限られた人員や資金で利益を確保していくためには、設備投資やITツールの導入による生産性向上が欠かせません。とはいえ、新たな設備やシステムの導入には相応の費用がかかることもあり、投資に踏み切れない企業も少なくないでしょう。
そこで役立つのが、国や自治体が設けている、生産性向上を支援する補助金・助成金です。この記事では、生産性向上に活用できる主な補助金・助成金を目的別・業種別に整理し、それぞれの特徴や申請時のポイントを解説します。
生産性向上に使える補助金・助成金とは
生産性向上に活用できる補助金・助成金を理解するためには、まず「生産性向上」とは何を指すのかを押さえておく必要があります。ここでは、生産性向上の基本的な考え方と、補助金・助成金がどのような取り組みを支援する制度なのかを解説します。
生産性向上とは?人手不足・コスト増に対応するための考え方
生産性向上とは、投入する労働力や資本に対して、得られる成果を増やすことを指します。「同じ人数・時間でより多くの成果を生み出す」、または「同じ成果をより少ない人手やコストで実現する」という考え方です。
たとえば、人手不足が慢性化している業種では、増員による対応が難しいケースが多いです。そうした場合、設備やITツールを導入して業務プロセスを見直し、限られた人員でも円滑に業務を遂行できる体制を整えることが、生産性向上の取り組みの一つとなります。
補助金・助成金・融資の違い
生産性向上に向けた資金調達を検討する際は、補助金・助成金・融資の違いを理解しておくことが大切です。
| 種類 | 主な管轄 | 返済義務 | 支給のタイミング | 主な特徴 |
| 補助金 | 経済産業省・中小企業庁など | 原則なし | 事業実施後・実績報告後 | 審査があり、不採択の可能性がある |
| 助成金 | 厚生労働省など | 原則なし | 要件達成後 | 要件を満たせば原則支給される |
| 融資 | 金融機関・日本政策金融公庫など | あり | 契約時 | 審査があるものの、資金使途は補助金より柔軟な場合が多い |
補助金と助成金は、いずれも原則として返済が不要である点が共通しています。ただし、補助金は審査によって採択・不採択が決まるのに対し、助成金は定められた要件を満たせば、原則として受給できるという違いがあります。
補助金・助成金の多くは、対象経費をいったん事業者が支払い、その後に支給される後払い方式です。そのため、申請時には支給までの資金繰りもあわせて計画しておくことが重要です。
生産性向上に活用できる補助金・助成金一覧

生産性向上に活用できる補助金・助成金には、設備の導入やIT化、省力化、職場環境の改善などの取り組みを支援する、さまざまな制度があります。自社に適した制度を選ぶためには、解決したい課題や業種、導入の目的を整理することが重要です。
ここでは、生産性向上に活用できる主な補助金・助成金を、目的別・業種別に分けて紹介します。
目的別に見る生産性向上に使える補助金|設備投資・IT導入・職場環境整備
生産性向上に活用できる補助金・助成金は、投資の目的によって適した制度が異なります。
| 目的 | 主な制度 | 補助対象の例 |
| 設備投資、新製品開発 | ものづくり補助金 | 加工機械、専用ソフトウェアなど |
| 省力化、人手不足対応 | 中小企業省力化投資補助事業 | ロボット、自動化機器など |
| 販路開拓、小規模な業務効率化 | 小規模事業者持続化補助金 | ホームページ制作、店舗改装など |
| 賃上げを伴う設備投資 | 業務改善助成金 | POSレジ、業務用機器など |
| 職場環境の改善 | 人材確保等支援助成金 | 業務負担軽減機器、健康づくり制度、雇用管理制度など |
参照元
トップページ|ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金公式ホームページ ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金総合サイト
そのため、まずは自社が「何のために投資をするのか」を明確にし、その目的に合致する制度から検討するのが効率的です。
業種別に見る生産性向上に使える補助金|製造業・小売業・飲食業・介護・医療
業種によって抱える課題や導入を検討する設備は異なるため、業種ごとの活用例を把握しておくと、制度を選びやすくなります。
| 業種 | 活用イメージ |
| 製造業 | 革新的な新製品・新サービスの開発を伴う場合は、ものづくり補助金も検討できる |
| 小売業 | POSレジ導入にものづくり補助金やデジタル化・AI導入補助金が使われるケースが目立つ |
| 飲食業 | 配膳ロボットや券売機、自動精算機などの製品の導入には、中小企業省力化投資補助事業のカタログ型がよく利用される |
| 介護・福祉 | 見守りセンサーや介護記録システム、インカムなどの導入には、介護分野特有の補助制度が使われる |
