外国人を採用したいけれど、コストが気になる……そんな事業主の方に知っていただきたいのが、最大72万円を受け取れる助成金制度です。

この記事では、制度の仕組みから支給条件・申請の流れまで、社会保険労務士法人グロースアシストがわかりやすくご説明します。

「自社でも使えるの?」と思ったら、ぜひ最後までご覧ください。

外国人雇用で使える助成金とは?制度の基本と仕組み 

外国人雇用に関する助成金は、就労環境整備計画の提出時期によって支給額や要件が変わる場合があります。まずは正式名称と、最新の支給額・対象経費の考え方を押さえましょう。 

正式名称と根拠制度

この助成金の正式名称は、「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」といいます。

厚生労働省が設けた制度で、外国人労働者が働きやすい職場環境を整備した事業主に対して、その費用の一部を国が助成するものです。

外国人労働者は言語の違いや日本の雇用慣行への不慣れから、職場でのトラブルが起きやすい傾向があります。この助成金は、そうした「外国人特有の課題」に正面から向き合う事業主を支援するために設けられました。

助成額の算出の仕組み 

助成額は、就労環境整備計画の提出時期や最新の支給要領によって異なります。 

条件助成率上限額
賃金要件を満たす場合対象経費の2/372万円
賃金要件を満たさない場合対象経費の1/257万円

「賃金要件」とは、外国人労働者の基本賃金が、措置実施日から1年以内に5%以上増加していることを指します。

給与をしっかり引き上げることで、助成額の上限が57万円から72万円へと増加する仕組みです。月額で受け取るのではなく、計画期間終了後に一括申請・一括支給となる点もあわせて覚えておきましょう。

外国人雇用の助成金の支給条件・要件を徹底チェック

要件をひとつでも見落とすと、申請が通らない可能性があります。事業主側・労働者側それぞれの条件を、しっかり確認しておきましょう。

対象となる事業主の要件

以下の条件をすべて満たす必要があります。

要件
雇用保険の適用事業所であること
外国人雇用状況届出を適正に届け出ていること
認定された就労環境整備計画に基づき、計画期間内に定められた措置を導入・実施すること
過去に同助成金を受給した場合、最終支給決定日の翌日から3年以上が経過していること
基準期間(※)に、事業主都合による離職者の割合が6%を超えていないこと
計画期間初日の6か月前から計画期間末日までの間に、事業主都合による解雇等を行っていないこと
外国人労働者の離職率が10%以下であること
日本人労働者の「評価時離職率」が「計画時離職率」を上回っていないこと
社会保険の適用事業所であること(社会保険の要件を満たす場合)

※ 基準期間とは、就労環境整備計画期間の初日の前日から6か月前の日から、支給申請書の提出日までの期間をいいます。

とくに「外国人雇用状況届出」は採用時に忘れがちな手続きです。事前に確認しておくことをおすすめします。

実施が必要な就労環境整備措置について

③の「措置の導入・実施」には、具体的に何を行う必要があるかが定められています。

必須の措置(2つとも導入が必要)

  • イ. 雇用労務責任者の選任:事業所ごとに担当者を選任し、外国人労働者と3か月ごとに面談を行うこと
  • ロ. 就業規則等の社内規程の多言語化:就業規則や雇用契約書などを外国人労働者の母国語等に翻訳し、全員に周知すること

選択措置(以下のいずれか1つ以上を導入)

  • ハ. 苦情・相談体制の整備:母国語で相談できる窓口や体制を新たに設けること
  • ニ. 一時帰国のための休暇制度の整備:年1回以上、連続5日以上の有給休暇を取得できる制度を就業規則等に定めること
  • ホ. 社内マニュアル・標識類等の多言語化:安全衛生・ハラスメント等に関するマニュアルや標識類を多言語化すること

これらの措置は「新たに導入されたもの」に限ります。計画の認定前にすでに実施しているものは対象外となりますのでご注意ください。

対象となる外国人労働者の要件

対象となる外国人労働者には、以下の条件があります。

  • 外国人雇用状況届出の対象となる者であること(在留資格の種類は問わない)
  • 事業主に直接雇用され、労働契約を締結していること(派遣労働者は対象外)
  • 雇用保険の一般被保険者であること(短期雇用特例被保険者・日雇労働被保険者を除く)
  • 社会保険の適用事業所に雇用されている場合は、社会保険の被保険者であること

