裕を持って申請スケジュールを立てましょう。

業種別に見る設備投資補助金・助成金

設備投資に活用できる補助金・助成金は、業種によって対象となる設備や支援内容が異なります。ここでは、建設業・農業・飲食店・美容室が活用しやすい制度を業種別に紹介し、対象経費や選び方のポイントを解説します。

建設業が使える設備投資補助金

建設業では、ICT施工機器や測量機器、省力化設備など、制度の目的に合った設備の導入に補助金を活用できる場合があります。建設事業者が申請を検討できる主な補助金制度は、以下のとおりです。

  • ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
  • 小規模事業者持続化補助金
  • 中小企業省力化投資補助金

人手不足への対応や作業時間の短縮、生産性向上、安全性の確保を目的とした設備投資は、支援対象になりやすい傾向があります。

ただし、設備の種類だけで補助対象になるとは限りません。中古設備は制度によって対象条件が異なるほか、自動車等の車両や交付決定前に発注・契約・購入した設備は、補助対象外となる場合があります。

農業が使える設備投資補助金

農業分野では、経営規模の拡大や生産性の向上を目的とした農業用機械・施設の導入を支援する制度が設けられています。農業者が活用を検討できる代表的な支援制度は、以下のとおりです。

  • 農地利用効率化等支援事業
  • スマート農業・農業支援サービス事業導入総合サポート事業

対象となる農業者の要件や補助率、対象設備は制度ごとに異なり、既存設備の単純な更新・買い替えだけでは対象とならない場合があります。設備の導入によって、収量をどの程度増やせるか、作業時間をどの程度削減できるかなどを明確にしましょう。

また、市町村や都道府県の農政担当窓口、農業支援機関にも相談しながら申請を進めることが大切です。

参照元

農地利用効率化等支援事業(令和8年度):農林水産省 

スマート農業・農業支援サービス事業導入総合サポート緊急対策事業(令和6年度補正予算)の第4次公募について:農林水産省 

飲食店・美容室が使える設備投資補助金

飲食店や美容室では、厨房機器やシャンプー台、美容機器、省エネ設備、業務システムなどの導入に、補助金・助成金を活用できる場合があります。飲食店・美容室が申請を検討できる主な制度は、以下のとおりです。

  • デジタル化・AI導入補助金2026 
  • ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
  • 業務改善助成金

感染症対策や省人化のためのセルフオーダー端末なども、生産性向上の一環として認められる場合があります。

大規模設備投資に活用できる補助金

工場設備の更新や生産ラインの増設など、多額の資金が必要となる設備投資では、大規模な事業を対象とした補助金を活用できる場合があります。ここでは、工場設備の導入・更新に活用できる補助金と、融資を組み合わせた資金計画の立て方について解説します。

工場の設備更新・ライン増設に使える補助金

工場の設備更新や生産ラインの増設では、生産性向上や省力化、省エネ化などを目的とする補助金を活用できる場合があります。工場設備の導入・更新に活用を検討できる主な制度は、以下のとおりです。

  • 中堅・中小・スタートアップ企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金
  • 省エネ・非化石転換補助金(工場・事業場型)
  • 脱炭素技術等による工場・事業場の省CO₂化加速事業(SHIFT事業)

上記以外にも、自治体が工場の新設・増設や設備の取得などを対象とした企業立地補助金を設けている場合があります。国の補助金とあわせて、工場が所在する都道府県や市区町村の支援制度も確認しましょう。

参照元

中堅・中小・スタートアップ企業の賃上げに向けた 省力化等の大規模成長投資補助金

省エネ・非化石転換補助金 2026年版特設サイト 

令和8年度 脱炭素技術等による工場・事業場の省CO2化加速事業(SHIFT 事業)の公募開始について | 報道発表資料 | 環境省 

補助金と融資を組み合わせた資金計画の立て方

補助金は原則として後払いで、申請から入金までに時間がかかるので、補助金が交付されるまでの資金を、自己資金や融資などで確保しておく必要があります。

そのため、日本政策金融公庫や信用保証協会付き融資をつなぎ資金として活用し、補助金の入金後に一部繰上返済するという資金計画が一般的です。

金融機関に相談する際は、事業計画書や資金繰り表に加え、補助金の交付決定通知書などを提示すると、設備投資の内容や資金計画を説明しやすくなります。ただし、補助金の交付決定を受けていても、融資には別途審査がある点には注意しましょう。