| 医療 | 電子カルテと連携するシステムや業務効率化ツールなどの導入には、医療機関向けのDX・勤務環境改善支援策が活用される |
自社の業種や課題に合った制度を選び、作業時間の短縮や人手不足の解消、サービス品質の向上といった導入効果を明確にすることが重要です。
設備投資に使える生産性向上向けの補助金
設備投資による生産性向上を目指す場合は、導入目的や事業規模に合った補助金を選ぶことを意識しましょう。ここでは、設備投資に活用できる各制度の特徴や対象となる設備について解説します。
参照元
トップページ|ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金公式ホームページ ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金総合サイト
ものづくり補助金|設備投資・新製品開発に使える制度
ものづくり補助金は、中小企業・小規模事業者が、革新的な新製品・新サービスの開発に必要な設備投資などを行う際に活用できる制度です。正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」です。
製造業に限らず、商業・サービス業を含む幅広い業種の事業者が申請を検討できます。第23次公募では、革新的な新製品・新サービスの開発を支援する「製品・サービス高付加価値化枠」と、海外事業による国内の生産性向上を支援する「グローバル枠」が設けられています。
審査では、取り組みの革新性や事業計画の実現可能性に加え、高い付加価値の創出や賃上げにつながる計画であるかなどが確認されます。そのため、単なる設備の更新ではなく、生産性をどれだけ向上させられるかを具体的に示す計画書の作成が求められます。
中小企業省力化投資補助事業|人手不足解消に役立つ制度
中小企業省力化投資補助事業は、人手不足に悩む中小企業・小規模事業者などを対象に、IoTやロボットをはじめとする省力化設備・システムの導入を支援する制度です。設備の導入によって、限られた人員でも円滑に業務を遂行できる体制を整え、生産性や付加価値額の向上、賃上げにつなげることを目的としています。
申請区分には、あらかじめ登録された製品カタログから選ぶ「カタログ型」と、自社独自の計画に基づく「一般型」があります。
カタログ型は、一般型と比べて簡易で即効性のある省力化投資を対象としており、登録された販売事業者と共同で申請する仕組みです。そのため、導入する製品を選定したうえで、販売事業者のサポートを受けながら申請手続きを進められます。
小規模事業者持続化補助金|販路開拓と業務効率化に使える制度
小規模事業者持続化補助金は、商工会議所・商工会の管轄地域にある小規模事業者を対象に、販路開拓や業務効率化の取り組みを支援する制度です。補助上限額はものづくり補助金などに比べて小さいものの、申請書の作成負担も軽いため、小規模な設備投資や業務改善に取り組みたい事業者に向いています。
ホームページのリニューアルや店舗の改装、業務効率化に必要な機器の導入など、比較的小規模な取り組みに活用を検討できます。
業務改善・職場環境整備に使える補助金

業務改善や職場環境の整備に活用できる補助金・助成金は、生産性の向上だけでなく、従業員の負担軽減や職場の安全性向上にもつながります。ここでは、各制度の対象経費や活用方法に加え、複数の補助金・助成金を併用する際の注意点について解説します。
参照元
業務改善助成金|賃上げと設備投資を同時に進められる制度
業務改善助成金は、厚生労働省が所管する助成金です。事業場内最低賃金を一定額以上引き上げるとともに、生産性向上に資する設備投資などを行った中小企業・小規模事業者に対し、その費用の一部が助成されます。
対象経費には、POSレジや業務効率化機器などの導入費用が含まれる場合があります。ただし、すべての設備や車両が対象となるわけではなく、設備の用途や事業者の要件によって対象可否が異なります。
設備投資と賃上げをあわせて進めたい事業者にとって、費用負担の軽減に役立つ制度といえるでしょう。
人材確保等支援助成金|離職率低下や労働条件の改善に使える制度
人材確保等支援助成金は、魅力ある職場づくりを通じて、人材の確保や従業員の定着に取り組む事業主などを支援する制度です。中でも「雇用管理制度・雇用環境整備助成コース」では、賃金規定制度や諸手当等制度などの整備に加え、従業員の業務負担を軽減する機器・設備などの導入が支援対象となります。
申請には、原則として取り組み開始前の計画提出が必要です。また、離職率低下などの目標達成が支給要件となる場合があるため、対象コースの要件や申請期限を事前に確認しましょう。
補助金・助成金を併用する際の注意点
補助金・助成金は、複数の制度を併用できる場合があります。
ただし、同じ設備の購入費や人件費など、同一の経費に対して複数の制度から重複して補助・助成を受けることは、原則として認められません。重複申請を避けるため、制度ごとに対象となる事業や経費を明確に区分し、どの費用をどの制度で申請するのかを整理しておきましょう。
