「個人事業主でも、ものづくり補助金に申請できるのだろうか」
「従業員が一人もいない規模でも、高額な補助金を受給できるチャンスはあるのか」
「複雑な事業計画書を自力で作成できるか不安だ」
新しい機械の導入による生産性向上や、画期的な新サービスの開発を目指す個人事業主にとって、最大数百万円から数千万円規模の支援が受けられる「ものづくり補助金(正式名称:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)」は、資金繰りの強い味方です。
しかし、その名称の影響で「工場を持つ製造業のための補助金」というイメージが強く、サービス業や小売業を営む個人事業主の中には、自分は対象外だと思い込み、検討を止めてしまうケースも少なくありません。
結論として、ものづくり補助金は個人事業主はもちろん、従業員がいない「1人経営」であっても、要件を満たせば申請・採択されることが可能です。むしろ、近年のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の流れにより、ITを活用したサービス業の採択事例も急増しています。
そこでこの記事では、個人事業主がものづくり補助金を受給するための必須条件や対象経費の範囲、採択率を高めるための事業計画書のポイントを詳しく紹介します。補助金を活用してビジネスを一歩先へ進めたい方は、ぜひ最後までご一読ください。
個人事業主がものづくり補助金の「対象事業者」となるための必須条件

ものづくり補助金への申請を検討する際、まず「対象事業者の要件」の確認をしましょう。ここでは、個人事業主が悩みやすい疑問点に触れたうえで、最新の公募要項に基づいた基本条件を紹介します。
「1人経営・従業員なし」の定義とは?確認すべき付加価値額の要件
ものづくり補助金において、個人事業主は「中小企業者等」として定義されており、申請資格が認められています。
従業員が一人もいない完全な1人経営であっても申請を躊躇する必要はありません。本補助金には「小規模企業者」という区分があり、従業員数が少ない事業者にも配慮された申請枠が用意されています。ちなみに、従業員数に代表者自身や専従者は含まれません。そのため、フリーランスに近いスタイルで事業を行っている場合でも、要件を満たせば申請対象となります。
ただし、受給にあたっては、3〜5年の事業計画の中で、以下の3つの数値目標を達成する計画を作成し、実行する義務があります。
1.付加価値額の向上
事業計画期間において、事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加させること。
2.給与支給総額の増加
事業者全体の給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させること。これは、従業員がいない場合は代表者の事業所得等の考え方に基づきます。
3.地域別最低賃金の遵守
事業場内で最も低い賃金を、地域別最低賃金+30円以上の水準に保つこと。
特に「付加価値額」の算出は、個人事業主にとって最も重要なハードルです。
例えば、年間の営業利益が300万円、減価償却費が50万円、人件費(給料賃金および福利厚生費)が100万円の場合、現在の付加価値額は450万円となります。また、審査では営業利益だけでなく、支払利息などを差し引いた経常利益が健全かどうかも、事業の持続可能性を判断する材料となります。これを3年計画であれば、3年後に約492万円(450万 × 1.03の3乗)まで引き上げる具体的な道筋を示さなければなりません。従業員がいない場合、2番目の「給与支給総額」については、代表者自身の所得向上を計画に反映させることで要件を満たすことになります。このように、設備投資によって自分自身の稼ぐ力をどう底上げするかが、審査で非常に重要です。
補助率と補助上限額および補助対象となる「経費」の具体的な範囲

補助金の金額は、申請する枠や従業員数によって変動します。代表的な「製品・サービス高付加価値化枠(通常枠)」の場合、補助上限額は最大750万円〜1,250万円程度(従業員数による)が一般的です。
補助率は原則として、個人事業主の多くが該当する小規模事業者であれば3分の2、その他は2分の1となります。 小規模事業者の具体例を挙げると、合計1,500万円(税抜)のシステム開発や設備導入を行う場合、3分の2にあたる1,000万円が補助金として交付され、自己負担は500万円で済むことになります。高額な投資が必要なDX化や最新機器の導入において、補助率の高さは極めて大きなメリットです。
