融資の相談に行ったら「事業計画書を出してください」といわれ、いざ書こうとして手が止まっていませんか。事業のアイデアや経験はあるのに、書類づくりや数字の出し方になると急に難しく感じる方は多いでしょう。

ここで古い情報のまま準備を進めると、審査で根拠の薄さを突かれ、計画が止まってしまうこともあります。とくに2024年に公庫の融資制度は大きく変わっており、数年前の記事のままでは判断を誤りかねません。

この記事では、何をどの順番で書くかという全体像から、業種別・個人事業主の記入例、審査で見られるポイントまでを解説していきます。

事業計画書の作成から融資まで、資金調達をサポートします

事業計画書の基本構成と5つのステップでの書き方

事業計画書は事業概要から資金計画まで、書く順番を5つのステップに分けて進めると、迷わず作成できるでしょう。

事業計画書は、これから始める事業の中身と見通しを、第三者に伝わる形でまとめた書類です。融資や補助金の申請に使うほか、自分の考えを整理する役割もあります。

混同しやすいのが、似た書類の違いです。名前は似ていても目的が異なるので、まず違いを押さえましょう。

書類特徴・主な用途
事業計画書事業全体をまとめた総称。融資・補助金の申請で使う
創業計画書日本政策金融公庫のA3用紙1枚の様式。創業融資の申請に使う
経営計画書(補助金)補助対象に絞って書く書類。補助金の申請に使う

参照:1-27事業計画書 各種書式ダウンロード 小規模事業者/個人事業主の方【国民生活事業】|日本政策金融公庫

ステップ1 事業概要・事業の動機・経歴を書く

最初に書くのは、屋号・所在地・事業形態・創業予定日といった事業概要と、なぜ始めるのかという事業の動機です。動機は思いだけでなく、過去の経歴や実務経験とつなげると、実現できる理由として伝わります。

飲食業で5年働いた経験があるなら、その年数や担当業務を具体的に書きましょう。経歴は熱意と実現可能性を同時に示す、計画書の土台になります。

ステップ2 事業内容と市場・競合、自社の強みを書く

次に、誰に何を提供するのかという事業内容を具体的に書き、市場のニーズや競合の状況を調べて書きます。

ここで効くのが自社の強みです。価格・立地・技術・サービスのどこで勝てるのかを示すと説得力が出ます。「おいしい店」ではなく「駅徒歩2分で深夜まで営業する一人客向けの店」のように、具体的な言葉に落とすと伝わります。

ステップ3 販売戦略・取引先・人員などの体制を書く

商品やサービスをどう売るのか、SNS・チラシ・紹介など、想定する集客の手段を具体的に挙げます。

あわせて、主な取引先・仕入先・外注先や、開業時の人員計画も書きます。誰とどう組んで事業を回すのかが見えると、計画の現実味が増します。一人で始める場合も、繁忙期の人手をどうするかまで触れておくと安心です。

ステップ4 売上・利益の数値計画を立てる

事業の見通しとして、売上と利益の数値計画を立てます。売上は目標額だけでなく達成施策とセットで書くと根拠が伝わり、利益は売上から経費を引いた見通しを示します。

ここで重要なポイントは、創業当初と軌道に乗った後の2つを示すことです。黒字を装うより、軌道に乗るまでの道筋を現実的に描くほうが信頼されます。

ステップ5 必要な資金と調達方法を書く

最後に、必要な資金と調達方法をまとめます。資金は設備資金と運転資金に分けて内訳と金額を書き、自己資金と借入でどう賄うかという調達側と一致させます。

店舗の場合は、店舗取得費・内装・機械などの設備資金には見積書を添えると説得力が増します。開業から軌道に乗るまでを実施スケジュールで時系列に示せば、計画全体の見通しがそろいます。

わかりやすい記入例や見本を参考にして書き進める

各項目は記入例で形をつかみ、運転資金は数ヶ月分、売上は計算式で根拠を示すのが書き方の基本です。

白紙から書こうとすると手が止まりがちです。そんなときは、公庫が公開している創業計画書の記入例を参考にすると、書きやすくなります。

公庫の各種書式ダウンロードには、Excel版・PDF版のテンプレートに加え、業種別の記入例も用意されています。自分の事業に近い見本を見れば、数字の作り方や表現のトーンがつかめます。文章だけでなく図表を交えると読み手に届きます。