設備投資補助金で採択されやすい事業計画のポイント

補助金は、申請すれば必ず受給できるものではなく、事業計画の内容によって採択・不採択が決まります。採択される事業計画には一定の傾向があるため、審査で重視されるポイントを事前に把握しておきましょう。

導入設備と生産性向上の関係を明確にする

審査で重視されるのは、導入する設備がどのような課題を解決し、どの工程の効率化につながるのかという因果関係です。「最新設備だから導入する」と説明するだけでなく、現状のボトルネックと設備導入後に見込まれる変化を、具体的な数値や作業フローを用いて示すことが求められます。

既存設備との性能差や、稼働率・不良率・作業時間などの指標を示すことで、設備投資の必要性や効果に対する説得力を高められます。

売上拡大・利益改善の数値目標を示す

多くの補助金では、事業計画期間中の付加価値額や賃上げ率について、具体的な目標値の設定が求められます。売上高や利益率の伸びだけでなく、その根拠となる受注見込みや販路拡大策まで示すことで、実現可能性の高い計画として評価されやすいです。

数値目標は、保守的すぎても過度に高くても、審査で実現可能性を疑問視される場合があります。そのため、市場データや過去の実績に基づき、妥当な水準に設定することを意識しましょう。

設備投資補助金に関するよくある質問

ここでは、設備投資補助金に関するよくある質問をQ&A方式で解説します。

中小企業向けの経済産業省の補助金はいつ公募されますか?

ものづくり補助金や省力化投資補助金などは、年度内に複数回の公募が実施されるのが一般的です。公募回ごとに要件や様式が変更されることもあるため、申請を検討する時点で最新の公募要領を確認することが欠かせません。

中古設備は補助対象になりますか?

制度によって扱いが異なり、多くの補助金では中古品は原則対象外とされています。一部の制度では中古設備の導入が認められる場合もありますが、複数の中古販売業者から見積もりを取得するなど追加の手続きが求められることがあります。

補助金はいつ入金されますか?

補助金は事業を実施し、実績報告を提出したうえで金額が確定してから入金される後払いの仕組みです。交付決定を受けてから設備の発注・支払いをし、完了後に実績報告を提出、その後精算請求を経て入金という流れになります。

実績報告までが流れとなっているため、申請から入金までは半年から1年程度かかることも珍しくありません。

【まとめ】設備投資に使える補助金を比較して自社に合う制度を選ぼう

設備投資に使える補助金・助成金は、事業規模や業種、投資の目的によって最適な選択肢が異なります。中小企業であればものづくり補助金や省力化投資補助金、個人事業主であれば小規模事業者持続化補助金といったように、対象要件と補助率を比較しながら検討することが大切です。

自社の投資規模や業種特性を踏まえ、複数の制度を比較したうえで、資金計画全体の中に補助金をどう組み込むか整理することが成功の近道です。

もし、この記事をきっかけに事業の成長に必要な財務・経営に関する情報をさらに深く知りたい方がいましたら、社会保険労務士法人グロースアシストをチェックしてみてはいかがでしょうか。

参照元一覧

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領 (第23次公募)

中小企業省力化投資補助金

令和8年度業務改善助成金のご案内 

農地利用効率化等支援事業(令和8年度):農林水産省 

スマート農業・農業支援サービス事業導入総合サポート緊急対策事業(令和6年度補正予算)の第4次公募について:農林水産省 

中堅・中小・スタートアップ企業の賃上げに向けた 省力化等の大規模成長投資補助金

省エネ・非化石転換補助金 2026年版特設サイト 

令和8年度 脱炭素技術等による工場・事業場の省CO2化加速事業(SHIFT 事業)の公募開始について | 報道発表資料 | 環境省