補助対象となる経費については、以下の4項目を中心に検討します。
【補助対象となる経費4種類】
・機械装置・システム構築費
製造用機械、3Dプリンター、特殊な厨房機器のほか、独自の在庫管理システムやAIを活用したアプリ開発、ECサイト構築費などが該当します。個人事業主が最も活用しやすい項目です。
・技術導入費
新事業に不可欠な知的財産権の導入費用や、特許のライセンス料などが含まれます。
・専門家経費
新技術の習得やシステム構築にあたり、外部のコンサルタントやエンジニアから受ける技術指導等への謝礼です。
・クラウド利用費
補助事業の運用に直接必要なサーバー費用やSaaSの利用料などが対象となります。
一方で、単なる老朽化した設備の買い替えや、汎用性の高いパソコン、タブレット、スマートフォン、プリンターなどの事務用品、および一般公道を走る車両、建物の家賃やリフォーム費用は、原則として対象になりません。また、補助金は「税抜金額」に対して計算されるため、消費税分は全額自己負担となる点も資金計画において重要です。導入によって、これまでにないサービスが提供可能になる、生産効率が飛躍的に向上するといった、ビジネスの革新性を支える投資であることが強く求められます。
参照:ものづくり補助金は個人事業主も申請できる?最新事例も紹介 _ マネーフォワード クラウド確定申告
ものづくり補助金!個人事業主の採択事例や活用方法・必要書類は? _ みんなの補助金コンシェルジュ
採択率を高めるために不可欠な事業計画書のポイント

ものづくり補助金の採択率は概ね30%〜60%程度で推移しています。個人事業主が採択を勝ち取るためには、組織力のある法人と並んでも遜色のない、説得力のある事業計画書づくりがポイントです。
個人事業主の合格事例から学ぶ「革新的なサービス」の具体的イメージ
審査において最も重要視されるのが、革新性です。これは世界初の発明である必要はなく、自社にとって、そしてその業界や地域において一般的ではない、新しい取り組みであれば認められる傾向にあります。
最新の採択事例から、個人事業主や小規模事業者が参考になる5つのモデルを紹介します。
【事例1:サービス業】自動洗髪機導入による働きやすさと生産性の両立
人口減少が進む地域で、低価格な白髪染め専門店を展開した事例です。
美容師の負担が大きい洗髪工程に自動洗髪機を導入し、セルフブロー形式を採用することで、スタッフ1人あたりの作業時間を20分から5分へ大幅に短縮しました。休眠美容師の雇用を促進しつつ、開店直後に予約が埋まるほどの高回転率の実現による店舗運営の仕組み化が評価されました。
【事例2:食品・物流業】コールドチェーン構築による広域販路の拡大
地元食材のパッケージングを行う事業者が、最新の製氷機・冷凍機を導入した事例です。
これまで12時間かかっていた食材の冷却時間を4時間へ短縮し、鮮度保持日数の1日延長に成功しました。品質保持能力の向上によって、これまで配送不可能だった西日本など遠方エリアへの販路拡大が実現。地域の農水産物の付加価値を高める地域貢献度も採択の決め手となりました。
【事例3:IT・卸売業】プラットフォーム高機能化による「業界活性化」の促進
アパレル企業と生地メーカーをマッチングさせるITプラットフォームを構築した事例です。
単なる紹介サイトにとどまらず、AIによる検索機能やマッチングの最適化アルゴリズムを実装。従来のアナログな取引慣行を打破し、数百社のアカウント登録を獲得しました。ITを駆使して業界全体の生産プロセスを改善する視点が、ものづくり補助金の趣旨にマッチしています。
【事例4:金属・製造業】複合加工機の導入による成長領域(洋上風力・防衛)への参入
従来の設備では精度が不足していた金属加工業者が、最新の複合NC旋盤を導入した事例です。
これまで別々の工程で行っていた旋削・穴あけ・ねじ切りを1台に集約。1000分の1mm単位の精度が求められる洋上風力発電部品や防衛関連領域といった高付加価値な新市場への参入を果たしました。既存技術の延長線上ではない技術的優位性の獲得が革新性とみなされました。
【事例5:建設・インフラ業】高性能杭打機の導入による特殊工法市場の開拓
ガードレール設置等を手掛ける工事会社が、小型で高性能な「杭打機・削岩機」を導入した事例です。
これまで2名必要だった作業を1名に省人化し、従来機では対応できなかった狭小地や高速道路の特殊な設置工事を受注できる体制を整備しました。生産性向上と施工品質の向上を同時に達成し、新市場への進出を明確に描いた点が評価されました。