パートやアルバイトでも、雇用保険の加入要件を満たしていれば対象になります。

支給対象外になるケース

せっかく申請しても、次のような場合は支給されません。

  • 計画期間中または前後6か月以内に、事業主都合による解雇を行った場合
  • 就労環境整備計画と異なる措置を実施した場合
  • 申請期限を過ぎてしまった場合
  • 過去3年以内に同助成金を受給している場合

書類の不備や手続きのミスが原因で不支給になるケースも多くあります。不安な場合は、社会保険労務士への相談が安心です。

コンビニ・飲食・製造業など業種別の活用事例

この助成金は、外国人労働者が多い業種であれば幅広く活用できます。ここでは代表的な3つの業種の活用イメージを紹介します。

コンビニ・小売業での活用

コンビニや小売業では、留学生や特定技能外国人として働くスタッフが増えています。

多言語対応のマニュアルや社内標識の整備費、通訳機器の購入費などが助成対象になります。「日本語がまだ不安」なスタッフでも安心して働ける環境づくりに、コストをおさえながら取り組めるのが大きな魅力です。

飲食・サービス業での活用

人手不足が深刻な飲食・サービス業では、外国人スタッフの定着率向上が急務です。

就業規則や雇用契約書の翻訳費、社労士・弁護士への相談委託料も助成対象になります。専門家のサポートを受けながら就労環境を整えることで、離職率の低下にもつながります。

製造・物流業での活用

製造・物流業では、技能実習制度から移行した外国人材を正規雇用するケースが増えています。

社内の多言語表示や通訳者の配置費用に加え、日本語学習支援のための教材費なども対象経費に含まれます。この助成金は「職場定着を支援する環境整備」にフォーカスした制度のため、技能実習制度と混同しないよう注意しましょう。

外国人雇用の助成金の申請方法・手続きの流れ

申請は「計画を立ててから」動く必要があります。後から申請できる性質の制度ではないため、採用前の準備が非常に重要です。

STEP1|採用前の事前確認・準備

まず、自社が支給要件を満たしているかをチェックします。その後、「就労環境整備計画書」を作成し、本社所在地を管轄する都道府県労働局へ提出します。

計画の認定を受けることで、はじめて助成対象の措置を実施できるようになります。この段階を飛ばして措置を実施してしまうと、助成の対象外になります。順番を守ることが最大のポイントです。

STEP2|雇用開始〜支給申請までのタイムライン

計画認定後、就労環境整備措置(通訳者配置・翻訳・規則整備など)を実際に実施します。

時期対応内容
計画提出・認定労働局へ就労環境整備計画を提出
計画期間中整備措置を実施・費用を記録
計画期間終了後支給申請書と添付書類を提出
審査後支給決定・振込

費用の領収書や実施記録は、計画期間中から丁寧に保管しておくことが大切です。

STEP3|支給決定〜入金まで

申請書類を提出したあと、労働局での審査が行われます。

審査期間は概ね数ヶ月かかることが多く、支給が決定次第、指定口座に一括振り込みされます。資金繰りの計画を立てる際は、余裕を持ったスケジュールで動くようにしましょう。

申請時の注意点・よくある失敗

申請手続きは比較的シンプルですが、よくある失敗がいくつかあります。事前に把握して対策しておきましょう。

  • 計画認定前に措置を実施してしまう:申請順序を誤ると一切の助成が受けられません
  • 領収書・実施記録の保管不備:証拠書類が不足すると審査で不支給になります
  • 申請期限のチェック漏れ:計画期間終了後の申請には期限があります
  • 離職者発生による要件外れ:計画期間中に解雇が発生すると要件を失います
  • 外国人雇用状況届出の未提出:採用時の基本届出を忘れると、そもそも要件を満たしません