参照:各種書式ダウンロード 小規模事業者/個人事業主の方【国民生活事業】|日本政策金融公庫

売上計画は計算式で根拠を示す

売上は「これくらい売れてほしい」という希望ではなく、計算式で積み上げて根拠を添えます。客数×単価のようにして、前提となる数字を周辺調査で裏づけましょう。

さらに、楽観・標準・悲観の幅を置くと、リスクも見ている姿勢が伝わり、説得力が増します。審査担当者が気にするのは、数字の大きさより「その数字をどう出したか」だからです。

飲食店の売上は客単価×席数×回転率×営業日数で出す

飲食店の売上は、客単価×席数×回転率×営業日数という式で見積もります。たとえば客単価1,200円・席数20・1日2回転・月25日営業なら、月商はおよそ120万円という計算です。

客単価は「ドリンク1杯+メイン1品」のように注文モデルから積み上げると現実的になります。席がすべて埋まる前提は楽観的すぎるため、席稼働率は6〜7割程度で見ておくと、現実的な計画として説明しやすくなります。

飲食店のFL比率など業種特有の数字

飲食店ならではの指標も入れると、業界を理解していることが伝わります。代表的なのがFL比率で、食材費(Food)と人件費(Labor)の合計を売上の60%以内に収めるのがひとつの目安とされます。

回転率や客単価は、ランチ中心かディナー中心か、業態で大きく変わります。近隣の人通りや競合店の状況といった商圏調査の結果を添えると、売上予測の根拠が強くなります。

運転資金は2〜3ヶ月分を目安に計算する

運転資金は、事業が軌道に乗るまでの数ヶ月分を見込むのが基本です。中小企業基盤整備機構が運営するJ-Net21では、開業時点で運転資金の2〜3ヶ月分を確保しておくと安心だとしています。家賃や人件費など毎月出ていく固定費を中心に見積もります。

参照:運転資金の考え方|J-Net21(中小企業基盤整備機構)

設備資金との違い

設備資金との違いも押さえましょう。設備資金は店舗取得費・内装・機械など開業時にまとまって出る費用、運転資金は開業後に継続して出ていく費用、と分けると整理しやすくなります。

運転資金に含めてはいけない費用に注意する

見落としやすいのが、運転資金に入れてはいけない費用です。店舗の敷金・保証金・権利金は、開業時にまとまって支払う設備資金にあたり、毎月の運転資金とは別に計上します。

すでに抱えている借入の返済も、運転資金の見積もりには算入しません。公庫の創業計画書では「お借入れの状況」欄で別に示すものだからです。ここを混同すると資金計画の数字がぶれ、審査での信頼を損ないかねません。

個人事業主で押さえたいこと

個人事業主は、自分への給料を人件費として計上しません。そのため、法人とは利益や経費の見え方が異なります。ただし、日本政策金融公庫の融資は個人事業主でも利用でき、法人でないことが不利になるわけではありません。

また、借入や自己資金の記載ミスには注意が必要です。住宅ローンやカードローンなどの個人の借入も正確に申告し、親族から借りたお金は自己資金ではなく借入として記載しましょう。事実と異なる申告は、審査時の信用低下につながる可能性があります。

日本政策金融公庫の融資に通りやすい事業計画書のポイント

公庫の融資は2024年に自己資金要件が撤廃され、現在は計画の納得感と根拠が審査の中心になっています。

ここからは、創業時に検討されることの多い公庫の融資に絞って、通る計画書の条件を整理します。前提として、制度が2024年に変わった点から押さえましょう。

融資制度の概要

2024年3月末、創業者向け融資の中心だった「新創業融資制度」の取扱いが終了し、その機能は「新規開業・スタートアップ支援資金」へ引き継がれました。

対象は新たに事業を始める方や開業後おおむね7年以内の方です。融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)です。なお、創業期の方(新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方)は、原則として無担保・無保証人で各種融資制度を利用できると案内されています。担保・保証人の扱いは、制度や申込状況により個別確認が必要です。

参照:新規開業・スタートアップ支援資金|日本政策金融公庫

自己資金はいくら必要か

ネットで情報を集めていると、一部に「創業資金の10分の1以上の自己資金が必要」という記載を見かけますが、これは今の要件ではありません。2024年3月末の新創業融資制度の廃止に伴い、制度上の自己資金要件は撤廃され、ゼロでも申し込めます。

