新規事業の資金を補助金でまかなえないか。そう考えて調べ始めると、「新事業進出」「持続化」「創業助成」と似た名前の制度が次々に出てきて、結局どれが自社に使えるのか迷うかもしれません。

名前が似ていても対象者がまったく違う点も注意が必要です。ここを取り違えると、対象外の制度に何ヶ月も準備を費やしたり、後払いの仕組みを知らずに資金が足りなくなったりします。

この記事では、新規事業に使える主要な補助金・助成金を説明します。また、商工会議所や商工会などの相談先まで整理して紹介します。

新規事業の補助金とは

新事業進出補助金などの新規事業の補助金は、新しい商品・サービスの開発や設備投資、新分野への進出にかかる費用の一部を、国や自治体が支援する制度です。

補助金は主に経済産業省や自治体が実施し、事業計画の新規性や実現可能性などを審査したうえで採択されます。予算や採択件数に限りがあるため、申請すれば必ず受け取れるわけではありません。

一方、助成金には、厚生労働省が所管する雇用関係の制度や、自治体の創業支援制度などがあります。どちらも原則として返済不要ですが、対象や審査方法が異なるため、事業内容に合った制度を選ぶことが大切です。

進出と創出の違い

新規事業と言っても、補助金では「進出」と「創出」がはっきり分かれます。進出は、すでに事業を営む会社が、既存事業とは違う新分野へ踏み出すことです。創出は、これから事業を立ち上げる、いわゆる創業を指します。

例えば「中小企業新事業進出補助金」は進出、つまり既存事業者に向けた制度で、これから起業する人は対象になりません。逆に、創業前後の人が使えるのは「小規模事業者持続化補助金<創業型>」や自治体の創業助成といった別の制度です。

調べている人の多くは、この線引きを知らないまま「新規事業の補助金」とひとくくりに探してしまいますので、しっかりと確認しましょう。

参照:

中小企業新事業進出補助金 よくあるご質問・独立行政法人中小企業基盤整備機構

小規模事業者持続化補助金<創業型>

中小企業と個人事業主が対象になる補助金

設備投資をイメージしたベアリングの画像

中小企業も個人事業主も対象になる制度はありますが、可否や補助率、上限額は制度ごとに異なります。

補助金は法人だけのものと思われがちですが、個人事業主が使える制度もあります。ただし、制度ごとに条件が違い、個人事業主は開業届、法人は登記事項証明書といったように、求められる書類も変わります。

主要な制度を、進出・創出、補助率などで並べると次のとおりです。

制度区分主な対象補助上限(補助率)
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(新事業進出枠)進出(既存事業者)従業員1名以上の中小企業・個人事業主中小企業等|最大9,000万円(従業員規模・特例により異なる)(1/2、条件により2/3)
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(新事業進出枠)進出(既存事業者)既存事業の新製品・サービス開発中小企業等|最大3,500万円(1/2、小規模事業者は2/3等)
小規模事業者持続化補助金<創業型>創出(創業)創業間もない小規模事業者200万円(特例で250万円)(3分の2)
東京都の創業助成事業創出(創業)都内で創業予定〜創業5年未満400万円(下限100万円)(3分の2)

自社が進出・創出のどちら側か、どの事業形態かを見極めると、狙う制度を絞りやすくなります。

参照:

はじめての方|中小企業新事業進出補助金|中小企業基盤整備機構

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募要領を公開・ミラサポplus(中小企業庁)

令和7年度小規模事業者持続化補助金のポイント・ミラサポplus(中小企業庁)

創業助成金(東京都中小企業振興公社)|融資・助成制度

経済産業省の2026年の新事業進出補助金

中小企業新事業進出補助金は、経済産業省・中小企業庁が所管し、独立行政法人中小企業基盤整備機構が実施します。

既存事業者が新市場・高付加価値の新事業へ進出する際の設備投資などを支えます。補助率は原則2分の1です。補助上限は従業員数に応じて2,500万円〜7,000万円で、大幅賃上げ特例を使うと最大9,000万円まで引き上げられます。建物費やシステム構築費、広告宣伝費まで幅広く対象です。

なお、新事業進出補助金は2026年6月に公募を終了し、ものづくり補助金と統合した「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」の新事業進出枠として実施されています。金額や要件はおおむね引き継がれていますが、名称や細部が変わっているため、申請前に最新の公募要領を確認してください。

参照:中小企業庁担当者に聞く中小企業新事業進出促進補助金・ミラサポplus(中小企業庁)

東京都など自治体の助成金

これから創業する人が使いやすいのが、自治体の制度です。東京都の創業助成事業は、都内で創業予定、または創業5年未満の事業者を対象に、賃借料や広告費、人件費など創業初期の経費を助成します。助成限度額は上限400万円、下限100万円で、助成率は3分の2以内です。