これらのミスを防ぐには、専門家(社会保険労務士)による申請管理が有効です。

2026年最新情報|制度変更点と今後の動向

厚生労働省は2026年度(令和8年度)の予算概算要求においても、本助成金の継続を明示しており、2026年度も引き続き活用できる見込みです。

また、2024年6月に成立した「育成就労制度」(旧・技能実習制度の後継)の本格施行に伴い、今後は外国人労働者の就労環境整備への需要がさらに高まると予想されます。

制度変更が生じた場合、支給要件や対象経費の範囲が変わる可能性があります。最新情報は厚生労働省公式サイトまたは社会保険労務士へ都度確認することをおすすめします。

助成金活用のメリットと経営への影響

助成金を活用することで得られるメリットは、単なる「コスト削減」にとどまりません。

メリット内容
採用コストの軽減通訳・翻訳・環境整備費を最大2/3補填
離職率の低下定着支援の取り組みが職場環境改善につながる
職場全体の底上げ多言語化・マニュアル整備は日本人スタッフにも有益
企業イメージの向上外国人労働者に選ばれる職場づくりになる

特に中小企業にとっては、数十万円規模のコスト削減は経営への直接的なインパクトがあります。

「使える制度は積極的に使う」という姿勢が、持続的な雇用体制をつくる第一歩です。

よくある質問(FAQ)

外国人雇用の助成金についてよく寄せられる質問をまとめました。

Q1. 毎月もらえるの?支給のタイミングはいつ?

毎月の支給ではありません。就労環境整備計画の計画期間終了後に一括申請し、審査を経て一括で振り込まれます。

審査には数ヶ月かかることが多いため、「実施してすぐもらえる」とは考えないようにしましょう。

Q2. パートタイム・アルバイト雇用でも対象になる?

雇用保険の被保険者であれば、パートタイムや契約社員でも対象になります。ただし、週の所定労働時間が短い場合は雇用保険の加入要件を満たさないこともあるため、事前に確認が必要です。

Q3. 採用後に申請を忘れたら受け取れない?

この助成金は採用後ではなく、措置の実施前に計画を提出する必要があります。後から遡及申請はできません。

採用計画の段階から社労士に相談することで、申請機会を逃さずに済みます。

Q4. 申請は自社でできる?社労士に依頼すべき?

制度上、自社での申請も可能です。ただし、計画書の作成・書類準備・期限管理など、手続きは多岐にわたります。

書類不備による不支給リスクを避けるためにも、専門家への依頼を検討する価値は十分にあるでしょう。なお、社労士・弁護士への委託料自体が助成対象経費に含まれるため、費用面のハードルも下がります。

Q5. 他の助成金と併用はできる?

基本的には他の助成金との併用が可能ですが、同一の経費について複数の助成金を重複受給することはできません。

キャリアアップ助成金や業務改善助成金と組み合わせて、より多くの支援を受けているケースもあります。自社の状況に合わせた組み合わせは、社会保険労務士への相談が確実です。

まとめ|外国人雇用の助成金について困ったら社会保険労務士に相談

この記事のポイントを整理します。

  • 制度名:人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
  • 支給額:就労環境整備計画の提出時期ごとの支給要領に基づき確認が必要 
  • 申請の順番:計画提出・認定 → 措置実施 → 支給申請(事後申請は不可)
  • 注意点:計画認定前の実施・書類不備・期限切れが主な失敗原因
  • 2026年度:継続見込みで、制度活用の好機

外国人雇用の助成金は、要件さえ満たせば多くの企業が活用できる制度です。しかし、「計画を正しく立てる」「期限を守る」「書類を整える」という地道な準備が不可欠です。

「うちは対象になるの?」「どんな書類が必要?」など、少しでも気になった方は、ぜひ専門家にご相談ください。

社会保険労務士法人グロースアシストでは、助成金の対象可否の確認から申請サポートまで、幅広くご支援しています。詳しいサービス内容やご相談方法は、公式ウェブサイトよりご確認ください。

参照

厚生労働省|人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)リーフレット

人材確保等支援助成金 (外国人労働者就労環境整備助成コース) ガイドブック|厚生労働省

人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)