また、ほかの制度への申請状況や受給状況について、申告を求められる場合もあります。公募要領や支給要領を確認し、併用の可否を判断できない場合は、申請窓口へ事前に相談することが大切です。
病院など福祉・医療分野の生産性向上補助金
病院や介護施設などの医療・福祉分野では、人手不足の解消や従業員の業務負担軽減を目的とした補助金・支援制度を活用できる場合があります。さらに補助金を活用し、介護ロボットや電子カルテなどを導入することで、業務効率化やサービス品質の向上が期待できます。
参照元
生産性向上・職場環境整備等支援事業|作業改善・衛生管理に使える制度
医療分野における生産性向上・職場環境改善支援事業は、一定の要件を満たす病院が、限られた人員で効率的に業務を進められる環境を整備するための制度です。ICT機器などの導入や業務手順の見直しなどを通じて、生産性を向上させ、効率的で質の高い医療提供体制を構築することを目的としています。
生産性向上というと、設備の自動化やITツールの導入に目が向きがちです。しかし、業務手順や職場環境そのものを見直すことも、職員の負担軽減や業務効率化につながる重要な取り組みです。
介護ロボット・ICT導入に使える補助金
介護分野では、見守りセンサーや移乗支援機器などの介護テクノロジー、介護記録業務を効率化するITシステムの導入を支援する制度が設けられています。主な制度は、以下のとおりです。
- 介護テクノロジー導入・定着支援事業
- IT導入補助金
慢性的な人手不足が課題となっている業界だけに、直接的な業務負担の軽減につながる投資として活用されるケースが増えています。導入にあたっては、機器の効果測定や職員への研修が求められる場合もあるため、導入後の運用体制まで見据えた計画づくりが重要です。
生産性向上補助金を活用するポイント

生産性向上に関する補助金を活用するには、自社の課題を明確にしたうえで、具体性と実現可能性のある事業計画書・申請書を作成することが欠かせません。申請準備をスムーズに進めるためにも、以下で紹介する補助金活用のポイントを確認しておきましょう。
自社の課題に合わせて対象制度を選ぶ
補助金を選ぶうえで最も重要なのは、自社が抱える課題を明確にすることです。「人手不足を解消したいのか」「非効率な業務プロセスを改善したいのか」「賃上げとあわせて生産性を高めたいのか」によって、適した制度は大きく異なります。
課題が曖昧なまま制度を選ぶと、事業計画書の内容も説得力を失いやすくなります。まずは現在の業務フローを棚卸しし、どの工程に問題があるのかを整理しましょう。
採択率を上げる事業計画書・申請書の書き方
補助金の採択には、事業計画書の内容が大きく影響します。事業計画書や申請書を作成する際に意識したいポイントは、以下のとおりです。
- 現状の課題と、設備投資によってどのように解決できるのかを、数値を交えて具体的に示す
- 導入する設備やシステムを選定した理由と根拠を明確にする
- 生産性向上の効果を、労働生産性や付加価値額などの指標で示す
- 賃上げなど、制度が求める成果目標と事業計画に整合性を持たせる
書類作成に不安がある場合は、商工会議所や中小企業診断士など、申請支援の実績がある専門家に相談してみるとよいでしょう。
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生産性向上補助金に関するよくある質問
ここでは、生産性向上補助金に関するよくある質問をQ&A方式で解説します。
厚生労働省と経済産業省の補助金・助成金は何が違いますか?
経済産業省・中小企業庁が管轄する制度は「補助金」と呼ばれることが多く、審査によって採択・不採択が決まる点が特徴です。
一方、厚生労働省が管轄する制度は「助成金」と呼ばれることが多く、雇用や賃金に関する要件を満たせば支給される仕組みになっています。
補助金の採択率を上げるには何を準備すべきですか?
まずは公募要領を十分に読み込み、対象経費や申請要件、審査項目を正確に把握することが基本です。そのうえで、自社が抱える課題と投資内容、期待される効果を、一貫性のある論理的な流れで事業計画書にまとめることが求められます。
過去の採択事例を参考にしたり、認定支援機関のサポートを受けながら計画を練り上げたりすることも、採択率を高めるうえで有効な準備といえます。
【まとめ】生産性向上に使える補助金を比較して自社に合う制度を選ぼう
生産性向上に活用できる補助金・助成金には、設備投資を後押しするものから、業種特有の課題に対応したものまで、さまざまな種類があります。
大切なのは、制度の名前や補助上限額の大きさだけで選ぶのではなく、自社が抱える課題や実現したい生産性向上の内容に合わせて、最適な制度を見極めることです。目的別・業種別の一覧を参考にしながら候補を絞り込み、計画的に活用を進めていきましょう。
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