ただし申請には、TOKYO創業ステーションなど都が指定する創業支援を受けていることが条件に盛り込まれています。

同様の制度は各地にありますが、内容は自治体ごとに違います。地域と年度で変わるため、公式サイトで事前に確認をしてください。

参照:令和8年度 創業助成事業・東京都

採択率の目安

補助金は、要件を満たしても審査に通らなければ受け取れません。中小企業新事業進出補助金の第1回公募では、応募3,006件のうち1,118件が採択され、採択率は約37.2%でした。およそ3件に1件が採択される水準で、決してやさしくはありません。

採択率は制度や各公募の回で変動します。新事業進出補助金では、第1回の約37.2%に対し、第2回は約35.4%とやや下がりました。公募は年度内に複数回行われますが、募集期間は短いため、開始の情報を早めにつかみ、準備期間を確保しておくと安心です。

採択を左右するのは、事業計画の中身です。数字の裏づけや新規性の説明が弱いと、要件を満たしていても評価が伸びません。逆に言えば、ここは準備で差がつく部分です。

参照:

第1回公募 補助金交付候補者の採択結果

第2回公募 補助金交付候補者の採択結果

申請書類と審査で重視される点

補助金の申請方法や必要書類は制度によって異なります。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金など、GビズIDプライムが必要な制度では、取得に時間がかかる場合があるため、早めに準備しましょう。採択後は事業を実施し、実績報告を経て交付という流れです。

審査で見られるのは、製品やサービスの新規性、事業の実現可能性、そして収益計画です。

例えば、新事業進出補助金では、新事業の売上が総売上の10%以上、または付加価値額が総付加価値額の15%以上になる計画かどうかも問われます。数字の根拠を示し、なぜ実現できるのかを具体的に書けるかどうかで、評価が変わります。

参照:中小企業庁担当者に聞く中小企業新事業進出促進補助金・ミラサポplus(中小企業庁)

補助金の後払いと資金繰りの計画

補助金申請に向けて資金計画を立てる様子の画像

補助金の多くは後払いで、先に自己資金で経費を支払う必要があります。立ち上げ期はつなぎ資金の準備が要ります。

「返済不要」という言葉が先に立ちますが、受け取り方には注意が必要です。ここを知らないまま進めると、採択されても資金が回らない事態になりかねません。

後払いと立ち上げ期の資金対策

補助金で見落としがちなのが「後払い」です。多くの補助金は精算払いで、先に自分で経費を支払い、実績報告のあとに交付されます。採択されても、お金がすぐ口座に振り込まれるわけではありません。これは立ち上げ期に重くのしかかります。

手元資金が少ない時期に、設備や広告の費用をいったん全額立て替える必要があるからです。入金までに数ヶ月から1年以上空くこともあり、その間の資金が回らなければ、事業そのものが止まりかねません。

対策は、入金までのつなぎ資金をあらかじめ用意しておくことです。日本政策金融公庫や制度融資を併用し、補助金・融資・自己資金を組み合わせて資金計画を立てておきましょう。補助金は確実に入るお金ではないので、それだけに頼らない設計にしておくと安心できます。

交付決定前の発注は対象外

資金繰りと並んで注意したいのが、発注のタイミングです。補助金は原則、交付決定の前に契約・発注した経費を対象外とします。事前着手が禁止されている制度が多く、「採択されそうだから」と早く動くと、その分は補助されません。

段取りとしては、公募要領で対象経費と実施期間を確認し、交付決定を待ってから発注します。順番を取り違えると、せっかくの補助金を受け取れなくなります。

相談先として活用したい商工会議所や商工会

事業計画書は新規性・実現可能性・収益計画が要で、商工会議所や商工会などへの相談がおすすめです。

自力での申請も可能ですが、制度は複雑で書類も多く、相談先を上手に使うほど採択に近づきます。

小規模事業者持続化補助金では、商工会議所などが発行する事業支援計画書(様式4)が必要で、経営計画づくりの相談もできます。

一方、雇用関係助成金など、労働社会保険諸法令に基づく申請書等の作成や提出代行は、社会保険労務士法上、社会保険労務士の業務範囲となります。「補助金も助成金も同じ専門家に」と考えがちですが、別の制度になります。

無資格の業者に安易に依頼すると、不正受給につながり、返還や事業所名の公表といったリスクを負うこともあります。相談先を正しく選ぶことが大切です。

まとめ:自社に合う制度を見つけたら早めに相談する

新規事業の補助金は、まず「既存事業者の進出」か「これからの創業」かを見極め、対象制度を絞ることが大切です。あわせて、補助金は原則後払いのため、つなぎ資金も含めて計画しておきましょう。

また、補助金は商工会や専門家、助成金は社会保険労務士など、制度に応じて相談先を分けるとスムーズです。

制度は年度ごとに要件が変わるため、自社が対象か迷う場合は専門家への確認をおすすめします。助成金の活用や申請サポートを相談したい方は、社会保険労務士法人グロースアシストの公式ウェブサイトをご確認ください。