上記の事例5つに共通するポイントは、導入する機械やシステムが単なる「作業の効率化」にとどまらず、顧客への利便性向上や新市場開拓という新しい価値提供に直結している点です。自社の強みを活かし、最新設備によって競合他社とどう差別化するかを、時間短縮や売上増の予測値といった定量的な指標を交えて書く視点が重要です。
参照:ものづくり補助金の歴代採択結果・採択率まとめ|傾向と採択に向けたポイントを解説
【2025最新】ものづくり補助金の採択事例5選!成功企業に学ぶポイントを解説 – 助成金サポート.JP
ものづくり補助金の採択事例とポイント|2025年の傾向を中小企業診断士が解説 _ 製造業向けお役立ち情報サイト|ものづくり研究所 _ 山善
審査員が重視する不採択にならないための5つのチェックポイント
事業計画書を作成する際、以下のポイントに不備があると、不採択のリスクが格段に高まります。提出前に必ずチェックすべき項目をまとめました。
【事業計画書のチェックポイント5つ】
1.数値根拠の妥当性があるか
売上予測などが単なる願望になっていませんか。市場規模、ターゲットとなる顧客数、想定客単価など、客観的なデータに基づいた根拠を示さなければなりません。
2.ストーリーの一貫性があるか
「現状の課題」→「解決のための設備投資」→「投資後の成果(利益向上)」という一連の流れが、矛盾なく論理的に繋がっているかを確認してください。
3.資金調達は裏付けされているか
補助金は後払いです。最初に全額を支払うための資金が必要となります。自己資金の証明や、金融機関からの融資内諾など、資金調達ができることを具体的に証明する計画立案が必要です。
4.加点項目を取得しているか
経営革新計画の承認やDX認定など、審査上の得点が加算される項目が複数存在します。これらを可能な限り取得しておくことが、僅差での合格を左右します。
5.実施体制の具体性はあるか
個人事業主の場合、一人で全てをこなす限界を指摘されやすいため、どの工程をシステム会社等、外部のパートナー企業と連携するのかといった実施体制をわかりやすく示せることで評価により繋がります。
このように、個人事業主が採択を勝ち取るためには、事業の革新性を客観的に証明し、数値や資金面での裏付けを徹底することが不可欠です。不採択リスクを一つずつクリアし、精度の高い計画書を仕上げることが、補助金受給を実現する鍵となります。
参照:経営力向上計画を作り、「ものづくり補助金」採択を有利に進めよう! – 起業の「わからない」を「できる」に
事業計画書の書き方|作成のポイントやテンプレートを徹底解説! – Document Studio – ビジネス資料作成支援メディア
【まとめ】社会保険労務士法人グロースアシストによる個人事業主への伴走支援

ものづくり補助金は、事業を前進・拡大させたい個人事業主にとって力強い制度です。しかし、ボリュームが大きく、精度の高さが求められる事業計画書の作成や、採択後の煩雑な事務手続き、そして5年間にわたる状況報告などは、本業を一人で担う経営者にとって非常に重い負担と言えます。特に、個人事業主の方は事務スタッフがいない場合が多く、補助金手続きに時間を取られすぎて本業の売上が下がってしまうという本末転倒な事態も起こり得ます。
社会保険労務士法人グロースアシストは、個人事業主の皆様に対し、補助金活用に伴う労務面・体制整備面・証憑管理面の支援を行っています。
▼社労士の専門知見を活かした労務・賃上げの戦略的指導
補助金活用に伴う賃上げ対応や雇用管理について、労務面・体制整備面から必要な整理を支援します。
▼受給まで見据えた実績報告・証憑管理の伴走支援
補助金は採択後の実績報告や証憑管理も重要です。必要資料の整理や実務負担の軽減につながる支援を行い、円滑な手続き対応をサポートします。
▼企業の未来を共に形にするビジョン構築コンサルティング
私たちは、制度活用に向けた準備支援だけでなく、その後の経営体制づくりまで見据えた支援を重視しています。補助金をきっかけに、5年後、10年後の理想の姿を共に描き、経営者の想いを具体的な戦略へと落とし込むコンサルティングを提供。経営のパートナーとして、次なる成長への道筋を共に整えます。
「このアイデアで申請できるのか」「受給額の目安を知りたい」といった初期段階のご相談も歓迎です。公式サイトでは、最新の公募スケジュールや採択率向上のためのノウハウも随時公開しております。皆様の情熱ある挑戦を、私たちは専門知識と伴走支援で支え抜きます。