ただし、自己資金は計画性や本気度を示す材料として審査で見られるため、多い方が有利です。なお、親や兄弟から借りたお金は自己資金とは認められない点にも注意します。

なお、公庫の2025年度新規開業実態調査によると、開業費用は平均975万円でした。開業費用は長期的に少額化の傾向にあり、小規模に始めるのが主流です。

資金の集め方の傾向もつかんでおきましょう。同調査によると、開業時の資金調達額の内訳は、金融機関などからの借入が67.9%(平均827万円)、自己資金が22.9%(平均279万円)でした。

なお、平均値は一部の大型開業に引き上げられやすいので、自分の事業規模に合わせた目安として捉えてください。

参照:2025年度新規開業実態調査|日本政策金融公庫総合研究所

融資審査で重視される内容

審査で見られるのは、主に経営者の経験・自己資金・数値の根拠・資金使途の妥当性です。これらに矛盾や無理がないかを担当者は確認します。

経歴と事業がかみ合わない、売上の根拠が示せない、借入額と使途が合わないといった懸念点をひとつずつ解消することが、大切です。借入状況は信用情報も照会されるため、正確に書きましょう。

将来のことについて、根拠を持って書くのは難しいものですが、わずかな手がかりからでも根拠は作れます。過去の経験や周辺の調査を数字にして説明し、「その数字、どう出したのですか」と聞かれても答えられるようにしておきましょう。「求められれば証拠を出せる準備をしておく」という姿勢が信頼につながります。

事業計画書の準備は、30分の無料相談で整理できます

事業計画書のテンプレート・本・作成ツールの活用法

無料テンプレートは日本政策金融公庫や中小企業基盤整備機構が運営するJ-Net21のウェブサイトで入手でき、初心者は記入例つきの本やAIツールの併用が効率的です。

最後に、作成を効率化するリソースです。テンプレート・本・AIツール・専門家をどう使い分けるかを整理します。

無料テンプレートの入手先

無料のテンプレートは、まず公庫の各種書式ダウンロードが基本です。業種別の記入例つきで、数字を入れながら調整できます。

独立行政法人 中小企業基盤整備機構が運営するJ-Net21にも、事業コンセプトや収支計画を整理するシートが用意されています。

参照:事業計画書の作成手順 | 起業支援 | J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト] 

参照:各種書式ダウンロード 小規模事業者/個人事業主の方【国民生活事業】|日本政策金融公庫

事業計画書の書き方が学べる本の選び方

事業計画書の作成方法を体系的に学びたい場合は、書籍を活用するのも有効です。事業計画書に関する本は数多くありますが、要点を絞ってわかりやすく解説している定番の書籍を選ぶと、効率よく基礎を身につけられます。

また、数字や専門用語に苦手意識がある方は、マンガや図解を中心とした入門書から読み始めると理解しやすく、途中で挫折しにくいでしょう。

さらに、融資を検討している場合は、金融機関がどのような視点で事業計画書を評価しているのかを解説した本を選ぶことで、実践的な知識を身につけられます。

生成AIで事業計画書を作る際の注意点

生成AIに業種・創業の動機・想定月商などを入力すると、それに基づいた内容を作れるため、白紙から書くより早く作ることができます。

ただし、AIが出した数字をそのまま使うのは禁物で、売上や経費の根拠は自分で裏づけ直す必要があります。入力した情報の扱いなど、ツールごとの利用条件を確認してから使いましょう。下書きはAI、根拠づけは自分、と役割を分けるのがポイントになります。

まとめ:事業計画書は根拠ある内容を積み上げて書く

事業計画書は、売上予測や経費計画に客観的な根拠を示し、自社の事業内容に合わせて作り込むことで、金融機関や審査担当者に伝わる計画書になります。また、融資制度や補助金制度は変更されるため、最新情報を確認しながら作成することも重要です。

まずは日本政策金融公庫のテンプレートを開き、自社の数字を整理しながら形にしてみてください。

完成した事業計画書は、融資や各種申請の検討資料として活用できる場合があります。資金調達や労務管理の選択肢を整理したい場合は、創業時の労務管理、社会保険、雇用関係助成金など、相談内容に応じて社会保険労務士法人グロースアシストへの相談も検討してみてください。なお、補助金申請書類の作成や提出支援は、制度や業務内容に応じて行政書士等の関与が必要になる場合があります。